しかし、唯月が傍にいる時は、隼翔もリハビリはしなかった。あのように無様な姿を彼女に見せたくないからだ。陽は物分かりよく「うん」と返事をした。そしてすぐにまた尋ねた。「おばちゃん、りひとおじちゃんはいつ出てくるの?」唯花はオフィスビルのほうを見て言った。「あと数分で、おじちゃん出てくるよ」唯花が理仁の退勤時間に迎えに来て、夫婦一緒に食事をしようと言っていたので、理仁は必ず少し前に仕事を終わらせて出てくるはずだ。そう言ったとたん、陽が中のほうから歩いてくるスラリとした姿のほうを指差して、嬉しそうに叫んだ。「おばちゃん、出てきたよ!」陽は唯花の手を振りほどき、会社の中へと駆けだした。理仁は出てきたところで、目が良いので外に唯花が花束を持って立っているのが見えた。そして、まるで眩い光のほうへ吸い込まれるかのように彼女のほうへ一直線に向かっていった。「おじちゃん」陽は走り寄りながら叫んでいた。理仁はボディーガードたちのほうを向いて指示を出した。「お前たちは車を運転して会社のゲートで待っていてくれ」ボディーガードたちは畏まった態度でそれに応え、理仁から離れると駐車場のほうへ向かった。「おじちゃん」陽の足は早く、あっという間に理仁の前までやって来た。理仁もすぐに近寄って、陽を抱き上げた。「おじちゃん、おしごと終わったんだね。ぼくとおばちゃん、ずっと待ってたんだよ。おばちゃんがね、おどろかせたいからって、中に入りたくないって。おじちゃん、ぼくに会えてびっくりした?うれしい?」陽のよく通る幼い声が遠くまで響いて、聞いた人はみんな笑顔になっていた。理仁が陽を連れているシーンを見たことがなければ、みんな結城社長は冷たく厳しい人だから、きっと子供は好きじゃないだろう、子供もきっと怖がるだろうと思っていた。それは間違いだった。社員たちは結城社長は子供好きな人なのだと彼への印象を改めていた。親戚の子供である陽をまるで実の子供のように、ここまで可愛がっている。それに、陽も社長のあの冷たさを全く怖がっていないようだ。この子は初めて社長に会った時から彼に抱っこされるのが好きだったそうだ。子供の心は一番純粋で真っ白だという。子供たちは自分に対して心から接してくれているのかどうか、言葉では表せなくても心の中でははっき
閱讀更多