「母さん、また何を言ってるんだよ!」翔平はあわてて声を荒げた。まさか由香里がここまで露骨に鈴を敵視しているとは、思ってもいなかった。……以前の自分は、ほんとうに見誤っていた。鈴はそれを気にする様子もなく、静かに言った。「安田さん、それじゃ、失礼するね」翔平は慌てて追いかけようとしたが、由香里がその腕をつかんだ。「翔平、ああ……なんだか胸が苦しい……息が……」「おばさま、大丈夫ですか?」望愛が慌てて駆け寄る。翔平もすぐに心配そうに前へ出た。「母さん、大丈夫?どうしたんだ……」けれど次の瞬間、由香里はさっきまでの苦しさが嘘だったかのように翔平の腕を引き寄せた。「翔平、お願いだから、あの女とはもう関わらないで。赤穂さんを見てみなさいよ、優しくて、家柄もよくて、有名なデザイナーよ?赤穂さんとなら、きっとうまくいくわ」その言葉に、翔平の眉間がぴくりと動いた。すべてを悟ったように、唇に皮肉めいた笑みを浮かべる。「……母さんの演技、ほんと見事だな。昔の俺なら、まんまと騙されてたよ」「翔平、なにそれ……そんな言い方ってないでしょ、翔平!」由香里の叫びもむなしく、翔平は一言も返さず、鈴の後を追って店を飛び出した。だが――すでに遅かった。外に出たときには、鈴の乗った車は通りの先で小さくなっていた。車内、鈴はさきほど受け取った名刺を指先で弄びながら、そこに記された「赤穂望愛」の文字を見つめていた。――なんだろう、あの人。終始にこやかで丁寧だったのに、どこか引っかかる。どこかで感じた違和感が、胸の内に小さな棘のように残っていた。鈴はスマホを取り出し、とある番号に電話をかける。数秒後、結菜の明るい声が受話器の向こうから弾けた。「どうしたの、鈴~。まさか私のこと、恋しくなっちゃった?」鈴はくすっと笑い、「今、忙しい?」「忙しいに決まってんじゃん、死ぬほど。で、なになに、どうしたの?」「ひとり、調べてほしい人がいてね」「へぇ?珍しいじゃん。どんなヤツ?まさか元カレの新しい彼女とか?」「赤穂望愛って名前、聞いたことある?」「んー……待って、それ、どこかで聞いたな……ちょっと待ってて、今調べるから!」しばらくザザッという紙の音とキーボードの音が混じる。数分後、電話の向こうから叫ぶよ
Baca selengkapnya