奏汰は立ち上がり、微笑みながら右手を玲に差し出して握手を求めた。「白山社長、お邪魔しています」玲は握手を交わすと、彼を座らせた。奏汰が座ると、玲は母親の隣に座った。弥和は気丈で凛とした娘のほうへ頭を傾けて、それからまた対面に座る奏汰のほうに視線を移して心の中でため息をついた。娘は結城奏汰よりも、もっと男前に見えてしまう。「どうして帰ってきたの?」弥和は穏やかな声で娘に尋ねた。「この時間帯なら、会社にいるんじゃないの?」「さっきあるプロジェクトの商談が終わったんだ。少し時間ができたから、母さんたちに顔を見せに来たんだよ」玲の出すその声はかなり低かった。家族以外の人間がここにいては少しも気を緩めるわけにはいかない。奏汰に自分が実は女性であることを勘づかれては困る。「結城社長はいついらっしゃったんですか?」玲は奏汰に尋ねた。奏汰は笑顔で答えた。「今日柏浜に来たばかりです。少し仕事のトラブルで私が処理しなければならない問題があって、暫くの間出張でここに滞在する予定です。前回、おば様とは同じテーブルで食事をし、とても楽しかったので、また今日はお邪魔しました」「結城さん、今後柏浜に来る機会があれば、うちに寄っておしゃべりしましょう。おばさん、あなたと話すのがとっても好きなのよ」弥和はこの好青年のことを気に入っていた。奏汰は口が達者で、彼とおしゃべりをしている時、彼は相手の年齢に気を使いながら、年上と会話をしている。彼は相手の年齢に合わせてその当時に流行った物事などに詳しいのだ。彼はもちろんその年代に育ったわけではないが、おばあさんから聞いて多くの知識を蓄えているから、それらを話題にするのはお手の物だ。だから、弥和はまるで趣味仲間を見つけられたような、そんな感覚になる。弥和のような中年過ぎの女性と話をする時、奏汰は子供の人生についてや、伝統料理や家庭料理の作り方、その他なんでも共通の話題を提供することができた。弥和は娘が寡黙であることに慣れてしまっていて、普段娘とおしゃべりをしようと思っても、話が続かない。そんな時突然、このように彼女と楽しく話せる若者が現れたものだから、弥和は奏汰とは意気投合してしまった。この二人も以前二回しか会ったことはないのに、今弥和は奏汰のことをまるでよく知った甥っ子のように見ている。もし
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