「河道工事についてお尋ねになりたいのですか?」安告侯爵は問われるや否や、机の引き出しから図面を取り出して広げた。「現在の工事はかなり大規模でございます。以前から計画はあったのですが、戦争で国庫が逼迫していたため着手できず、毎年の河川の泥さらいだけで済ませておりました。しかし去年の年末から門霸溝に貯水池を建設し、新たな分流河道も開削しています。都内の各所でも堤防の基礎工事や泥の除去を進めており、今年の年末には大部分が完成する見込みです」さくらは工事の規模の大きさに驚き、尋ねた。「貯水池の建設や堤防工事、河川の清掃にはどのような人々が従事しているのでしょうか?」安告侯爵はさくらが国庫の支出を心配していると思ったのか、説明を続けた。「一部は徭役、一部は雇用した職人です。全工程合わせて二万人ほどが働いています。日々の食事代だけでも相当な出費になりますので、労働者への支払いは抑えております。幸い、一万人以上は徭役ですから、食事を提供するだけで賃金は不要です」「河道工事を統括しているのはどなたですか?」さくらは視線を図面から上げて尋ねた。「水部司の金川昌明です」「どちらのご出身で?」「燕良州の出身です。宮内省には七年勤めており、二年前に水部司に昇進しました」安告侯爵は説明した。「実務に長けた人物で、決断力もあります。河道工事はほぼ一手に引き受け、進捗も早く、陛下からもお褒めの言葉をいただいております」安告侯爵は言葉を切り、金川昌明が燕良州出身であることと、現在燕良州で反乱が起きていることを思い出した。顔色がわずかに変わる。彼はさくらが訪ねてきた理由がようやく分かったようだった。これらの労働者や職人はみな金川昌明が常用している者たちで、大規模な土木工事がなかったここ数年も、毎年の河川清掃には同じ人々が雇われていた。何か細工をするつもりなら、彼にとって難しいことではない。しかし、在職中はずっと真面目に働いてきたので、燕良親王の同党であるとは考えにくい。とはいえ、断言はできず、安告侯爵は慎重に言葉を選んだ。「上原様、彼に問題はないと思いますが、調査はいたします」「調査などなさらないでください。物事を荒立てれば、相手に警戒されてしまいます」さくらは声を落として言った。「特に金川昌明には何も知らせないでください。もし誰かが今日の訪問の目的を
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