「哉年、跪きなさい!」榮乃皇太妃は突然声を張り上げた。「不埒者め。王妃に許しを請いなさい。王妃はあなたの従妹であり、また義理の姉でもありますよ。王妃が許してくだされば、あなたの母上の御霊にも申し上げられるというものですわ」哉年が膝を折ろうとした瞬間、さくらは冷たい眼差しを向けた。「私に跪こうなどと、よくもそんな真似を」その凍てつくような声に、哉年の曲がりかけた膝は瞬時に強張った。さくらは立ち上がった。「他にご用がなければ、これで失礼いたします」大股で出口へ向かうさくらの背中に、皇太妃の切迫した声が追いかけた。「王妃、どうか、これからどんなことが起ころうとも、私の孫たちをお守りください」さくらは足を止め、鋭く振り返った。「皇太妃様は実に慈悲深いお方。ただ残念なことに、その慈悲は叔母様には届きませんでした。今となっては、誰かの慈悲や庇護など、もう彼らには必要ないでしょう」「王妃!」皇太妃は涙ながらに叫んだ。「同じ親戚ではありませんか。哉年たちは王妃の従兄妹なのです。見捨てないでくださいませ」「身を慎んで暮らしていれば、誰かの世話になど必要ありません」さくらの声は冷たく響いた。「皇族の血を引く者が、まさか物乞いにまで落ちぶれるとでも?皇太妃様のご心配は余計かと。もし、ただの取り越し苦労ではなく、何かご存知のことがあるのでしたら、それはこの私ではなく、あなたの孫たちに申し上げるべきことではありませんこと?」言い終えるや否や、さくらは大股で部屋を出た。「従妹上、お待ちください!」哉年が慌てて追いかけ、さくらの前に立ちはだかった。「私はあなたの実の母の子ではありません。従妹などと呼ばないで」さくらは特に彼への憎しみを隠そうともしなかった。燕良親王の三人の息子の中で、最も憎むべきは彼ではなかったかもしれない。だが、女中の子でありながら、育ての母である前王妃に一片の孝行も尽くさず、生前は冷たくあしらい、死後になって後悔の涙を流すなど、あまりにも卑しい。「ただ、心からお詫びを申し上げたかっただけです。他意はございません」哉年はさくらの鋭い眼差しを避けながら、おずおずと言った。「私に謝られても何の意味もない。育ててくださった方に申し上げることでしょう」さくらの目は氷のように冷たかった。「どきなさい。邪魔です」「私にも何も出来なかっ
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