《交際0日婚のツンデレ御曹司に溺愛されています》全部章節:第 2021 章 - 第 2030 章

2108 章節

第2021話

「伯母さんには伝えた?」理仁は唯花に尋ねた。「ええ、伯母様に会いに行ったんだけど、あの件を伝えるためだったの。彼女は子供時代の事はあまり覚えていないらしいわ。ただ、子供の頃、家庭条件は良くて、周りからは『お嬢様』って呼ばれていたことは覚えているって。お母様は特に忙しい方で、いつも父親が世話をしてくれていたんだって。それから、伯母様の祖父母はあの時代、彼女たち姉妹のことを女の子でも煙たがらず、逆にとても喜んでいたとか。伯母様の話したこの記憶から、私は十中八九、彼女は黛家の前任当主の娘だと思うのよ」理仁は頷いた。「黛っていう名字は極端に少ないからね。伯母さんの旧姓が黛だと、どうしても柏浜の黛一族と関りがあるんじゃないかって思ってしまうものだ。それに、聞いた話から今考えるとその推測は間違っていないと思うよ」唯花は少しだけ黙ってから言った。「伯母様は今ちょっと心が乱れているみたいで、少し静かに考える時間が必要みたい。それに旦那さんと息子の玲凰さんも呼んで、自分が本当に黛家出身かどうか、もう少し深く調べないといけないって言っていたわ」もし本当であれば、また新たな争いの火種が生まれてしまう。「何か助けが必要なら、いつでも私たちに声をかけて、とは伝えてあるから」理仁は言った。「いろいろと聞き回るのは難しい話じゃないが、あの噂が真実かどうかを証明するのは難しいだろうね」世間はみな、黛家当主が実の姉と妹を殺害し、姉の夫側家族ですら見逃すことはないくらいに残酷だと言っている。しかし、それは周りから聞いた話であって、本当に黛家当主がそれをしたという証拠はどこにあるのだろうか。それにこの事件はすでに数十年経過している。当時のことを知っている者がいたとしても、すでにこの世を去っている可能性が高い。あの黛家当主が、事情を知る者を逃しておくわけがない。「私はどんな事だって、完璧に隠し通せることはできないと思ってるの。絶対にどこか綻びがあって、誰かがそれに気づくはずよ」唯花は正義は必ず悪に打ち勝つと信じている。たとえその正義が遅れてきたとしても、絶対にいつか必ず訪れる。黛家当主があのような残酷な真似をしたのであれば、必ず調べはつくはずだ。いくら隠そうとしても、隠しきれない真実がいつかは明るみに出るだろう。「俺から悟に言って、弦さん
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第2022話

「弦さんだって、こんな事をしてどうなるか想像できないわけないだろう?彼の父親に知られたら、彼も神崎嬢も平穏な日々を送れなくなるぞ」唯花はケラケラ笑った。「本当にあなたと関係がないの?だったら、どうしてさっきから視線を逸らして私の目をちゃんと見ないわけ?」唯花はイケメンな理仁の顔をがっしりと両手で挟み、自分と目を合わさせた。「理仁、二度と私を騙さないって誓ったよね。また私に嘘なんてついたら、一年は書斎で寝てもらうわよ」「俺はそんなこと了承した覚えはないぞ」理仁は心がそわそわして落ち着かなかった。彼は二度と唯花を騙さないと約束はしたが、一年書斎で寝るなどとは言っていない。一日だけなら彼も我慢できるが、一年となると絶対に無理だ。一カ月すらも耐えられないというのに。「あなたは言ってないわ、私が言ったの。また私を騙すようなことがあって、私がそれに気づいたら、あなたには一年書斎で寝て、私に指一本触らせないわよ」理仁は辛そうな顔をした。「唯花、そんなことをされたら、俺は死ぬよりも苦しむって知っているだろう」「だったら、正直に話すことね」「俺……わかったよ。本当の事を話すから。でも、聞いた後で神崎嬢には言わないでくれよ。彼女が俺に文句を言ってくるのは構わないが、君の前で俺の悪口を言われるのはごめんだな」姫華は妻の従姉だから、怒らせるわけにはいかないのだ。「さあ、一体どういうことなの?」理仁はびくびくしながら言った。「これも君の伯母さんが原因だぞ。彼女が善さんと神崎嬢の仲を引き裂こうとしてるだろ、そして一颯に目をつけたってことも君は知ってのとおりだ。だけど、一颯は神崎嬢にはこれっぽっちもビビッと来てない。それに好きになる勇気もないさ。彼女は今善さんに完全に惚れてしまっているだろう。一颯がその間に割って入っても結果は見えているし、それは自分が傷つくだけだ。そんなことバカにでもならないと、あいつもやるわけない。君の伯母さんはいつもいつも一颯を使ってあらゆる手を考えている。それには一颯もほとほと嫌気がさして、俺のところに助けを求めに来たんだ。従弟から助けを求められて、助けないほうがおかしいだろう?それで一颯にある策を教えてやったんだ。あの時の俺はどこか頭のネジでも緩んでいたんだろうな、なんと弦さんの名前を出してしまった。そ
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第2023話

唯花は理仁に注意した。「弟さんや従弟さんたちが助けを求めてきても、恋愛に関するアドバイスはむやみやたらにしたらダメよ。あなたが手助けするほど、問題が起きるわ。あなたが恋愛経験が非常に豊富な恋愛上級者であるなら、私も何も言わないけどね。それなら好きにアドバイスすればいい」「俺は一途な男だし、恋愛下手だ。恋愛に関しては本当に救いが必要なくらいだぞ。悟ですらいつも俺の恋愛経験値はマイナスだって言うんだからな。あいつらが女性を口説くのに困っている時は、君にアドバイスをもらうよう伝えておくさ」理仁は弟、従弟たちを助ける機会を妻に譲ることにした。そうしたほうが、妻の威厳を彼らに示すことにもなるし、彼女はさらに信頼されて結城家での地位をしっかりと固めることができるはずだ」「弦さんが姫華を口説いている件に関しては……」「それは絶対に彼女には教えないでくれよ」「とりあえず、暫くは隠しておいてあげる。だけど、弦さんがずっとこんな事をしていると、周りも困るのよ」理仁は言った。「弦さんのところに話をつけに行くよ。もうあまり行動を起こさないでくれってさ」唯花はすぐに頷こうと思ったが、少し考えてからまたこう言った。「とりあえず様子を見ましょう。桐生さんと姫華が婚約して、関係が落ち着いたら、その時にまた弦さんのほうへ話に行って。でもその時には、きっと彼も自分から何もしないでしょうね。弦さんがこんなふうにやっているのも、桐生さんと姫華を早くくっつけようとしているからなんでしょう。あの二人の関係が定まらないと、星城の男の人たちはみんなビクビクしちゃうから」「確かにね」理仁は従弟の一颯が神崎夫人からつきまとわれて、相当頭を抱えているのをまるで自分の事のように感じていた。「弦さんっていう比較対象がいて、伯母様は桐生さんのほうへ気持ちが傾き始めたらしいわ。だから、弦さんのおかげであるとも言えるわね」弦がそれを聞けば自分が善に負けているのかと思いかねないだろう。しかし弦はパーソナリティ障害で性への感心が極端に低い。そのせいで、彼と結婚すれば夫婦生活などあるわけないのだ。詩乃は娘をそんなふうにさせたくはないはずだ。だからこそ善のほうが弦よりも良いと思い始めた。「唯花、もうこの話は終わりにして、食事に行こう」「いいわよ」唯花は立ち上がっ
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第2024話

「果物を少しと、お菓子とかです。息子さんの様子はどうですか」唯月は以前のように俊介を名前で呼ぶことはなかった。俊介が何かあっても陽の父親だという事実がなければ、彼女は病室に入ろうともしなかっただろう。俊介の両親は、唯月が陽の存在があるからここに来たことを知っていた。彼らはつくづく、孫の親権を唯月に渡しておいて正解だったと思った。陽は昔から母親と叔母と一緒にいた。親権を唯月に渡しておけば陽は今まで通りに暮らしていけるし、唯月は最も良い教育を陽にするはずだ。主に、唯月の暮らしには多くの争い事や喧嘩も起こらないので、幼い陽の心に負の影響を与えることがない。「英子さん」英子もその場にいるのを見て、唯月は丁寧に彼女に挨拶をした。唯月は離婚してからというもの、元義父母と義姉には距離を置くような話し方をするようになっていた。「英子さんは体調が良くなりましたか?」唯月は尋ねた。「もう良くなりましたよ。退院する手続きはもう済ませてあるんですけど、俊介が目を覚ましたって聞いて、すぐに夫と一緒に見に来たんです。神様のおかげで、俊介は命の危険から脱することができました」英子は神に感謝していた。彼女は唯月に中に入って座るように言った。唯月がベッドに横たわる俊介を見ると、英子が言った。「俊介はもう大丈夫です。だけど、まだ元気はなくて、いつも寝てるんですよ。先生からはあと数日しないと、元気が出ないだろうって言われてて。それでも生死の境から戻ってきて、目を覚ましただけでも、神様に感謝しないと」英子はそう言い終わると、また唯月に尋ねた。「ところで、陽ちゃんは?」「あの子は幼稚園に行っています。午後また迎えに行きます」英子はひとこと「あら」ともらした。「そうだった、すっかり忘れていました。九月から幼稚園に通うんでしたね。時間が経つのは早いわ」彼女の弟と唯月が離婚する時、陽はまだうまく話すことができなかった。それが今、陽はもう幼稚園に通っている。「彼は幼稚園に慣れそう?」俊介の両親は同時にそう尋ねた。もし、二人が孫の面倒を見るのであれば、幼稚園には通わせずに自分たちで世話をしたいと彼らは思った。「先生がグループに幼稚園での様子を動画に撮って見せてくれましたが、他のお友だちと楽しそうに遊んでいましたよ。それに、
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第2025話

俊介の父親も言った。「唯月さん、それは自分のために使ってくれ。陽君をしっかり育ててくれるだけでいいんだからね」息子の名声は地に落ちた。将来はきっと再婚などできないだろう。成瀬莉奈との結婚生活も、かなりの確率で終わりを迎える。それでは、佐々木家には俊介の子供は陽しかいない。そして今、俊介の両親にとって、陽が最も大切な存在になっている。だから、陽が幸せに暮らしてくれることだけを望んでいた。「うちの店はかなり順調ですから、お金なら稼げます。それにこれはそんなに多くないので、何か食べ物でも買ってください。私は店舗の事があるので、これで失礼します。土曜日、陽の休みの日にまたここへ連れてきます」唯月はどうしてもそのお金を俊介の母親に手渡した。金額は四万ほどで、そこまで多くはなかった。佐々木母は仕方なくそのお金を受け取り、唯月が買ってきてくれた果物を持って唯月を追いかけた。それは持って帰ってくれと言ったが、唯月が断わった。二人はまた互いにそんなやり取りを繰り返し、最後には佐々木母のほうが折れて病室に戻った。英子は唯月が持って来てくれた袋を開けて、言った。「こんなにいろいろ買って来てくれて、唯月さんは本当に気遣いのある人だわ。私たち、以前から彼女にはひどい扱いをしてきたのに、彼女のほうは陽ちゃんのことがあるから、お見舞いに来てくれたんだ。それにこんなにたくさん買ってきてくれて、本当に頭が上がらないわよ」彼女はまた袋に入っている物を取り出して、母親に言った。「お母さん、私も怪我してたし、入院してたでしょ。ちょうど怪我が治って退院するから、彼女が買ってきてくれたこれ、持って帰るね。果物、唯月さんは何を買ってきてくれたの?」英子は母親からその袋を受け取って中を開けて見た。ブドウが入っていたので、それを一粒とって食べた。甘くて種のないブドウで、皮も簡単にスルリと取れる。そして彼女はすぐにこう言った。「お母さん、俊介もまだ食べられないし、果物をここに置いておいたら暑くてすぐダメになるわよ。お母さんとお父さんで分けて、余った分はうちの子供たちに持って帰るわ」唯月は気前良く、値段の結構するブドウを選んで買って来ていた。英子はそれを食べたことがあって、確か値段が高かったことを記憶していた。英子が自分で買う時は、あまりたくさん買えなかった。
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第2026話

英子はやはりあの性格だが、それでも人に感謝することは知っているらしい。英子は言った。「それに、唯月さんがあんなに稼いでるのは、もちろん陽ちゃんのためよね?彼女は離婚したけど、陽ちゃんが私たちの血縁であることには変わらないんだし、私がめちゃくちゃにするわけないでしょ?唯月さんにはもっと会社を大きくしてもらって、将来は陽ちゃんに引き継いでもらいたいって思ってるくらいよ。そしたら、うちの子供たちにも仕事を紹介してくれるかもしれないじゃない、絶対拒否なんかしないって」英子の両親は娘を睨みつけた。親から睨まれると、英子は唇を尖らせた。「ただ言ってみただけじゃん、将来の事なんて誰にもわからないでしょ?もしかしたら、うちの商売も軌道に乗って、うちの子供たちも金持ちになれるかもしれないよ」そう言いながら英子は立ち上がって、果物の入っている袋からブドウを一房取り出してベッドサイドテーブルに置いた。そして、残っているブドウを持ち、他に食べ物が入っている袋も提げて両親に言った。「お父さん、お母さん、私もやっと回復したところだから、まだ休まないといけないし、もう帰るね。俊介が何か食べられるくらい回復したら電話して教えて。二人もあまり俊介のことを心配しすぎないでね。この子はあんな目に遭ったのに死ななかったんだから、これから幸運が訪れるわよ。退院してからあの最低女と離婚して、唯月さんと復縁するかもしれないし。唯月さんは今素敵な女性になったし、もし俊介にその気があるなら、応援してあげましょ。もし再婚できたなら、彼女のことを大事にするわ。あの東なんたらって社長は今足が不自由だし、彼女もあの男と結婚するとはかぎらないよ」英子は弟と唯月が再婚し自分もおこぼれにあずかれるかもしれないという夢をまだ見ているらしい。「出口ならあっちだ!」父親が病室のドアを指差して、娘を追い出そうとした。英子は夫を連れて一緒に帰っていった。「本当に変わらない子だ、まだ他人から甘い汁をすすろうとしてるぞ」佐々木父は娘を罵った。佐々木母が言った。「それも私たちがあの子をこんなふうにさせてしまったからよ。前あの子が食べたい物や欲しい物は全部唯月さんに用意してもらってたもの。だから、彼女から美味しいところを持っていくのに慣れちゃってるのよ」「俊介の二回の結婚も全部英子のせいだ」
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第2027話

唯月が一般病棟から出てきた時、隼翔がいるのに気づいた。彼女は足を止めて、彼と目線を合わせた。そしてすぐに彼女は隼翔のほうへ近づいていった。「東社長、どうして病院に?」「さっきリハビリを終えて、ちょっと気分転換しようと思って君の新店舗に行ったんだよ。ちょうど君が車で出かけるところだったから、一緒について来たんだ」隼翔は正直に話した。隼翔は唯月が病院のほうへ車を走らせているのを見て、きっと元夫のところへ行くのだろうと予想し、それでついて来たのだった。唯月は絶対に俊介と復縁することはないとわかっていながらも、隼翔は心配だったし、警戒する必要があった。唯月が病院に行くのなら、隼翔は彼女を追いかけるか、家で悶々としているか、それか機嫌を損ねるかだ。以前のあの穏やかな隼翔は、交通事故の後消えてしまった。そして今の彼は繰り返し気性を荒立てるようになった。東家の全ての人間は、そんな隼翔に対し、腫れ物を扱うかのような態度で、甘やかすことまでし始めた。隼翔の機嫌が良くなるのであれば、何でも言うことを聞いている。「陽君の父親に会いに来たの?」隼翔が尋ねた。唯月は頷いて言った。「おばさんから電話があって、彼が目を覚ましてICUから普通の病室に移ったって教えてもらったから、いろいろお見舞いの物を買って持って来たんです」隼翔は少し黙ってから、また口を開いた。「それは当然のことだよ。陽君が幼稚園から戻ったら、また連れてくるの?」「週末になってから連れて来ようと思って。今は陽の父親も寝てばかりいるので」唯月は隼翔の後ろに回った。ボディーガードは黙って横によけて唯月に車椅子を押してもらった。「目を覚ましたのなら良かったね」隼翔は落ち着いた声で言った。「どうであれ、陽君の父親なんだから」唯月は頷いた。「社長はまだご飯を食べていませんよね。私がご馳走します」「うん、腹を空かせて、君にご馳走してもらうのを待っていたところだよ」唯月は彼に注意するように言った。「それはダメです。もし、お腹が空いたなら何か食べないと胃の調子が悪くなりますよ。毎日三食決まった時間に食べてください」「わかったよ」「今日は、リハビリはどうでしたか?」隼翔はすぐには返事をしなかった。それを見て唯月は彼を慰めた。「焦らずゆっくりやってくだ
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第2028話

陽は唯月が生んだというのに、まるでみんなの子供のようだ。周りはそれぞれ陽をとても可愛がり、自分で生んだ子供のように思っている。唯月と俊介は離婚したが、陽にはこんなに彼を大切にしてくれる人たちがいて、愛情に包まれているから健やかに成長できるはずだ。「午後は四時に迎えに行く予定なんです。三時半には幼稚園に向かいます。社長にお時間があったら、午後一緒に行きましょう。あの子もみんなが迎えに来てくれたら、とっても喜ぶはずです」隼翔は言った。「俺はリハビリは午前で、午後と夜は自由なんだ。家にいてもつまらないし、出かけて何かしていたほうが気晴らしになる」外に出ると周りからの同情するような視線を感じるが、それにはもう慣れてしまっている。最初は受け入れられなかったが、今ではなんとも思わなくなっていた。そして知り合いに会っても、彼は以前と同じように挨拶をし、同情の目で見られるのを恐れなくなっていた。彼はただ体の自由が今はないだけであって、何もできないわけではない。そして彼は、来週の月曜日から会社に戻ろうと決めた。どのみちリハビリにはかなりの時間がかかる。東グループは長年彼が苦労して今のところまで成長させてきた。だから放っておくことはできない。彼はまだ会社を頼りに、妻を迎える資金を準備しなければならない。足が回復したら唯月にプロポーズする予定にしている。一度で返事がもらえないなら、二度、三度と何回でもプロポーズを受け入れてもらえるまで諦めないつもりだった。二人は歩きながらおしゃべりをし、ボディーガードは黙って彼らの後ろについていった。何も事情を知らない人が唯月と隼翔を見れば、きっと二人は夫婦だと思うだろう。英子は俊介が入院している棟から出て、暫く歩いていると、隼翔の車椅子を押す唯月の姿が見えた。英子はその瞬間立ち止まり、夫の手を引っ張って尋ねた。「あなた、あの人って唯月さんよね?後ろ姿がすごく似ているわ。押している車椅子に乗っているのは東社長でしょ?彼女ってやっぱり彼と一緒になることにしたのかしら?」輝夫はそれを見てから言った。「確かに唯月さんだ。東社長と一緒にいるね、でもそれは彼女の自由だ。彼女は俊介君と離婚してもうかなり経つ。君の弟さんはもう再婚してるし、彼女が次の男性を見つけてもそれは当然のことだろ」そう言い終わる
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第2029話

「あんたは一体どっちの味方なんだよ。うちは運がなく、そっちだって損したじゃない。もし俊介と唯月さんが再婚したら、あんたにだってメリットがあるんだよ」英子は夫に愚痴をこぼした。「唯花さんの旦那さんから仕事をもらえる期待をしなくても、唯月さんが私たちに仕事をくれるわ。彼女は新店舗をオープンして、スタッフが必要でしょ?以前みたいな仲に戻れれば、私は彼女の義姉として新店舗のスタッフをするわ。知らない人間を雇うより良いでしょ?」輝夫も自分にとってのメリットを思い浮かべたが、それはただの儚い夢だとわかっていた。輝夫は口を尖らせて言った。「夢でも見てろ」そう言うと、彼は素早く前に進み妻から離れた。またつねられてはたまらない。英子は彼に追いつき、やはり何度も彼を叩いていた。この夫婦二人はずっと唯月の後ろをついていき、唯月と隼翔が車に乗るのを見ていた。隼翔は唯月の車に乗り、彼の車はボディーガードに運転させ、後ろにつかせた。「早く、後を追うわよ」英子はまだ唯月を追いかけたいと思っていたが、夫のほうはそんな彼女を無視して言った。「僕は店に戻らないといけないから、お前がついて行きたいなら勝手にしな。僕には時間がないからね。それに、唯月さんの後を追いかけて何の意味があるんだ?彼女に知られたら、もっと嫌われるぞ。彼女が病院まで俊介君の見舞いに来てくれたからって、彼に情があると思わないほうがいいぞ。彼女はそんなつもりじゃない。ただ陽君のことがあるから来てくれただけさ。もし、陽君がいなければ、俊介君がこんな目に遭ったと知って、大喜びしているはずだ」俊介が今のように散々な目に遭ったのも、それは自業自得というやつだ。俊介は命の危険からは脱したものの、深い傷を負ってしまった。医者は長い時間をかけないと回復しないと言っていた。それに怪我が治ったとしても、今後は疲れることは避ける必要があるから、しっかり働くことはできない。これは自分の家庭を壊した者の報いだ。輝夫は心の中で悪態をついていた。英子はそれを聞いて黙ってしまった。結局、英子は夫の車に乗って、一緒に病院から離れた。唯月は今自由の身であり、誰と一緒にいるかは彼女が決めていい。佐々木家にはかなり前から彼女に干渉できる資格などなくなっている。……柏浜にて。数台の車がグラ
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第2030話

垂れ幕はラグジュリゾートホテルの入り口にかけられている。奏汰の許可がない限り、玲が外すように要求してもスタッフはそれに応じないだろう。玲は不機嫌そうに顔を歪めていた。午前中ずっと奏汰が現れずに静かに過ごせると思っていたところだった。それがまさかまたこのように注目を集めるような行動をしてきた。また柏浜のトップニュースに玲が躍り出ることになるだろう。玲は本気で世間のお茶の間の話題になりたくはなかった。しかし、玲や奏汰のような立場の人間では、少しの事でも、すぐにネット上で目立つ話題となってしまう。ネット民たちは二人の進展に注目し、常にこう尋ねている。【結城奏汰って白山社長を落とせたの?】【あの二人が恋人になったら、世間の見方が変わるかもね。盛大な結婚式も挙げるのかな?】【あの二人ってどっちも超イケメンじゃん、しかも金持ちだし、もったいないなぁ。女の子はみんな隠れて泣いてるわよ、きっと】玲はホテルの中へ入っていった。ボディーガードたちが玲に誰も近づけさせないように彼女を囲った。周りが玲の写真を撮るのは完全に防ぐことはできなかった。この時、玲はすでに誰かに写真を撮られても気にしないでいた。数歩進み、玲は立ち止まって体の向きを変えた。そして対面にあるラグジュリゾートのほうへと歩いた。そこに着くと、玲の表情はますます不機嫌になっていった。奏汰がホテルの前のど真ん中にまた大量の花を敷き詰めていたからだ。そしてまた以前と同じようにメッセージを作っていた。【れいさん、あいしています!】それが心からの言葉なのかはわからないが、彼は花でこのようなメッセージを作らせていた。愛に関しては、まだ芽生えていないかもしれないが、玲への興味があるのは本当だ。誰かに興味を持てば、愛するまでそう時間はかからないだろう。奏汰は最初は渋っていたが、結局は祖母の計画通りに行動している。玲は海のように広がる花を見つめ、冷ややかにボディーガードに命令した。「ここにある花を全部片付けろ」「玲さん、触らないでくださいよ」この時、奏汰がホテルから出てきた。真っ白なスーツ姿の彼は、普段よりもそのイケメンっぷりに磨きをかけ、まるで童話に出てくる白馬の王子様のようだった。彼が低い声で一喝したので、ボディーガードは動きを止めた。
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