幸い、玲奈は後半もなんとか持ち堪えた。撮影が終わると、監督とプロデューサーはぜひ玲奈と秋年を連れて食事に行きたいと言い、すでに店も予約済みだと告げた。玲奈は断ることができず、仕方なく秋年の方を見やった。秋年は時計を見て、そろそろ玲奈にも何か食べさせたほうがいいと思い、承諾した。監督は藍子と主演男優も誘おうとしたが、プロデューサーに止められた。「人数は少ない方がいいさ、気軽な友人の集まりってことで」監督は少し考えた末、それに同意した。レストランは近くにあり、監督が事前に料理を注文していたため、到着するとすぐに食事ができた。秋年は玲奈のそばを片時も離れず、まずは食事を始める前に、彼女にスープをよそい、喉を潤し体を温めるよう促した。監督と秋年が話している間も、彼の視線はずっと玲奈に向けられ、話題も玲奈を中心に進められた。「監督、俺は今日はただのお供ですから、気にしないでください」玲奈は黙ってスープを飲んでいた。あまり話す気分ではなかった。秋年はそれを察したのか、自ら話題を振った。「今日の玲奈の芝居、どうでした?俺は素人ですが、それでも彼女の演技力には感心しました。特に最後のシーン、感情の揺れがすごかった。狂気から悲しみへの切り替え、あんなに自然にできるものなんですか?」「はは、岩段社長、玲奈のドラマをあまり見たことないですな。彼女の演技は一級品ですよ!」監督はそう言って、プロデューサーと共に玲奈を褒めたたえた。おかげで玲奈は黙ったままでいられた。秋年は彼女に料理を取り分け、もっと食べるようにと促したり、うなずきながら言った。「そうなんですね、あまり見たことがないもので。これは反省しないと、帰ったらしっかり勉強します!」「いやー、玲奈の作品は多すぎてね。代表作を一つ選べと言われても、どれが彼女を一番よく表しているか迷うくらいですよ」秋年も笑いながら相槌を打った。玲奈の体調はだいぶ回復していた。宴の後半には、彼女も少しずつ会話に加われるようになった。秋年はさすが、場慣れした男だった。こういう席では、完全に主導権を握っていた。彼が話題を振ると、自然とその方向に話が進む。それでいて、押し付けがましさも不快感もなく、彼と話していると自然とその魅力に惹かれてしまうのだった。玲奈は気づいた。人を見る目は
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