とはいえ、多少の痛い目は避けられない。棒太郎は彼の脚を折り、密かに薬王堂に運ばせた。そして酒に酔って転倒し脚を折ったと外に向かって言うよう命じた。こうすれば家で療養することができ、誰にも怪しまれることはない。この一件を片付けた棒太郎は、さくらのもとに戻って尋ねた。「なぜ奴を戻して情報収集させないんだ?脅せばいい。陛下が潜伏調査を命じたとでも言えば、逆らう度胸なんてないはずだ」さくらは首を振った。「あの人では何も調べられないわ。かえって尻尾を出すだけよ」棒太郎は先ほどの腰を抜かした有様を思い出し、確かに使い物にならないと納得した。調査などさせれば、すぐに金川昌明に気づかれてしまう。家で脚の治療をしている方が、よほど確実だ。同僚が見舞いに来ても、余計なことを喋る度胸はあるまい。あのような利己的な人間なら、きっと密告の手柄を独り占めしようとする。功績を他人に分け与えるなど、自ら面倒を招くようなものではないか。彼は少しの危険も冒そうとしない性分だし、宮内省に長年勤めていても真の親友などいない。自分を支援してくれた兄まで見捨て、長年連れ添った妻を離縁し、恩師の娘さえ粗末に扱う——これほど極端に利己的な人間に、本当の友など存在するはずがない。彼の目に映るのは利益だけなのだから。さくらは有田先生と深水師兄に相談を持ちかけた。陛下に参内して報告すべきかどうか——なにしろ、得た供述は正当な手段によるものではない。三人で話し合った結果、陛下が信じるかどうかは別として、やはり報告は必要だという結論に達した。朝廷の官吏を私的に拘束した罪については、陛下が処罰をお決めになったとしても、この時期に実行されることはあるまい。ただし今回の参内には深水師兄を同伴することにした。陛下は深水師兄を深く敬っておられる。以前さくらが邪馬台の戦場に向かう際も、深水師兄の偽の書状を陛下に見破られたことがある。ところが今回宮中に参ったものの、陛下にはお目にかかれなかった。吉田内侍が出てきて告げた。「陛下は本日喀血され、失神寸前でございました。今は侍医が診察中にてございます」さくらは慌てて尋ねた。「お体の不調でしょうか、それとも何者かに毒を盛られたのでしょうか?」これは確かに陰謀論めいた問いかけだった。平時であれば、あるいは他の相手であれば、さくらもこのような質問はし
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