刑部の敷地内にある天牢は、刑部の管轄外。そこに収められるのは重罪人か、皇族や権力者だけ。天牢送りという言葉自体が、罪の重さを物語っていた。無事にここから出られる者はほとんどいない。今や三姫子は流刑に処せられることだけを願った。それなら命だけは……以前、賢一を村上教官の門下に入れたのも、その備えがあってのことだった。丈夫な体があれば、流刑地まで無事に辿り着ける。大赦を待って都に戻ることもできる。生きていさえすれば、その先はもう決めていた。親房夕美は信じられない思いだった。静かな荘園での暮らしから一転、京都奉行所の役人に連行され、天牢に投げ込まれるなど、夢にも思わなかった。天牢の中で、まだ現実感が掴めないでいた彼女の前に、老夫人が泣き崩れるように抱きついてきた。「いっ、いったい何があったの?」夕美は呆然とした声で問いかけた。「どうして私たちがこんなところに……」老夫人は嗚咽に言葉を遮られ、まともに答えることもできない。「一体何が起きたというの?」夕美は周りの家族の顔を見回しながら、声を荒げた。「私を連行した時も何も説明してくれなかったわ。鉄将お兄様は?賢一くんは?」「男女は別々に収監される」三姫子は娘の文絵を抱きしめたまま、虚ろな目で答えた。「いったい何が……」夕美の声が震えた。家族全員が捕らえられたとなれば、助けを求められる者などいない。「義兄様が……」蒼月は腫れぼったい目で絞り出すように言った。「戦場から逃げ出されて……陛下のご命令で私たちは天牢に……西平大名家はもう、没収されて……」「ま、まさか」夕美は雷に打たれたように立ち尽くした。しばらくして、震える唇から言葉が漏れた。「私には関係ないはず……私は嫁いだ身よ」「離縁された身のことをお忘れか」三姫子の冷たい声が響いた。「そんなの関係ない!」夕美は慌てて老夫人を振り払い、鉄格子に掴みかかった。「間違いよ!女は嫁げば夫の家の者!たとえ離縁されても、私は西平大名家には住んでいなかった。何も知らないわ。私は無実よ!」「間違いなどございません。皆、同罪でございます」牢番の冷たい声が外から響いた。罪があれば皆で共に、無実なら同じように無実なのだ。「違う!そんなの違うわ!」夕美の声は金切り声となって牢内に響き渡った。「夕美様、お力を無駄にしないで」
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