「了解!」心音はすぐに紗枝の意図を理解した。その声は怒りと冷静さが混じっていた。「この女......ほんとに許せない。絶対に、自分の仕掛けた泥沼で足元をすくってやります」ネット上では炎上がさらに拡大していた。真相を知らない多くのユーザーたちが、正義の名を借りて一斉に紗枝の作品を叩き始める。レビュー欄には低評価が次々と投稿され、誹謗中傷のコメントが飛び交った。だが、当の紗枝はその画面を一瞥することもなく、静かにスマホを伏せた。もっと燃えなさい。もっと大きく、もっと広く、もっと深く。すべてを引き出すには、今しばらく時間が必要だった。インターネットの拡散力を考えれば、24時間も経たずに全国の耳目を集めるだろう。それでいい。むしろ望むところだ。紗枝は椅子を押し、静かにダイニングへ向かった。まるで、何事も起きていないかのように。一方、逸之は自身のライブ配信の最中に、例のニュースを目にして激昂していた。「は!?ママが盗作?そんなわけないだろ!」視聴者のコメントがざわつく中、彼はすぐに景之に電話をかけた。「兄ちゃん、デマ流してるやつら、なんとかしてよ!早く!」電話越しに聞こえてきたのは、冷静にキーボードを叩く音。「慌てるな」景之の声は落ち着いていた。「心音さんがまだ動いてないの、気づかなかったか?」逸之は一瞬息を飲んだ。「それって、ママの作戦?」「ああ」景之は頷く声で続けた。「ママはタイミングを見てる。動くべきときが来たら僕も動く」同じ頃、唯は商品の発送準備に追われていた。景之から頼まれた手配や連絡業務が山積みで、スマホを手にする暇すらなく、世間が炎上していることなど露とも知らなかった。一方、入り江の別荘では、牧野がトレンドの見出しを見て額に手を当てていた。報告すべきか否か、判断が揺れる。社長の体調はまだ万全ではない。だが、この件を放置するわけにもいかない。そんな時、彼のスマホが鳴る。梓からの着信だった。「裕一!ニュース見た?紗枝さんが盗作って......ネットで誹謗中傷されてるわよ!」梓の声には切迫感が滲んでいた。彼女は紗枝の人柄を知っている。そんなことをするはずがないと、信じて疑わなかった。「紗枝さんって、賢司さんの奥さんでしょう?伝えないつもり?」「すぐ伝えま
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