「紗枝さん、今回の件については、すべて把握しております。悪いのは昭子です。彼女が勝手にネットで軽率な発言をしてしまいました」青葉はまず頭を下げ、穏やかな口調で続けた。「彼女も自分の非を認めました。あなたたちは姉妹です。二度と同じことは繰り返さないと約束しています。どうか、許してあげてください」青葉は、紗枝と美希が実の親子でないことを知らなかった。今回連絡を取ったのも、妹から「紗枝の背後に強力な後ろ盾がいる。穏便に済ませた方がいい」と耳打ちされたからだった。まさか青葉がここまで頭を下げてくるとは思っていなかった紗枝は、静かに問い返した。「つまり、青葉さんとしては、どうしたいと?」「追及はご遠慮願いたい、というのが本音です。あなたの損失については、私が責任をもって補償いたします」この程度の騒ぎじゃ、昭子を潰すことなんてできない。彼女の背後には鈴木家がついてるし、これ以上大ごとにすれば、黒木家にも波及する恐れがある。それに、拓司にすでに借りがある。これ以上、迷惑はかけたくない。昭子との決着は長い目で見ればいい。「それなら、昭子にきちんと謝罪してもらいましょう。彼女が『間違えた』ということで、私も納得します」紗枝の思いのほか現実的な返答に、青葉は一瞬驚いた表情を浮かべたが、すぐに「ありがとうございます」と頭を下げた。一方その頃、昭子は当然のように不満を漏らしていた。「お母さん、どうして私が公開で謝らなきゃいけないの?誤解だったって、言ったじゃない!」青葉の声色が、ほんの少しだけ鋭くなった。「誤解かどうかなんて、自分がごまかせればそれで済む話。でもね、あなたのせいで、おばさんの会社に所属する二人の看板タレントのスキャンダルが抑えきれなくなったの。分かってる?」昭子はその言葉の重さに気づき、渋々ながらも公開謝罪を受け入れた。彼女が謝罪文を発表した後、紗枝もそれに応える形で「許す」旨の声明を出した。ネット上で渦巻いていた噂は、こうして次第に人々の記憶から薄れていった。そして当然のように、紗枝は新曲コンテストで堂々の一位に輝き、予想以上の注目と名声を得た。皮肉なことに、ここまで話題になったのは、ある意味「昭子のおかげ」だった。彼女がホットツイートを買って話題を操作しなければ、紗枝の曲がこれほど多くの人に
Baca selengkapnya