All Chapters of 交際0日婚のツンデレ御曹司に溺愛されています: Chapter 1821 - Chapter 1830

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第1821話

唯花は、はははと笑った。「奇遇ですね、私も一人の男性を誰かと分け合うことは好きじゃないんです。辻さん、もし、理仁の妻の座が欲しいのであれば、彼のところに言いにいけばいいですよ。理仁が承諾したのなら、私はすぐにでもこの結城家の若奥様という地位をあなたに捧げますので」夕菜は言った。「……あなた、理仁さんには相応しくないんだってば」「理仁と結婚したのは私で、私が彼の妻です。法律上でもちゃんと手続きを済ませた夫婦ですよ。私と彼が互いに相応しいかどうかは、それは私たち夫婦のプライベートなことであって、辻さんのような部外者の方に心配していただく必要はありませんよ」喜んで自分が浮気相手の女になると決め、他人の家庭に足を突っ込もうとするのは、モラルの欠片も持ち合わせていない厚顔無恥な人間だろう。「それに辻さんから私と彼がお似合いかどうかなんて言われる筋合いはないと思いますけどね。あなたって理仁の何なんですか?あなたは一体何様のつもりですか?理仁のおばあ様からも、ご両親からもそのような言葉を言われたことは一度もありません。それなのに関係のない辻さんに言われるような話ではないと思いますが」夕菜は言葉が出なかった。唯花の言葉に夕菜は言い返す言葉が見つからず、さっさと電話を切ってしまった。唯花は夕菜が電話を切った後、悪態をついた。「家柄もいいし、何をしても優秀な人なんでしょうけど、頭の中は空っぽなのね。どこかに頭でもぶつけたんじゃないかしら。自分から浮気相手になろうとするなんてすごい人だわ!」夕菜と比較すると、唯花は従姉である姫華は非常に珍しいタイプだとますます思えてきた。姫華こそ正真正銘、名家の令嬢だ。優れた人間で、考え方がしっかりしている。「私がよく知る浮気女の典型的なタイプは成瀬莉奈だけど、今じゃ警察に捕まって刑務所から出られないってのに」唯花はぶつくさとぼやいていた。あのように浮気相手になろうとする女の気持ちがどうしても理解できなかった。正当な道が歩けないのか?どうしても人様に顔向けできないようなことをして、一生浮気女だと罵られようとする。彼女たちが生んだ子供は一度周囲から浮気相手が生んだ隠し子だと知られれば、軽蔑の目を向けられるというのに。ズキズキと痛む腰をさすりながら唯花は洗面を済ませ、着替えてから下におりていった。彼女は
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第1822話

唯花は一瞬でどういうことなのか理解した。きっと誰かに媚薬のようなものを盛られたのだろう。それで家に帰ったら夫が火照る彼女の体を元に戻してくれたのだ。それで起きたら腰が少しズキズキしたということだろう。唯花はその話をおばあさんと続けるのは恥ずかしくなり、そそくさと朝食を食べに行くしかなかった。理仁が帰ってきたら、この件を尋ねてみればいい。これと同時刻の結城グループでは。社長室に珍しい客が訪れていた。白鳥一颯だ。理仁はさっきサインペンを置き、片手でデスクの上にあるコーヒーを持ち上げ、もう片方の手でポケットにある携帯を取り出し、愛妻に電話をかけようとしていた。その時ちょうど一颯がノックして入ってきた。一颯の姿を見て、理仁は今は愛妻に電話をかける手を止め、コーヒーを口に含んで一颯が向かってくるのを見ていた。「理仁」一颯は理仁に声をかけ、スッと理仁の対面に腰掛けた。「何か飲むか?」理仁は従弟に尋ねた。「喉は乾いてないんだ。後で乾いたら、自分でお茶でも入れて飲むよ」従弟なので、理仁も気を使うことはなかった。彼が喉が乾いていないと言うので、本当に何も入れて持ってくることはなかった。「珍しく俺のところに来たけど、何か頼み事でもあるのかな?」白鳥家の者はみな目立たないように日々を過ごしている。一颯のように理仁と親密な人間であっても、表向きにはあまり理仁のオフィスまで尋ねてくるようなことはない。そういう理由もあり、この日一颯が突然尋ねてきたので、理仁は何か頼み事があるのだろうと思ったのだ。「神崎さんの件以外で何もないだろ」理仁はコーヒーカップを置くと、じいっと一颯を見つめて尋ねた。「どうした、暫く会わないうちに、神崎姫華のことを好きになったか?」一颯は焦って否定した。「そんなわけないだろ、神崎夫人が俺のところにいろいろ頼みに来るんだよ。それも、俺に神崎さんのことを好きなふりをして彼女を口説いてくれないかって頼みなんだ。そうすれば桐生君を諦めさせることができるとかなんとか。神崎夫人は最初から桐生君を受け入れようとしていない。娘が遠くに行ってしまうのを恐れてるんだよ。俺からしてみれば、あの桐生善が娘を好きになって結婚したいと言えば、裏でニヤニヤと喜ぶべきだろ。神崎さんはこの星城では悪名高い令嬢だ。それに昔は理仁のことを
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第1823話

「それに神崎夫人だけが何度も俺に頼みに来てるんじゃないぞ。息子の玲凰君までも手段を選ばないんだ。親子二人でまるで俺を飲み込もうとしているようだ。俺ってそんなに美味しそうに見えるのか?」一颯は神崎家がここまで固執するのがどうも理解できない。本気で姫華と善の仲を裂いてしまったら、一生彼女が結婚できなくなるか心配ではないのだろうか。姫華は両親の言うことをおとなしく聞いて親が選んだ相手と結婚するようなタイプじゃないだろう。以前、神崎家の誰が姫華が理仁を追いかけるのを応援していただろうか?彼女は家族から反対されても自分の意見を変えずにいくところまでいってようやく諦めがついたというのに。それにしても、姫華のあの頑固さはきっと神崎家の遺伝なのだろう。一家揃ってこのような性格をしている。かなり一つのことに固執して、誰もが一歩も引こうとしない。理仁もどうしようもないといった様子で言った。「俺には夫人を説得することはできないぞ。俺の妻も何度も説得を試みたが全く効果はなかった。お前のほうはどう思ってるんだ?神崎夫人の頼みを聞くつもりなのか?」一颯は言った。「まだ返事はしてない。ただちょっと鬱陶しくって、理仁に文句を聞いてもらいたかったんだ。俺は、その……自分の気持ちをコントロールできずに神崎さんを好きになるんじゃないか不安なんだよ」姫華は自分の気持ちに突っ走るタイプだ。以前、彼女が理仁のことを好きだった頃のことを思い返してみても明らかだ。そして今姫華の好きな人は善だ。家族は彼女に反対しているが、彼女はそれでも善と付き合っている。時間をかけて家族から同意してもらおうと思っているのだ。一颯のほうは姫華が簡単に自分のことを好きになると心配はしていないが、自分のほうが気持ちを抑えきれずに、姫華を好きになってしまわないか不安だった。そして結局最後に傷つくのは彼自身なのだ。神崎夫人はそこまで彼が誘惑に負けない強い男だと確信しているのだろうか?彼は姫華が噂に聞くような女性ではないと気づいた。その逆にはっきりした彼女の性格が一颯の好みだった。理仁は驚き、一颯を暫く見つめて、ぶはっと笑い出すと、からかうように言った。「一颯、俺は初めてここまで自信のないお前を見たぞ。まさか、お前が神崎嬢を好きになるんじゃないか不安になってるなんてな」その瞬間、一颯の顔
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第1824話

もしここに善がいれば、さっきの理仁の言葉に対して彼は理仁にいろいろとしてあげたのにこのような態度をとるのかと文句を言うことだろう。それに対して理仁は、ライバルがいてプレッシャーを感じることで、我が妻の従姉をさらに大事にするだろうと言い返すはずだ。一応神崎姫華の親戚として、善にある種の試練を与えているのだと。善が好きな人と結婚するのに障害が多いものだ。「弦さんが女性に何も感じられないと?」一颯は何か新たな発見をしたかのように、理仁のその言葉に急に興味を持ち始めて理仁に尋ねた。「理仁、弦さんはどうしたんだ?つまり、その、たたないってことか?なるほど、それで彼と隼翔君は年齢的にそう変わらないのに、今まで独身だったわけか。彼はただ好きな人に巡り会えないだけかと思ってたけど、そういう事情があったってことか」現在に至るまでひたすら他人の秘密を知るばかりだった弦が、まさかいつの日か、噂される対象に自分がなるなど思ってもいなかっただろう。「そうじゃない、性的関心が弱いパーソナリティ障害の一種のようだ。彼が本気で好きになれる縁のある女性に出会えれば、きっとその関心は出るはずだ。もしそんな女性が現れなければ、今のまま変わらないだろう。彼がパーソナリティ障害かどうか本当のところは俺にもわからない、もしかしたら弦さんが家族から結婚を催促されるから、わざと俺たちにそう言ったのかもしれないしな」理仁がそう話すと、一颯は「そうか」とひとこと返事し、さっきまでの興味は薄れたようだった。「それなら絶対に嘘だよ。彼の年齢なら家族から結婚の催促をされて当然だ。だけど、彼は結婚したくないから、ご両親に適当な嘘をついて拒絶しているだけだよ」「しかし、弦さんの父親がばあちゃんに尋ねたことがあるんだ。ばあちゃんはよく当たるという腕のいい占い師と知り合いだろ?その人が俺と唯花が夫婦になるって言い当てたんだ。それでばあちゃんが恩返しのために俺に彼女と結婚しろって言ってきたんだよ。その人が弦さんの父親に何て言ったのかはわからないが、本当に結婚の催促をしなくなったらしいんだ」一颯は目をぱちぱちとさせた。「つまり、弦さんが言っているのは本当だったってことか?パーソナルなんとかって言ってたよね?今まで聞いたことないな」「俺は医者じゃないし、そういうのには詳しくない。弦さんが女性にあま
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第1825話

「今すぐ弦さんのところに話に行ってくる」理仁がとても忙しい人間であることを知っていて、一颯は自分の訴えが終わると、立ち上がって別れを告げた。「もう行くのか?弦さんは家にいるとは限らないから、悟に聞いてから九条家に行くほうが時間が無駄にならないぞ」弦はなかなか会うことのできない人物であるので、一颯はそれに頷いた。彼は言った。「俺も焦りたくはないんだけど、神崎夫人がまた俺のところに話を持ってきそうで怖いんだよ。彼女が誰かをはめようとする時は、まったく相手に気づかれないようにやってくるんだ。気づいた時にはすでに彼女の罠の中に飛び込んでしまってる。そこから抜け出ようと思っても難しいんだ」理仁は笑った。「彼女が罠を仕掛けようとするくらい、お前が優秀な奴ってことだよ。神崎家は家族全員神崎嬢のことをとても大事にしているって、星城に暮らす人ならみんな知ってるだろ。かなり優秀な人物じゃないと、神崎家は目もくれようとしないさ」「理仁、俺を褒めているのか、それとも人の不幸を見て楽しんでるのか?」「そのどちらもだな」一颯は不機嫌そうな顔をして言った。「今から悟君に尋ねてみるよ。最近神崎夫人の事があって、落ち着いて仕事することができないんだ。この損失は玲凰君に請求するぞ。あるプロジェクトがあるんだけど、それを彼に受けてもらおう。彼からお金を搾り取ってやらないと」「何か良いプロジェクトがあるなら従兄の俺に声をかけてくれればいいじゃないか。豪快に投資して、提携して一緒に儲けよう」「そんなの言うまでもなくわかってるよ」一颯は笑いながら、足を止めずに外へと向かって歩いていた。理仁は立ち上がったが、一颯を見送るためではなく、オフィスの中でうろうろ歩き回り、最後に窓際に近寄り外の晴れた青い空を見ていた。そして携帯を取り出して唯花に電話をかけた。すると唯花はすぐ電話に出た。「唯花、起きた?」唯花は笑って言った。「まだよ。今は夢の中であなたと電話してるの」理仁も笑った。「もうご飯を食べた?」理仁は彼女を心配して尋ねた。「俺が作ったスープは絶対に飲むんだよ。体に良いから」「もちろんよ、理仁、昨日の夜って、私誰かにはめられたんじゃない?ワインを飲んだ後のことを覚えていないのよ。今日起きた時は腰が痛かったし。夜はずっと夢の中であなたとイチ
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第1826話

唯花は夫が「解毒剤」になる美味しいところがあったからこそ、その男に手を出さなかったのだろうと思った。それに相手は決して唯花を狙ってやったことではなかったからだ。もし唯花を狙っていたのであれば、彼の性格からして表では直接手を出すことはないだろうが、裏でそのエロじじいが再起不能になるまで苦しめていたはずだ。唯花に自分の心を見抜かれていると感じ、理仁は付け加えた。「あいつが君を狙ってやったことじゃなかったけど、あの恥知らずのクソエロじじいのことを俺が許しておくわけないから、安心して。俺がいる限り、君の憂さを晴らしてやるさ」「てっきり辻さんが裏で何か小細工したのかと思ってた。さっき私に電話してきたんだけど、はっきり私にあなたのことが好きだって言ってきたのよ。あなたに一目惚れしたんだって。理仁、あなたって本当にモテモテね。結婚前でも結婚後でもあなたを慕う子がかなりいるんだもの。しかもその子たちってみんな若くて綺麗な子たちばかりよ」最後の言葉を吐く時、唯花はかなり嫉妬しているようだった。それを聞き取った理仁は彼女は尋ねた。「ヤキモチ焼いてる?」「そんなわけないでしょ。ヤキモチなんてねちゃねちゃしてて、全然好きじゃないもの」理仁は笑った。「唯花、そういう言葉を言う人って、現実にいつか打ちのめされちゃうんだよ。君の夫は経験者なんだからな」唯花は大笑いした。「確かにちょっとヤキモチ焼いたわよ。だけど、ライバルに立ち向かうことはできるんだから。ライバルが多いってことは、つまり夫がとっても素敵な人だって証拠で、私はとっても幸せな人間ってことよ。みんなが結婚したいって思ってる男性と結婚できたんだから、私って神様の申し子なのよ」確かに唯花は神様に愛される人間だから、理仁のようなスパダリと結婚することができたのだろう。ただ、彼がもう少し心が広く、いつもいつも構ってくれないと愚痴をこぼしてこなければ、もっと良いのだが。本来彼女は今日出張する予定だった。しかし、今の状況では明日に延期するしかなさそうだ。「あなたは忙しいでしょ、さ、仕事に戻って。私はやる事があるから」「やる事って?」理仁はすぐに尋ねた。「まさか金城とかいう男に会いに行きたいとか?二人は久しく会っていなかったから、積もる話でもあるんだろう?どこで会う気だ?俺も今からそこに行く。君が誰かに
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第1827話

「唯花、苦労をかけるね」理仁は申し訳なさそうにそう言った。彼は決してやましいことなどしない人間だが、何もしなくても多くの虫を寄せつけてしまうものだから、自分でもうんざりだった。唯花は真面目に言った。「あなたが私のことを好きでいるから、誰にも渡したくないって思うの。もし、あなたが浮気でもしようものなら、私も執着せずに他の女に譲るわ。もしあなたが私のことを好きでいないなら、こんなライバルが次から次に出てくるような磁石みたいに多くの人を惹きつける夫なんて、私がいつまでも守りたいと本気で思っているの?」「唯花、俺は君を愛している。永遠に君だけだ。俺のこの一生は君だけしかいない!だから、他の誰かに譲ろうなんてしないでくれよ」「ふふ、だったらあなた次第ね。じゃ、電話切るね、仕事頑張って」唯花はそう言い終わると電話を切った。電話を切った唯花は珍しく、おばあさんに理仁のことを訴えた。「おばあちゃん、可愛い可愛い孫がまたヤキモチを焼くのよ、前から全然変わらないわね。きっとずっとこのまま変わることはないのよ」おばあさんは言った。「昨日の夜そのことであの子に喝を入れたところよ。また構ってくれないって不満を言い出したら、私に教えて、私が本当の無視ってのを教えてあげるから」唯花は興味を持って尋ねた。「おばあちゃん、それってどうやるの?」「あの子のすべての連絡方法を拒否るのよ。そしておばあちゃんと一緒に十日から半月旅行に行って帰って来ないの。そうすればあの子も本当に人から無視される苦しさを味わうことができるでしょ」唯花は言った。「……以前、彼が私の連絡先をブロックしたことがあって、後からどうにかしてまたLINEを追加しようとした時なんだけど、あの時に彼に言ったんだよ。もし、私たちがまた連絡先をブロックするようなことがあれば、それは別れの時だってね」「あら、そうなの。じゃ、新しい携帯に変えて、理仁に新しい携帯の番号を教えなければいいわよ。今使ってる携帯は家に置いておけば、彼はあなたに連絡できなくなるから」「でも、彼は調べられると思う」「おばあちゃんがいるから、そんな真似させないわよ。あなたは安心して私と一緒に旅行すればいいの、どう?唯花ちゃん、ちょっと私と遠出してみない?」おばあさんは孫の嫁に一緒に旅行しようと力説していた。「私は明日から出張で
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第1828話

「桐生家のおばあ様は私よりも良い運の持ち主ね」結城おばあさんは羨ましそうにそう言った。桐生おばあさんも結構な年齢だが、夫もまだ健在で彼女の傍にいるし、子供や孫にも恵まれみんな孝行者だ。おばあさんも子供と孫に恵まれているが、夫にはもう何年も前に先立たれてしまった。彼女は内心とても寂しかった。あの自分のことをとても大事にしてくれていた夫はもう傍にはいない。そしてじっとしていると、さらにその寂しさが増してしまう。だからこそ、彼女はここまで孫のことにいろいろと首を突っ込んでくるのだ。「唯花ちゃん、何か用があるって言ってたわよね、行ってらっしゃい。おばあちゃんは荷造りしておくわ。すぐに出かけられるようにね」唯花は頷いて、おばあさんと一緒に玄関を出て、188番地の家に住む住人の件を処理しに向かった。それと同時に唯花は姉に電話をかけて、夏休みの終わりのこの時期を利用して陽を旅行に連れて行きたいと話した。唯月はこの時、陽を連れて新しい店舗の様子を見に来ていた。妹から電話を受けて、快くそれに同意した。夏休みももう終わるというのに、唯月は息子を遊びに連れていっていないのだ。それに今も、相変わらずそのような時間がとれない。陽は母親と叔母の会話を聞いていて、母親が電話を切ると上を見上げて尋ねた。「ママ、おばたん、ぼくをどこに遊びにつれていってくれるの?」「おばちゃんは何も言ってなかったよ。ただあなたを連れて遊びに行くってだけ。九月一日になる前に帰ってくるんだって。一日から幼稚園が始まるからね」陽は「そっか」とひとこと返事し、すぐに嬉しそうにまた言った。「おばたん、いつ出発するの?」「午後よ。まずはおうちに帰って、あなたの洋服を用意してあげるね」陽は嬉しそうに頷いていた。おばあさんは行動派だ。午後になると、本当に唯花と陽の二人を連れて旅行に行ってしまった。唯花は柏浜での恋物語を間近で楽しむため、本来商談のために出張する予定だったが、それを姫華に任せてしまった。ちょうど姫華も母親を避けるために出かけたいと思っていたところだ。母親がひたすら彼女と善が一緒になるのに反対していて、どうにかして一颯とくっつけようとしてくるので、姫華はかなり鬱陶しく感じていた。同じく一颯も勘弁してくれと思っているし、それなら出張にでも行って逃げたほ
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第1829話

「若奥様は……いらっしゃいません」理仁は足を止め、振り返って吉田に尋ねた。「彼女はどこに行ったんだ?」「何も聞いておりません」家に帰ったというのに妻に会えなくて理仁は少し落胆し、すぐに携帯を取り出して唯花に電話をかけた。呼び出し音が長く鳴り響き、唯花は結局電話に出なかった。電話を切ると、理仁は吉田にまた尋ねた。「妻は誰と一緒に出かけた?ばあちゃんか?」家の中からはテレビの音が聞こえてこないので、おばあさんはきっといないのだと理仁は予想した。「ええ、陽様もご一緒でございます」理仁はひとこと「そうか」と返し、それ以上は尋ねず、唯花のために用意したプレゼントを持って家に入った。おばあさんはおとなしく家でじっとしているようなお年寄りではない。恐らく唯花を連れて夜食でも食べに行ったか、夜風にでもあたりに行ったのだろう。吉田は理仁の後ろをついて歩き、何か言おうとしてやはり言葉を呑み込んだ。理仁はそれには気づいていなかった。理仁はリビングに入ると、プレゼントをロ―テーブルの上に置き、ソファに座った。そして再び携帯を取り出して唯花に電話をしてみたが、呼び出し音は鳴るものの、やはり電話は繋がらなかった。「なんで電話に出ないんだ?」理仁はLINEでメッセージを送り尋ねることにした。【唯花、どこにいるんだ?どうして電話に出ない?ばあちゃんが君を連れてどこかに『悪さ』でもしに行ったんじゃないだだろうね?】理仁は父親から、結婚したばかりの頃、おばあさんはよく麗華を連れて「悪さ」をしに行っていたと聞いたことがある。それから麗華の性格とおばあさんがあまり合わなかったらしく、おばあさんは彼女を連れて遊び回るのは好きじゃなくなったらしい。唯花と麗華の性格は全く違う。唯花はおばあさんと仲がとても良く、おばあさんがもし唯花を連れて遊び回りたいと言えば、彼女は喜んでそれにお供するはずだ。唯花からの返信はなかった。理仁はぶつくさと呟いた。「まさかホストクラブにでも行って違う世界の扉を開こうとしてるんじゃ」おばあさんは本気でそのようなことをするのだ。おばあさんはホストクラブにいる男が一番イケメンだと言っていた。以前、おばあさんは情報を集めるために、何度もホストクラブに通ったことがあるらしい。そこには数多のイケメンが勢揃いで、おばあさんがそ
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第1830話

理仁は信じられなかった。「うちの祖母と唯花が陽君を連れて旅行へ?そんなこと聞いていませんよ!唯花には電話をしたのですが、ずっと繋がらないんです。LINEを送っても駄目だし、夫を家にほったらかして、自分だけ羽目を外しに行ったんじゃないですか!義姉さん、見てください、唯花はだんだん俺のことを軽く見るようになっていませんか。こんな大事な事も俺にひとことすら伝えてくれなかったんですよ。普段仕事のために彼女はよく出張に行っていて、数日経ってようやく帰ってくるんです。いつも俺の存在を忘れているようなんですよ。いや、普段のことならまだしも、今日は旅行に行くっていうのに、俺に何も言わないなんて。わざと俺を家に置いてけぼりにするつもりだったんですよ。彼女がもし俺に言ったら、振り払われようとも、絶対にくっついて行きましたから」唯月は言った。「……唯花も最近はすごく疲れていたから、ちょっと遠出してリラックスしようと思ったんですよ。あの子はあなたのことを忘れているわけじゃありません」妹の夫は夫婦で少しでも喧嘩をすると、必ず唯月のところに訴えに来る。それで彼女は妹のことを非難するのだ。そして今唯花は、夫婦がもし小さな事で喧嘩しても、絶対に理仁には出かけることも、電話をかけることも阻止すると言っていた。彼がまた姉のところに訴えに行くのを恐れてのことである。理仁は何があったか訴えるだけでなく、いつも唯花が彼をほうっておくだの、愛が足りないだの、安心感を与えてくれないだの文句を言っている。彼は自分がキーホルダーにでも変身して、いつでも唯花の傍にぶら下がり一緒にいたいとまで言うのだ。それには唯月も呆れるしかなかった。「義姉さん、唯花は俺の存在なんか忘れてしまってるんですよ」理仁はかなり辛そうにそう言った。「彼女は未だ電話にも出ないし、返事もしないんですよ」「だったらこうしましょう。私からあの子に電話をかけて、あなたに電話をするよう言っておきます。結城さん、唯花はきっと急に旅行が決まって、あなたの仕事に影響することを気にしてるから言わなかっただけです。ちょっと待ってくださいね、すぐに電話してみますから」唯月はそう言いながら、妹の夫からの電話を切り、妹に電話をかけてみた。すると妹も電話に出ようとしないので、仕方なくおばあさんのほうにかけてみたのだが、おばあさんの携
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