All Chapters of 交際0日婚のツンデレ御曹司に溺愛されています: Chapter 1091 - Chapter 1100

不良たちは結局、唯花の話を大人しく聞くことにして、鈴に電話をかけた。唯花は二人のボディーガードに頼んで彼を抱き起し、電話をかけさせた。地面に倒れ込んでいたままでは、息遣いが乱れてしまうだろう。母親から早く不良たちに連絡するように焦らされていた鈴は突然不良たちからの電話を受け取った。そして、かなり嬉しそうに母親に言った。「お母さん、電話よ、電話が来たわ。きっとあの人たちが私の命令した任務をこなしたんだわ」そう言うと、彼女はすぐに待ちきれない様子で電話に出た。「山田さん、あの女の車を壊して、女も殴って意識を失わせました。でも、まだ息はあります、殺してはいません。早く残りの金を振り込んでくださいよ。俺らは今すぐにでも星城からとんずらしますんで」「殺してないならいいわ。写真を撮って送ってちょうだい。私が言った通りにちゃんとやったのか確認するわ。それが終わってから残りのお金を振り込むから。「俺ら、あの女が頭から血を流して倒れてるのを見て、殺しちまったかと怖くてすぐに逃げ出したんですよ。写真なんて撮る暇なんかなかったんです。早くしてください、金を振り込んでくださいってば。俺らさっさと逃げないと」「確実に私が言った女で間違いないんでしょうね？」鈴は唯花が殴られて頭から血を流し意識を失ったと聞いても、全く恐ろしく思っていないようだった。それとは逆にとても興奮していて、鬱憤を晴らせたと思っていた。だから他人のことに余計な首を突っ込むなと言ったのだ。この柴尾鈴に偉そうな口を叩いてきて、父親には結城社長のところまで謝罪に行かせたんだから、その罪は重い。「確実に彼女ですぜ。あいつは星城高校の前にある本屋を経営していて、ホンダの車を運転してるんでしょう。俺らはあいつが本屋を出てからずっと後をつけていたんですから、絶対に人間違いなんてしません」「だったらあの女で間違いないわね。いいわ、お金をあげるから、振り込まれたらすぐにこの星城から離れるのよ。それから電話番号も削除しなさい。決して誰にもばらしては駄目よ、そうしないと私はあんた達の命は保証できないからね。だけど、写真がないんだものね。もしあんた達が私からお金を騙し取ろうとしてたらどうするわけ？先に半分だけ振り込むわ。明日、あの女が本当にやられたって情報が入ってから、最後のお金を振り込んであげる」

彼女は唯花襲撃が成功したと思い込み、あまりの喜びに浮かれすぎて、うっかり録音された時のあの通話記録を消し忘れていたのだった。それから後の事は、理仁夫妻は警察に処理を任せることにした。家に帰ってきた理仁は、唯花にベタベタとくっついて回り、彼女が行くところにべったりとついて行ったのだった。唯花がナイトウェアを抱きかかえてバスルームに入ろうとした時も彼はくっついてきた。「理仁、理仁坊ちゃま、何か言いたいことがあるなら直接言ってくれればいいの。私たちは夫婦なのよ、何かあるなら、包み隠さずにはっきりと教えてちょうだい」唯花はバスルームの入り口の前で立ち止まり、ドアにもたれかかって、おかしそうに理仁を見つめた。「事情聴取が終わって帰って来てから、私の影みたいに行く先々についてくるんだもの」「唯花、今後はボディーガードを連れて出かけてくれないだろうか？四人のボディーガードを君につける。二十四時間、交代で常に君の安全を守るよ。君が危険なことに巻き込まれた時にだけ、俺に報告するようにすると約束するよ。監視するようなことは絶対にしないから。君は空手が少しできるけど、もし、次誰かが君よりも強い人間だったらどうする？大怪我をしてしまうかもしれない」理仁は彼女が二度も車の妨害に遭ったのを思い出していた。一度目は、彼ら夫婦が冷戦状態にある時で、彼は自分の身分を隠すため、すぐに彼女を助ける手配はしていなかった。彼が助けに入ろうと思った時には、すでに彼女がチンピラどもを成敗した後だった。そして今夜は二度目だ。今回の不良たちは前回陸が連れて来た奴らよりも手強い相手だった。理仁がひそかにボディーガードを唯花につけていたおかげで、彼女は無事だったのだ。「もう私にボディーガードをつけていたでしょ？別にそれに関して私は何も言っていないじゃないの」「たったの二人だ。あと二人増やしたいんだ。だから君とはちゃんと相談しておかないと」ひそかにつけていた二人のボディーガードは変更するつもりはない。ただ、はっきりとわかるところにも唯花を守るためあと二人をつけておきたいのだ。そうすれば相手を脅す効果もある。唯花に何か手を出そうとしてくる者たちが、唯花が出かける時にはボディーガードをつけていると知れば、そう簡単に手出ししてくることはないだろう。「昼間も、出かける時には

悟は笑って言った。「理仁、君はもう俺が知っている理仁じゃなくなったな。こんな話を安永社長に言えるとはね」「うちの唯花さんが、家に帰る途中で、不良どもに車を壊されたんだ」悟はそれを聞いてわくわくしてきたようだ。「怖いもの知らずな奴だな。君の奥様の車を襲うなんて死ぬのが怖くないのか？病院送りになったか？」理仁はその瞬間、泣けばいいのか笑えばいいのか、どんな感情になればいいのかわからなかった。「今から調査させるよ」「必要ない。誰の仕業かはわかっている」「誰だ？」悟は好奇心旺盛に尋ねた。ここで噂好きの血が騒ぎ出し、彼の豊富な想像力を発揮し始めた。「君の追っかけしてる女の子かい？」理仁「勝手な事言うな！そんなわけないだろう！」彼は怒った様子で言った。「柴尾鈴という女だ」悟は即座にどの柴尾家なのか理解し言った。「柴尾鈴って言えば、奥さんと一悶着あった人だろう。またやってしまったって？それはまずいだろう。柴尾社長自ら君に謝罪に来てからまだ数日しか経ってないじゃないか。あの社長の愛娘がまた君たち夫婦を怒らせたのか。で、捕まえたか？」「警察に通報した。証拠があるから、すぐに犯人を捕まえることができたんだ。悟、俺がこれを話したのは、ちょっと頼みがあるからなんだ。数人雇って、こっそり柴尾社長夫婦の一挙一動を観察させてくれないか。それに唯花さんのクズ親戚どももな」悟はそれを聞いただけで全て理解した。「つまり、柴尾社長がこそこそ報復してこないか心配なわけだね？」「用心するに越したことないからな。柴尾鈴はあの夫婦の溺愛している娘だ。甘やかされて育てられたもんだから、今彼女が警察に捕まり、柴尾社長夫妻が報復行動に出る可能性は高い。動きを観察しておけば、ある程度避けられることは多くなるだろう」悟も親友のその話には一理あると思い、快く引き受けた。「わかった。帰ったら、その二つの家の行動を監視する手配をしとくよ」「頭の冴えた人を雇ってくれ。柴尾家のあの夫婦は決していい人間ではないからな」理仁と唯花二人は柴尾咲の父親の件を分析し、陰謀により亡くなった可能性を感じていた。柴尾社長は実の弟が死んだ後、彼の妻と結婚した。彼は周りに、弟に代わってその妻と娘の面倒を見るためだと言っていたが、それを周りが本気にするとでも思っているのだろうか？柴尾社

唯花と理仁は、もう結婚してからだいぶ経ってきて、お互い気持ちも深くなり、親しくなっているのに恥ずかしがってどうするのだ。少ししてから、唯花が部屋から出てきた。するとまたおばあさんが存在しないはずの老眼鏡をあちこち探しまわっている姿を見て、言った。「おばあちゃん、見つからないならもういいじゃない。後で新しいのを作りに行きましょ」「それもいいわ。じゃ、もう探すのは諦めましょ。年を取って記憶力が衰えてきたのよ。ここに絶対置いたのに、今見つからないんだもの。もしかして手足でも生えてどこかに行っちゃったのかしら」唯花は笑って言った。「きっと羽根が生えて、蝶々になって飛んでいったのよ」おばあさんは残念そうに言った。「蝶々に変身して飛んでいったのを見られなくて残念ね」唯花はおばあさんの言葉に笑っていた。「おばあちゃん、昨日は何時に帰ってきたの？」「あなた達よりも早く帰ってきてたのよ。昨夜は早めに寝たの。あなた達がいつ帰って来たのかこっちこそわからないわよ」唯花はその言葉をあまり信じられなかったが、それ以上は追及しなかった。三人は朝食を済ませると、おばあさんは、マンションの他のご老人とおしゃべりをすると言って出かけていった。理仁は唯花を店まで送っていった。唯花は途中で姉に電話をかけた。「お姉ちゃん、今日はお店のほうはどう？」「順調よ。忙しくて全く休憩できないくらい。清水さんが早くに手伝いに来てくれたからよかったわ。もし、毎日毎日こんなに忙しいんじゃ、誰かアルバイトでも雇わないといけないもの」清水は妹の家の家政婦なので、ずっと手を借りておくわけにはいかないだろう。唯月は初め、アルバイトを雇う気になれなかったのだ。店がオープンしてその売上がどうなるか未知数だったからだ。「絶対ずっとその順調なのが続くわよ」唯花は姉が弁当屋を開くと決めた時、その店は絶対に人気になると思っていたのだ。「唯花、お姉ちゃん今忙しいから、後で暇になってからまた話しましょ」唯月は忙しすぎて猫の手でも借りたいくらいなのだ。妹と電話をする時間もない。「じゃ、お姉ちゃん頑張ってね。昼過ぎに陽ちゃんを連れてご飯食べにおいでよ。あなた達が好きなものを買っておくから」唯月はそれに快く返事した。彼女は妹のところに行く用事があった。あの内海家から実家を取り戻す

陽は恐らくこの「商売」というものが何なのかはわかっていないのだろう。しかし、母親がここにいて、叔母の唯花とその夫は例外であるだけで、それ以外の人は例外ではないのだということを知っているのだ。俊介はそれを聞いて言葉に詰まってしまった。そしてすぐにこう言った。「陽、俺はお前のパパなんだぞ。どうして東って人とパパを比べられるんだよ。あれはよそ者だ。あいつはな、良い人間じゃないんだ。めちゃくちゃ怖い奴なんだぞ」陽はそれを認めて頷き、幼い声で言った。「あずまおじたんはとっても怖いよ。だけどね、おじたんは、わるい人じゃないもん！」前回息子を唆して、ただ隼翔が唯月のところ来るのを息子を使って妨害させようと考えた時のことを思い出した。俊介はうまいことここでタダ飯を食べようと企んでいた話題を変えて、息子とこれ以上この話題で話したくなかったが、陽は頑なにその話題から離れようとしなかった。陽は東おじさんはとても怖いが、悪い人ではないと言った。父親である彼がいくらその考えを変えさせようとしても、一向に変えることができなかった。「わかったよ。金払えばいいんだろ、金をさ。唯月、離婚してから、お前って本当に金にがめつい女になったよな。ものすごいケチになってるぞ。何から何まで俺に金、金って。これでも俺らは昔は夫婦だったんだぞ」俊介は文句を垂れながら、息子を下におろして財布を取り出し、その中から五百円を取り出して唯月に渡し、言った。「その朝食セットをくれ」唯月は彼のお金を受け取り、五十円おつりを渡した。「まだ離婚してなかった頃、あなたは私と生活費は半分ずつ出せと言ったでしょ。何をするのもあなたは私にお金を払わせたじゃないの。今、あなたと私は一切の関係もないのよ、なのにどうしてこの店でタダでご飯が食べられると思えるわけ？」俊介はまた言葉を詰まらせた。女は本当に恨みをいつまでも覚えている生き物だ。あの生活費を夫婦で折半していた日々は、たったの一カ月か二か月ぐらいだった。離婚してから今に至るまでもう数カ月も経っているというのに、唯月はあの時の恨みを今でも心に留めている。「俺は陽の父親だぞ」「まんぷく亭は私の店であって、陽の店ではないわ。あなたは確かに陽の父親だけど、私の父親ではないわよ。その父親だとかいう肩書をどっかに置いてきなさいよ」俊介「……