さくらは口の中が砂だらけになってしまった。やはり砂地では草原に及ばない。舞い散る砂埃ばかりで、美しさのかけらもなかった。競技場の中に立つ彼女でさえ、誰が一番手なのか見極めるのに苦労していた。松平将軍の末息子・松平剣明のようにも見えるが……障害を飛び越える瞬間、ようやく確信が持てた。間違いなく松平剣明だった。この時点で、彼の愛馬は他を一馬身も引き離し、さらに差を広げ続けている。実のところ、この競馬に本格的な意味はない。皇子たちの前座を務めるだけのもので、一位を争ったところで大した意味もない。それどころか、あまり見事な技を披露して皇子たちを委縮させては逆効果だ。だから他の騎手たちも本気で追い上げようとはしていなかった。とはいえ、速度自体は相当なもので、ただ全力を出し切ってはいないというだけのことだった。三周目に入る頃、潤と三人の皇子たちもいよいよ馬にまたがって出番を待つ態勢を整えた。場内の競技が終わり次第、彼らが駆け出していく番だった。三皇子は身軽に馬上の人となった。美しい顔立ちの幼い騎手は、馬背に座った姿がなかなかに凛々しい。緊張の色など微塵もなく、手綱を握り直して座り直すと、馬の首筋に身を寄せて優しく声をかけていた。潤と二皇子もそれぞれ馬にまたがり、大皇子へと視線を向ける。潤の瞳には励ましの光が宿っていたが、二皇子の顔は血の気が失せて青白い。手綱を握る指先が小刻みに震えている。大皇子は弟が緊張しているのだと思い込んで、にこやかに声をかけた。「柳、怖がることはないぞ。君の方が僕より騎術に長けているではないか。僕が平気なのだから」二皇子の掌は汗でびっしょりと濡れていた。その時、冷たい風が砂を巻き上げ、彼の目を赤く染める。兄がどのように馬上に身を躍らせたかは見えなかった。ただ、見事な身のこなしで馬にまたがり、どっしりと鞍に腰を下ろす影が見えただけ――次の瞬間、馬の断末魔のような嘶きが響き渡り、その場にいた全ての者を凍りつかせた。大皇子は鞍に座った途端、愛馬の異変を感じ取った。慌てて手綱を握り締め、誰かが駆け寄ってくるのを待つ。馬丁が近づこうとした刹那、馬頭に触れる間もなく――馬は天を裂くような嘶きを上げて跳ね回り、狂ったように競技場へと突進していく。全ては一瞬の出来事だった。大皇子は激しく地面に投げ出され、ま
Baca selengkapnya