Tous les chapitres de : Chapitre 2101 - Chapitre 2108

2108

第2101話

詩乃が話し終わってすぐ、姫華と善が急いで中に入ってきた。執事がやって来て二人に玲凰が呼んでいると伝えたので、何かあったのではないかと思い、彼らは急いで駆けつけてきたのだ。「お母さん、お兄ちゃん、何かあった?」姫華は二人のほうへ歩きながら尋ねた。両親と兄の深刻そうな顔と、母親が何かの資料を手に持っているのを見て、姫華はまっすぐに母親の隣に来て座った。そして、母親の手からその資料を取り、続けて尋ねた。「お母さん、これなに?」善も心配そうに詩乃を見つめていた。彼は玲凰から近いところに腰をおろした。姫華の隣も空いていたが、詩乃はまだ彼への態度が少し良くなっただけで、受け入れてはいないから、善は詩乃がいる前で姫華のすぐ隣に座るのは避けた。「大丈夫よ、お兄さんが柏浜の黛一族について調査してくれたのよ。それを整理した資料を持って帰って見せてくれたの。あなたは桐生さんのお宅にいたのでしょう?内装は進んでいるの?」詩乃は善をちらりと見てから娘に尋ねた。姫華はその資料を見ながら返事をした。「お兄ちゃんが私と善君に帰ってこいって言ってるって聞いて、何かあったのかと思って急いで帰ってきたのよ」詩乃は笑って言った。「なるほどね、おかしいと思ったら、それで二人が一緒に来たのね」詩乃は突然、娘と善が一緒になるのを受け入れるのも、良いことだと思った。善は確かにA市出身だが、彼は今星城に家を持っているし、内装中の屋敷も神崎家のすぐ隣にある。こんなに近いのだから、家で何かあった時には二人に声をかけたら五分もせず、すぐに帰ってこられる。もし二人が本当に結婚して一緒に暮らすようになれば、姫華は毎日何十回でも実家に帰ってくることができる。「内装はまだ完全に終わっていません。僕も焦っていないんですよ。業者にはゆっくりでも細かいところまできちんと工事してもらえればいいですから」内装についてそう返事をしたのは善だった。あそこは彼と姫華が一緒に暮らす家だ。だから絶対に少しも気を抜かず最高のものに仕上げなければならない。細かいところをどのような内装にするか、材料は何を使うのか、彼は全て姫華と相談した。庭のどこに木や花を植えるのかも姫華の意見を取り入れた。つまり、全て姫華の好みに応じて工事している。善が彼女のためだけにつくる家だからだ。彼女に気
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第2102話

姫華は少し黙ってから尋ねた。「本当に少しも証拠が見つからなかったの?」「今のところはな。調査する時間の問題だろう。時間をかけて調べれば何か掴めるかもしれない。だけど、あまり期待は大きくないぞ。なんといってももう数十年も前の話だ。何か綻びはあったとしてもそれはすぐに覆い隠されているはず。さっさと証拠なんて消されているよ。もしかすると、この件をよく知る人間はみんな死んでいるかもな」姫華は黙った。詩乃は娘に言った。「姫華、この件はあなたは心配しなくていいから。お母さんには時間があるから、ゆっくり証拠探しをするわ。お母さんが動けば、いつか必ず証拠が見つかるから」「おば様、僕の兄に言って、奥さんの実家のご兄弟に手伝ってもらうよう言います。それに、土屋社長に頼んでみるのも良いかと」土屋晃成(つちや こうせい)という人物は藤堂家の娘婿であり、藤堂家というのは九条家と同じく情報収集に長けた一族だ。「必要な時には、そうさせてもらうわね」詩乃はそれを断わることはなかった。人は多いほうがいい。それに専門家のほうに任せるのがやはりベストだろう。「後で電話で兄に一応伝えておきます」善はこれは自分をアピールできるチャンスと捉えた。未来の義母となる詩乃を手助けし、彼女の両親の死因を調査することができれば、彼女から高く評価してもらえ、高得点が得られるはずだ。点数稼ぎをすれば姫華とゴールできる日もそう遠くはない。執事がこの時やって来て、まずは姫華のほうを見て、それから詩乃に言った。「奥様、九条家の弦様がいらっしゃっています。またお嬢様に花束と宝石、それから他にもプレゼントを持ってこられたようです。彼一人だけでいらっしゃっています」その場にいた全員言葉を失った。弦が姫華に「つきまとい」始めると、本当に衛星のように周りをうろうろと、姿を消すことがない。弦本人が顔を出さなくても、姫華にプレゼントを送ってくると善が毎日ピリピリしてしまうので、姫華もすっかりどうしようもなくなっていた。そのせいで、善は仕事の時間よりも姫華と一緒にいるほうに時間を割いていた。目を離した隙に、姫華が弦に連れていかれてしまうのではないかと不安なのだ。そして裏では、善も弦に会って、姫華に対する態度は一体どういうことなのか尋ねたりもしていた。弦は、ただ姫華と一緒
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第2103話

姫華は弦の自分に対する気持ちは偽物だとわかっている。それに彼女は名家出身でそもそもお金なら腐るほどあるのだから、高価な物に囲まれているし、弦の沼にはまることはない。弦から贈られた物の中で、花は捨ててしまうが、他の物は一か所に山積みとなり、一度も動かしたことはない。弦がこのわけも分からない行動を止めてから、一気に彼に返すつもりだ。姫華は最低でも善と婚約するか、結婚してからやっと、善と一緒にそのプレゼントを全部弦に返せると思っていた。今返してしまえば、弦の父親がこの事を知ってしまうだろう。今、その九条寛哉がどれだけ狂った行動をしているか神崎家もよくわかっている。寛哉は今一心不乱に息子をどうにかしようと奔走している。もし、弦が姫華に興味を示していると知れば、彼は姫華の気持ちなど無視し、結婚の申し込みをしに神崎家に来るに決まっている。姫華は弦の行動にはもう頭を抱えていた。もし、そこに彼の父親まで加われば、さらにややこしい状況になってしまう。それで彼女は我慢しているのだ。もちろん、姫華の家族もこの状況に耐えている。善ですらも、どうにもできない状態だ。善が今できることと言えば、姫華のことを今まで以上に大切にし、神崎家では態度を良くして評価を上げることくらいだ。毎回弦が花に、その他のプレゼントを贈ってくれば、善も同じ種類のプレゼントを姫華に渡して、弦には彼女の心につけ入る隙間を与えないようにしていた。すると弦はすぐにやって来た。この時の彼は手に何も持っていなかった。買った物は全て神崎家の使用人に任せ、運んでもらっている。「あれ、みなさんお揃いなんですね。まさか私が来ることがわかっていて、わざわざ待っていてくれたんですか?」弦は神崎家の面々が揃っているのを見て、気分良さそうに笑った。そしてソファが空いていないのを見ると大股で颯爽と歩いてきて、善のところまで行き笑って言った。「桐生さん、ちょっと横によけてもらって私も座ってもいいですか」善は今詩乃と航の目の前に座っていた。弦が善と一緒に座れば、ちょうど詩乃夫妻の目の前で、どちらのほうが良いのか比較できるだろう。善は笑って立ち上がった。「九条さん、どうぞお座りください」彼は弦に席を譲ると、姫華のところまで来て、一緒に座った。執事が大きな花束を抱えて入ってきた
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第2104話

見るからに、弦は父親から結婚の催促をされすぎて嫌気がさしている。そもそもまだ縁が訪れていないのだから、弦から探しに行く必要はないと言われている。その運命の女性は自然と現れて、いつか知り合うことになると。彼の父親はせっかちで、息子はいい年なのだから、自分から動かず運命に任せていたら一体いつになるのかと言っている。もし神様が居眠りしてしまってすっかり弦の事を忘れたら、一生独身で終わるのではないかと心配しているのだった。弦はそれには納得できない。そんなに焦るほどの年でもないだろう。まだ三十過ぎだぞ。四捨五入すれば、四十の仲間に入るが、四十歳はまだまだこれからの年齢で、若いうちじゃないか。現代人は長生きになっているし、自分の健康状態から見れば、百歳まで問題ないと弦は思っている。だから、三十過ぎの今独身であっても、焦ることはない。玲凰は思わず笑い出した。「結城おばあ様もきっと九条さんの父親が鬱陶しく思って仕方なかったんでしょう。それであの占い師の方を紹介してお父様を落ち着かせようとしたんです」それがまさかこんな結果になるとは誰も思っていなかった。あのものすごく力のある九条寛哉が本気で結婚のプレッシャーをかけてきたら、本当に背筋が凍る。それで九条家の他の若者世代は自分が結婚適齢期に入り恋人がいないとみんな逃げていくのだった。出張か海外へ行くか、どのみち星城にはいない。寛哉が彼らにターゲットをしぼるのを恐れているからだ。ここまで寛哉が弦に対して結婚を急かしてくる様子を見て、弦のボディーガードたちも彼らの結婚にまで関わろうとするのではないかとビクビクしていた。「九条さん、お父様にそこまで結婚の圧力をかけられて同情はしますけど、そのいらだちを私に向けられては困ります。もらったプレゼントは開けずに置いてあります。今日いらっしゃったのだから、全部持って帰っていただけませんか?」姫華は弦のせいで自分や周りに被害を拡大させていることに不満をもらした。「さっさと九条さんにお返ししたかったんですけど、そちらのお父様に知られたら恐ろしいことになると、ずっと言えずにいたんです」弦は気にしていないらしくこう言った。「それなら、誰かにあげてしまったらいいですよ。それか捨ててしまっても構いません。だから絶対にうちには送り返さないでくだ
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第2105話

この時、弦はあのファイル入れを目にした。詩乃は彼のその視線に気づいても、隠すことなく彼に言った。「九条さん、ちょっと手伝っていただきたいことがあるんですが」九条家が調査を手伝ってくれるというのであれば、詩乃も自分の両親が死亡した本当の原因がつきとめられるかもしれないと思った。弦は笑顔で言った。「神崎夫人、そんな遠慮なさらず、何かあるのでしたら私に言っていただければ、出来る限りのことを手伝いますよ。最近、いつもお宅のお嬢さんのお邪魔をしてしまい、内心少し申し訳ないと思っていますので。だから、お手伝いできることがあれば、気持ちも楽になります」それに、姫華は悟の妻と仲が良い友人だ。明凛のことがあるから、詩乃に頼まれたら弦はもちろん手伝う気でいる。詩乃は、自分の出生と両親の死が仕組まれたことなのではないかという疑いなど、弦に話してしまった。弦は詩乃の話を聞いた後、すぐに立ち上がって帰ろうとした。この時、玲凰と善は同時に立ち上がって弦を引き留め、元の場所に座らせた。弦は言った。「みなさんのお邪魔ですので、やはりもう帰ります」詩乃は苦笑いするしかなかった。「九条さん、あの、つまりこの件は手伝っていただけないということでしょうか?」「神崎夫人、私もお手伝いしたくないわけではなく、今から数十年前の出来事の証拠を探すという点がネックなんです。調査したとしても何も手がかりは見つからないかもしれない。このような事をした人物が証拠を残しておくはずもない。当時、その証拠が残っていたとしても、この数十年という年月がそれを埋没させてしまっていますよ。それに、その件を知っている人物は全員亡くなっている可能性が高い。これに関しては私も手伝いたくないのではなく、非常に難しいのです。手伝うと言ってしまって、結局何も手がかりが見つからなければ、期待を裏切ってしまいます」だから、彼はやはりこの件には介入しないほうがいい。弦はこの時、さっきファイル入れをちらりと見なければよかったとひそかに思った。別に金塊が詰まっているわけでもないというのにじろじろ見て何をしていたのか。姫華は彼に尋ねた。「九条さん、あなたでさえも調べることは難しいのですか?九条家は情報収集のプロ中のプロですよね?この道に関しては、九条家の右に出る者はいないはずです」弦は苦笑いして
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第2106話

姫華は母親には自分だけしか娘がいないので、もし黛家の当主の座を母親が奪い返したいと思うのであれば、その座は自分に与えられるのではと思った。しかし、自分にはそんな力はないと感じた。母親がまだその言葉を口に出す前に、姫華は先手を打ってこう言った。「お母さん、黛家の当主の座ってものを取り返しても、私には継がせないでよね。あなたの娘がどんな人間か、お母様は、よぉくわかっておられるでしょ。私には一族を統率する重責を担える力はないからね。唯花がいいわ。彼女に数年あげればその能力は絶対につくから」姫華は従妹を盾にすることにした。ここは唯花を巻き添えにしておけば自分が安全だ!詩乃は娘を睨んで言った。「唯花ちゃんは今とっても忙しいし、プレッシャーも大きいでしょ。彼女は将来結城家の女主人となるのだから、気楽じゃないのよ。そのうえ黛家の重責を彼女に押し付けるというの?」姫華は言った。「そんなのどうだっていいわ。どのみち、私にはそんな能力はないもの。私は華奢な子だから、そんな重たい物を背負える力はないのよ。唯花がダメなら唯月さんに頼めばいいでしょ。唯月さんは私たち三人の中で一番年上なんだし、それに黛一族の特徴として長女の能力が一番優れてるんじゃなかったっけ。お母さんと叔母様なら、お母さんのほうが能力が高かったんでしょ。お母さんは私しか生んでないけど、叔母様には娘が二人いるわ。唯月さんは叔母様の一番目の娘さんよ。つまりすごいほうってこと。将来、正当な人間に黛家の当主の座が明け渡されるなら、それは唯月さんよ」そこまで言うと、姫華はそれがいいと思い、笑って言った。「唯月さんが黛家の当主になれば、彼女は東社長との間で家柄について悩む必要はなくなるわ。彼女と社長が一緒になってもプレッシャーは少なくなるから、一石二鳥じゃないの」弦は言った。「彼女は内海さんという名字ではありませんでしたか」「私も神崎という名字ですよ。私も彼女も黛じゃないですけど、真実が明らかになれば名字を変えられるでしょう」この時、航が娘を睨みつけた。姫華は言った。「お父さん、そんなふうに睨まないでよ。お母さんが本気で私にその黛一族の当主になれというなら、そりゃ黛に名字を変えないといけないでしょ。それに結婚すれば結局名字は変わるんだから、なんでそんなに睨むのよ」航「……」詩乃は娘
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第2107話

詩乃と姫華の二人が話している時、弦は何も言わず黙っていた。この親子が将来の黛家の当主が誰になるかという話題を話し終えてから、弦は再び立ち上がって挨拶をした。「それでは私はこれで失礼します。また日を改めて一緒に食事でもしましょう」神崎家からはもう誰も彼を引き留めることなく、詩乃は息子に弦を外まで見送らせた。玲凰が立ち上がって送っていった。弦もそれには特に何も言わなかった。そして母屋を出ると、玲凰が弦に尋ねた。「九条さんはうちの妹のことはなんとも思っていないんですよね。それなのにその芝居はいつまで続けるつもりなんですか?誰がこんなことをしてほしいと頼んできたんです?」玲凰はあの九条弦を動かし、芝居までさせられる力を持っているのが誰なのか、非常に気になった。「それはちょっと、それに言いたくないですね。恥をかきますから」玲凰は黙った。弦は一颯と賭けをして負けた。だから、無条件に一颯を手伝わざるを得ないのだった。一颯が出した条件は、善と姫華が婚約するまでであり、弦はその条件を守り、姫華を口説き続けなければならない。詩乃は桐生善の実家が遠いのを嫌がっているだろう?善と比べて弦は距離的に近い所にいる人物だ。同じく星城出身者なのだから。しかし、詩乃が娘を弦に嫁がせる気はあるだろうか?明らかに彼女にはそんな気はない。九条弦という比較対象ができてから、彼女は善のことをだいぶ気に入ってきたようだ。「神崎社長、そちらのお母様はまた考えを変えたのでは?今度は娘と想い人を一緒にさせるつもりなんではないでしょうか?」玲凰は言った。「……そうですかね?俺はちょっとよくわからないんですが」彼の母親は本当に今まで散々な手段を使っていた。この時、母親の出生に関してゆっくりと彼女に調査させるのは非常にタイミングが良いと玲凰は考えている。そうすれば、母親はこれ以上、姫華と善のことでそこまで騒ぐことがないからだ。「どうであれ、神崎社長にはお母様にひとことお伝えいただけますか。これからまた娘さんに別の男性を紹介しようとしたら、私がその相手の所に行って、神崎嬢は私の彼女だと言います、とね。誰もこの九条弦の彼女を奪えるわけないでしょう?」玲凰は言った。「……九条さん、そんなことされたら、妹がひどい目に遭うでしょう」「別に妹さんを
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第2108話

結城おばあさんが寛哉に占い師を紹介してきたせいで、弦の悠々自適な穏やかな日々は消えてしまった。もし、その人がすごい腕の持ち主なら、他人の運命ではなく宝くじの番号でも当てたらどうだろうか。きっと大金持ちになれることだろう。弦は帰っていった。玲凰は家の前で、弦の乗る車が遠ざかっていくのを見送り、暫くしてから家の中に入っていった。……唯月は隼翔にご馳走した後、二人で暫くおしゃべりをしてから、陽を連れてホテルから出発し、琴ヶ丘に向かった。その途中、電話が何度もかかってきた。それは結城家の年配者世代たちからで、彼らは陽に早く会いたいらしく、いつ来るのか尋ねる内容だった。唯月はみんなに返事をした。もうすでに来ている途中だと返事して、やっとその次から次へとくる催促の電話を一旦止めた。隼翔は今足が不自由なので、自分が行くとみんながゆっくり週末休みを満喫するのを邪魔してしまうと思い、一緒には行かなかった。彼は一時間座っていてから、やっとボディーガードに実家に送らせた。まだ屋敷に入る前に、隼翔には中から久しく聞いていなかったみんなの楽しそうな笑い声を聞いた。隼翔が交通事故に遭ってからというもの、家の中はまるで死んだように重苦しい空気が流れていた。何か嬉しい事があったら、家族は隼翔のいないところでこっそりと喜んでいた。隼翔の前で楽しそうにするには彼の気持ちに影響すると思い堂々と楽しそうにできないのだ。隼翔はそんな家族たちはびくびくしすぎだと思っていた。確かに、事故当初は自暴自棄になって機嫌がすこぶる悪く、誰彼構わず怒鳴り散らしたい気分だった。そんな投げやりになった彼の態度のせいで、両親が何度涙を流したことか。しかし、退院してから彼はようやく吹っ切れ、日々に自信を取り戻していった。彼は懸命にリハビリをし、努力してポジティブに現実と向き合うことにした。だから、家族は自分たちが楽しそうにすることで、隼翔の神経を刺激してしまうのではないかと不安になる必要はないのだ。「今、入るのはやめておこう」家の前で、隼翔は声をおさえてボディーガードに言った。「俺は暫くその辺りで座ってから中に入る」彼は琴音の声と、母親の笑い声が聞こえた。恐らく琴音が来てまたおかしな話をして母親を笑わせているのだ。隼翔が事故に遭ってから、琴音は何
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