周囲の厳しい視線と詰問の声に対し、遥は腕を組み、口元に得意げな笑みを浮かべながら鈴を見据えた。「皆さんのおっしゃる通りだわ、三井さん。やはり証拠を出していただかないと困るよ。でないと……警察を呼ばせてもらうね」そう言って、遥は手に持ったスマートフォンをひらひらと振り、今にも通報するかのような素振りを見せた。止めようとした翔平だったが、遥はまったく意に介していなかった。少し離れたところにいた熊谷湊斗は、ポケットに手を入れて録音データを取り出そうとしたものの、その視線は自然と鈴に向けられていた。そのとき。鈴は相変わらず落ち着き払っており、まるで全てが彼女の掌の上にあるかのような静けさで口を開いた。「安田さん、私が証拠を出せないって、そんなに自信があるんだね?でもちょうどよかった。私は、特に自分の作品に関しては、いつも万全の準備をするタイプなの」その言葉に、遥の表情がぴたりと止まる。「……どういう意味?」だが鈴は遥を無視し、周囲の人々に向き直って言った。「証拠はあります。このデザインの中に」一瞬、ざわめきが広がる。「どういうこと?このデザインに特別なものなんて見当たらないけど?」「そうそう、もったいぶらずに、ちゃんと証拠を見せてよ」「まさか、デザインに自分のサインでも仕込んでたの?」鈴はふっと微笑んだ。「その通りです。もし安田さんが多少アレンジしていたなら気づかれなかったかもしれません。でも、まるごとコピーされたとなれば、証拠ははっきりと残っているんです」そう言って、彼女は一歩前に出て、問題のデザイン画を手に取った。そして、皆の目の前でその図面を裏返す。「こちらをご覧ください。襟の部分です。私はいつも、デザインを描く際にある癖があって、襟元に必ず小さな印をつけるんです。ボタンの位置、そしてそのライン……MSという文字に見えませんか?」彼女の説明に促されるように、皆が身を乗り出して覗き込む。確かに――襟元には、うっすらとではあるが、線の中に「MS」という二つの文字が浮かび上がっていた。その瞬間、空気が変わった。「……ほんとだ、MSって書いてある……!」「丸パクリじゃん。これはもう言い逃れできないね」「盗作してバグまで残してるとか、ある意味すごいわ……」「さっきまで
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