皇后の全身の筋肉が強張り、脂汗が滲む。首に巻きつこうとする白絹を見つめながら、恐怖に駆られて言葉を紡ぎ続けた。「いえ、遅くありません。陛下は大皇子をお慈しみですから、あの子が母を失うのをお許しにはなりません。私が直々に看病を……誰にも母親としての権利を奪う資格はありません。それに上原さくらが伝えてくれました。大皇子が私を深く愛していると。あの子自身の言葉だったそうです。今は重傷を負い、寂しい山荘で一人きり……私がそばにいなければ」白絹が首筋に触れた瞬間、皇后が金切り声を上げた。「陛下、陛下はそれほど残酷なお方なのですか?私がいったい何をしたというのです?德妃は大皇子を害したのに処刑されず、なぜ私が死ななければならないのですか?私はただ我儘だっただけ、人を害したことなどありません」吉田内侍が手を止めた。本来なら口にすべきではない言葉だったが、重傷を負った大皇子のことを思うと胸が痛み、身分を忘れて口を開いた。「皇后様が人を害していないと?福妃の御子のことは置くとしても、大皇子があのような有様になったのも、皇后様と無関係ではありますまい」皇后が目を見開き、首に巻かれた白絹を必死に掴んだ。「でたらめを……」吉田内侍が続ける。「でたらめかどうか、皇后様が一番よくご存知でしょう。お認めになりたくないだけで。なぜ德妃があのような危険な賭けに出たと思われます?皇后様と定子妃が手を組んで福妃の御子を害したからです。弱みを握られたのですよ。德妃はそれを世間に知らしめることができた。おまけに皇后様は桂蘭殿で大騒ぎを起こした——德妃の思うつぼではありませんか。身代わりを見つけた德妃が、手を下さないはずがない」皇后が息を呑み、顔面蒼白になった。「私の振る舞いが不適切だったとしても、悪事を働いたのは結局あの女です」吉田内侍が淡々と答える。「だからこそ、陛下は德妃に安らかな死をお与えにならない」「しかし私に死罪はありません」皇后は依然として顔を赤らめ、声を荒げて反論した。「福妃の御子を害したのが過ちだとしても、私は皇后、陛下の正妻です。大皇子を育て上げた功もある。陛下がこのような仕打ちを……」白絹が力強く首に巻きつき、言葉が途切れた。吉田内侍はもう何も語るつもりはなかった。これ以上言葉を重ねても、彼女が悔い改めることはあるまい。これは天皇の御意志だった
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