桂蘭殿に着いた頃には、既に空は薄暗く沈んでいた。桂蘭殿は宮中でも人里離れた場所にあり、冷宮とは一枚の塀を隔てただけの距離だった。寒風がひゅうひゅうと吹き抜けて、まるで亡霊の嘆き声のように響いている。さくらが太后付きの高松内侍を伴って歩いてくる道すがら、道端には雑草が生い茂り、大半は枯れ果てていた。時折薄緑の草が目に入っても、それは命を繋ぎ止めているだけの哀れな姿だった。北国の厳しい冬は、わずかな緑さえ許さない。まるでこの冷宮一帯が、希望という名の光を一切拒んでいるかのように。他の御殿を訪れる際、高松内侍が同行することはなかった。しかし今回の定子妃のもとへの訪問には、太后の御下命により付き添うこととなった。さくらは太后の真意を理解していた。高松内侍は太后の側で最も長く仕えており、後宮の駆け引きを知り尽くしているとまでは言わずとも、その七、八割は見抜けるはずだ。定子妃はさくらを長い間待っていたようで、さくらと高松内侍の姿を認めると、凝った首をゆっくりと回し、二人の背後に目を向けた。そして淡々とした口調で言った。「お二人だけですの?私は王妃様が大勢を連れて桂蘭殿を包囲なさるのかと思っておりましたのに」さくらは定子妃の装いに目を留めた。それは清原澄代の手による衣装で、鮮やかな色合いと繊細で華麗な刺繍が、彼女を紫陽花のように美しく、眩いばかりに輝かせていた。ただ、その眉目には相変わらず人を威圧するような気高さが宿っており、自分がこれから直面するであろうことを承知していながらも、その誇り高さは微塵も損なわれていなかった。「定子妃様」さくらが先に深々と一礼すると、高松内侍も慌てて後に続いた。「あら、まだ礼儀なんてお気遣いくださるの?」定子妃は嘲るような笑みを浮かべながら言った。「私をもう犯人扱いなさっているのでしょう?王妃様も高松殿も、そのような礼など私には過分でございます。どうぞお座りになって。お聞きになりたいことがあるなら、何でもお尋ねくださいな」華青が慌てて前に出て座席を勧め、茶を運ばせた。その間、定子妃は一言も発さなかった。茶が運ばれてくると、さくらは茶椀を手に取ってひと口飲んだ。それを見て定子妃がようやく口を開いた。「そのままお飲みになるのね?私が毒でも盛っているかもしれないのに、お怖くないの?」さくらは茶椀を置いて定
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