《交際0日婚のツンデレ御曹司に溺愛されています》全部章節:第 2001 章 - 第 2010 章

2108 章節

第2001話

しかし、唯月が傍にいる時は、隼翔もリハビリはしなかった。あのように無様な姿を彼女に見せたくないからだ。陽は物分かりよく「うん」と返事をした。そしてすぐにまた尋ねた。「おばちゃん、りひとおじちゃんはいつ出てくるの?」唯花はオフィスビルのほうを見て言った。「あと数分で、おじちゃん出てくるよ」唯花が理仁の退勤時間に迎えに来て、夫婦一緒に食事をしようと言っていたので、理仁は必ず少し前に仕事を終わらせて出てくるはずだ。そう言ったとたん、陽が中のほうから歩いてくるスラリとした姿のほうを指差して、嬉しそうに叫んだ。「おばちゃん、出てきたよ!」陽は唯花の手を振りほどき、会社の中へと駆けだした。理仁は出てきたところで、目が良いので外に唯花が花束を持って立っているのが見えた。そして、まるで眩い光のほうへ吸い込まれるかのように彼女のほうへ一直線に向かっていった。「おじちゃん」陽は走り寄りながら叫んでいた。理仁はボディーガードたちのほうを向いて指示を出した。「お前たちは車を運転して会社のゲートで待っていてくれ」ボディーガードたちは畏まった態度でそれに応え、理仁から離れると駐車場のほうへ向かった。「おじちゃん」陽の足は早く、あっという間に理仁の前までやって来た。理仁もすぐに近寄って、陽を抱き上げた。「おじちゃん、おしごと終わったんだね。ぼくとおばちゃん、ずっと待ってたんだよ。おばちゃんがね、おどろかせたいからって、中に入りたくないって。おじちゃん、ぼくに会えてびっくりした?うれしい?」陽のよく通る幼い声が遠くまで響いて、聞いた人はみんな笑顔になっていた。理仁が陽を連れているシーンを見たことがなければ、みんな結城社長は冷たく厳しい人だから、きっと子供は好きじゃないだろう、子供もきっと怖がるだろうと思っていた。それは間違いだった。社員たちは結城社長は子供好きな人なのだと彼への印象を改めていた。親戚の子供である陽をまるで実の子供のように、ここまで可愛がっている。それに、陽も社長のあの冷たさを全く怖がっていないようだ。この子は初めて社長に会った時から彼に抱っこされるのが好きだったそうだ。子供の心は一番純粋で真っ白だという。子供たちは自分に対して心から接してくれているのかどうか、言葉では表せなくても心の中でははっき
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第2002話

陽は口を開いて、理仁の言葉に言い返そうとしたが、彼はまだ幼いので、それができずにただ焦るだけだった。そんな様子に理仁は大笑いし、また彼の顔に激しくキスを浴びせた。それには陽も理仁の顔を押しのけて、手でキスをされたところを擦り、嫌そうな顔をした。「おじちゃん、つばだらけになるでしょ」理仁は笑って言った。「以前、陽君のほうがこうやっておじちゃんの顔をベタベタにしたじゃないか」陽はまた黙ってしまった。もうすぐ会社のゲートに着くところで、陽は理仁の懐でもがいて下におりようとした。理仁が陽を下におろすと、彼は小走りで唯花の前に戻り、可愛らしい整った顔を彼女のほうへ向けて訴えた。「おばちゃん、おじちゃんがぼくにキスしてつばだらけになっちゃったんだ。帰ったらおばちゃんがしかえししてね。おじちゃんはぼくのことはついでに思い出したんだって。だから、そんなにぼくのことが好きじゃないんだ」唯花は笑って言った。「おじちゃんが陽ちゃんをいじめたのね。いいわ、帰ったら、仕返ししてあげる」陽は力いっぱいに頷いた。理仁が近づいて来て、おかしそうに陽を後ろから抱き上げた。そして陽の小さな顔に軽くかみついた。「誰かに訴えるとは、陽君、自分はよくて他の人はダメだなんて理不尽すぎるぞ」陽は理仁の懐で体をくねらせて、両手で彼の首にしがみつくと、幼い声で言った。「おじちゃん、今ね、おじちゃんのことが大好きで、離れたくないや」「ちょっと待って、陽君はいつも好きなのはお母さんとおばちゃんだって言ってるだろう。明凛さんと神崎さんに会うたびに同じことを言ってるじゃないか。まるで君は会う人みんなにそう言ってるみたいだ」陽は大きな目をぱちぱちさせた。そうかな?と陽は思った。唯花は笑いながら理仁に言った。「陽ちゃんをからかわないの。まだ三歳なのに、あなたとやり合えるわけないでしょ」唯花が理仁に花束を差し出すと、理仁はすぐに陽を下におろし、それを受け取った。彼は輝く笑顔で愛おしそうに彼女を見つめていた。彼の中では完全に二人きりの世界になっていた。おろされて立っている陽はこの大人二人を見上げた。彼は理仁を見て、それからまた唯花を見た。なんだか自分がここには余計な存在のような気がする。お邪魔虫だ!この時陽は、理仁から何度も自分がお邪魔虫だと言われ
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第2003話

唯花にこのように見つめられて、理仁は彼女の耳元に近寄って小声で囁いた。「唯花、そんなふうに見つめないでよ。キスしたくてたまらないじゃないか」「おじちゃん、おばちゃんと何コソコソ話してるの?」二人の大人に存在を消されているお邪魔虫の彼は、興味津々にそう尋ねた。唯花はそれで軽く理仁を押しのけた。理仁は姿勢を正し、このお邪魔虫のほうへ顔を向けて、どうにも仕方ないといった様子で陽の頭を撫でて言った。「陽君、君は本当にお邪魔虫だね」「おじちゃん、ぼくは『おじゃまむし』だなんて名前じゃないよ!」唯花は笑って陽を抱き上げると、理仁の車のほうへ歩いていきながら言った。「そうそう、陽ちゃんはそんな名前じゃないもんね。おじちゃんはただからかって遊んでるだけよ」「おばちゃん、どうしておじちゃんはいつもぼくのことを『おじゃまむし』って呼ぶの?ぼくは虫じゃないよ、おじちゃんは、いいかげんなことばっかり言うんだ」理仁はサッと唯花のためにドアを開けて紳士さをアピールし、笑って言った。「そうだね、おじちゃんはいい加減なことばっかり言ってるんだ。陽君が一番真面目な人だ、絶対に適当な言葉なんて言わないんだから」「だってぼくはいい子だから」陽は真剣な表情で言った。陽は適当な事なんて言わないから、さっきも正直に話したのだ。誠実な子供こそ良い子だからだ。理仁は続いて車に乗り、花束を置いて、陽を唯花の懐から抱き上げた。そして自分の膝に座らせて優しい声で尋ねた。「陽君、おばちゃんと一緒に旅行に行って楽しかったかな?」「もちろん、とっても楽しかったよ。りょう君と一緒に遊んですっごく楽しかった。だけど、りょう君はぼくよりいろんなこと知ってた。ようちえんに行ってるんだって。おじちゃん、ぼくももうすぐようちえんでしょ、たくさん勉強して、次にりょう君に会ったら、どっちが物知りか比べるんだ」瀧は武芸も陽より上で、力も強い。食べる量も陽より多く、知識も多かった。それで陽は自分は瀧に負けていると思い、頑張らなければと思っているのだ。「あと二日したら幼稚園が始まるよ。陽君も幼稚園に行けるからね。その時は行きたくないって泣かなければいいけど」陽は真面目に言った。「ぼく泣かないよ。りょう君は泣かなかったって言ってた。おなじ組の子たちが泣いてるのを見てたんだって。ぼく、よ
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第2004話

陽はわかったような、わからないような顔をしていた。そして少しすると、数台の車が唯月の新店舗の前に到着した。隼翔は店の前で陽が帰ってくるのを待っていたのだろう。車椅子の後ろにはボディーガードが立っていた。理仁は車のドアを開けて降りると、振り返って陽を降ろしてあげた。陽は地面に足をつけると、理仁の大きな手の中でもがき、隼翔のほうへ小走りで近寄っていった。「陽君、そんなに急いで走ったらダメだよ」隼翔はその様子を見て、相当焦ったらしく、陽にスピードを出さないように大きな声で注意した。その時、彼は陽のところに駆け寄って抱き上げたいと思った。しかし、まだ歩くことはできず、車椅子では速度が遅い。陽は足が早く、隼翔が車椅子を動かした時にはすでに目の前まで来ていた。「あずまおじちゃん」陽は隼翔の膝の上に乗ろうと思っていて、登ろうとしたところで動きを止めた。隼翔の足がまだ良くなっていないから、彼の膝の上に座れないと思ったのだ。そんな陽のちょっとした行動に、隼翔は感心していた。隼翔はかなりの時間をかけて、ようやく陽から怖がられず、好きになってもらえた。そして、今、陽は隼翔のことを気遣ってくれるようになっている。すると隼翔のほうから陽を抱き上げて、自分の膝に乗せた。「おじちゃん、足痛くないの?」陽は座ると少しも動こうとしなかった。もし自分が動いて、隼翔が痛がったらいけないと思っているのだ。「おじさんは歩かなければ、痛みを感じることはないよ」「そっか」それを聞いて、陽は安心し、緊張でこわばった体もリラックスできた。「陽君はいつ帰ってきたのかな?」隼翔は下を向いて陽のその小さな顔に自分の頬をすりつけた。「おじさんはすごく陽君に会いたかったよ」「おばちゃんと一緒に帰ってきたばかりだよ。帰ってすぐりひとおじちゃんを迎えに行って、来たんだ。あのね、あずまおじちゃんとママも一緒にご飯食べに行こうって。ぼくはたまにあずまおじちゃんのこと考えてたよ」理仁と唯花の二人がやって来て、陽のその言葉を聞き理仁が言った。「陽君、それはひどいぞ。さっき遊びに夢中になってお母さんのことも、俺のことも忘れてたって言ってたじゃないか。それなのにどうしてたまに東おじさんのほうを思い出したんだ」陽は目をくるくるさせて、当然のように答
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第2005話

隼翔は陽をしっかり抱きしめて、唯月に言った。「今は痛みはそこまで感じないから大丈夫だよ。ただ、歩く時に痛くなるだけだ。陽君がこうやって座ってるのは問題ないよ」唯月は隼翔に言った。「もしどこか痛むところがあれば、我慢せずに言ってください」そう言いながらも、彼女はやはり息子を隼翔の懐から抱き上げて下におろした。それから理仁たちに挨拶をした。「お姉ちゃん、ただいま」唯花は姉に抱きついた。姉妹は互いに抱きしめ合ってから、唯花はじっと姉を見つめて言った。「数日会っていないだけで、なんだかお姉ちゃん、ちょっと変わったわね」唯月は思わず笑ってしまった。「何が変わったの。同じでしょ」「ママ、ぼくおなか空いた」陽は唯月に言った。唯花は陽を抱き上げると、姉に向かって言った。「お姉ちゃん、東社長、一緒に食事に行きましょう」「ええ」理仁は隼翔の後ろに回ると、車椅子を押して歩いた。隼翔と理仁のボディーガードたちは一緒についていった。唯花と唯月は陽を連れて先に歩いていた。すると理仁は親友に小声で尋ねた。「お義姉さんとは何か進展があったか?唯花に言われなかったら気づかなかったが、彼女はもっと綺麗になったような気がするぞ」隼翔は低い声で笑った。「まさか俺が影響してるとでも言いたいのか?彼女はまだ俺の気持ちを受け入れてくれていないぞ。彼女とはまだ友達関係だ。そりゃ、俺の存在がきっかけて彼女が綺麗になるのは嬉しいが、残念にもそうじゃないな。今の彼女は自分の店を持って自信が溢れている。それに、家庭のことで疲れることもないから、毎日幸せで気持ちにも余裕があるんだよ。それで周りもなんだか彼女が変わったような、特に綺麗になったような気がするのさ。もちろん、彼女は前から綺麗だったけどな」理仁は笑った。「どうやら俺たちは同じみたいだな。うちの唯花だってそうだよ。彼女が自分の事業が軌道に乗って自信をつけてくると、もっと綺麗になったと思うんだ」一行はスカイロイヤルホテルのレストランで食事をとった。食後、隼翔は唯月親子を家まで送りたいと思ったが、それは彼女にやんわりと断わられてしまった。それに自分が自由に動けないことを考え、隼翔も最後は諦めた。唯月は自分で運転して息子と一緒に家に帰り、理仁夫婦はショッピングに出かけてから家に帰った。少しの間
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第2006話

唯花は姉が車に乗る時、ひとこと注意するのも忘れなかった。唯月は笑って言った。「それはこっちのセリフよ、あなたは運転する時スピード出しすぎだわ。やっぱり結城さんの言うように運転手をつけてもらいなさい」唯月は妹よりも何歳か年上だから、より大人でしっかりしている。彼女が運転する時は常に安全運転だが、唯花はスピードを出して駆け抜ける爽快感が好きだった。「私は自分でハンドルを握るのが好きなの」唯月はどうしようもなく、ただ笑っていた。姉妹は幼稚園の前で別れ、それぞれの店に出勤していった。本屋はすでに開いていて、明凛がハタキを持って本棚の埃を掃除しているところだった。新学期が始まったことで、高校生たちも学校に通いだしている。今のこの時間帯は店内は静かだった。九条家のボディーガードは明凛に帰されてしまっていた。彼女は一日中店にいるから、店の前で門番のように守られる必要はない。それでは客が驚いてしまう。唯花は車を駐車し、車の鍵を手に降りてきた。明凛に挨拶をしながら、店の中へ入っていった。彼女は明凛の好きな果物も買っていて、大きな袋をいくつも提げて本屋に入った。明凛が出てきて、唯花が果物の入った袋をたくさん持っているのを見ると、近寄って二袋受け取ろうとした。しかし、唯花が急いでそれを阻止した。「持たなくていいわ、重たいんだから。私がやる。力はあなたよりあるんだからね」唯花は空手をやっていたので、明凛よりも力持ちだった。明凛は言った。「果物の入った袋二つくらい問題ないわよ。お腹だってまだ大きくなってないんだし。あなた達どうしてみんな私を脆いガラスのように扱うのよ。まるで私が転んだら粉々に壊れちゃうみたいに扱うんだから」それでも唯花は明凛に袋を持たせることはなく、自分で提げてキッチンへ入った。そしていろいろな果物を一つずつ取り出して、残ったものは冷蔵庫に入れた。唯花は果物を水洗いしながら、明凛に言った。「今日は暑いから、果物は冷蔵庫に入れておくね。食べたい時は私に言って、冷蔵庫から取り出してちょっと置いておくから。あまり冷えすぎたのを食べないほうがいいわ、妊娠中だし」「唯花、あなた突然お節介な近所のおばちゃんみたいになってるわよ」明凛は手を伸ばしてブドウを二粒取って食べた。「家では悟に口うるさく言われて、店ではあなたに注意され
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第2007話

明凛は腹を立てて言った。「唯花、周りの言うことなんて気にしちゃダメよ。結城さんとご家族があなたに子供を生めって催促しないならそれでいいんだから。それに、あなたが妊娠しないのを、あなただけのせいにするのはおかしいでしょ。もしかしたら彼のほうが不妊である可能性だってあるのに。あなたが検査しようって言った時、彼はそれを拒否したでしょ」明凛は親友夫婦は何も問題ないと信じている。しかし、周りはいつも唯花のことを子供の生めない女だと揶揄するものだから、明凛はもう我慢できずに怒りを爆発させていた。どうして男側の問題だとは言わないのだろうか?それは不公平すぎる。夫婦が暫く経っても妊娠しない場合、みんなが女性のほうに問題があると言うのは、何を根拠にしているのだろうか?「前は気にしていたけど、今は誰がなんといってももう気にしないわ。きっとこんな言葉を聞きすぎて麻痺しちゃったのよ」唯花は本当に周りからどういわれようがどうでもよくなっていた。明凛が自分のために腹を立てているのを見て、唯花は笑って言った。「明凛、その話は絶対に理仁に知られないようにしてよね。彼は問題ないから。もし、彼の方が不妊だなんて言ってしまえば、面倒に巻き込まれるのは私よ」明凛は言った。「私はただあなたの前でしか言わないよ。結城さんがあなたのせいにしない限り、私も絶対に彼の前で彼に疑惑の言葉をかけたりしないから」明凛は、理仁が唯花のことを疑わない限り、彼に対して文句を言う気はない。「唯花は音濱岳で数日暮らして、遥さんから刺激を受けたでしょ。もしかしたら、それで妊娠しちゃうかもよ。どのみち、あまり心配しないで。きっと子供ができるから」唯花は果物をのせた皿を持って出てくると、テーブルの上に置いて明凛を呼んだ。「ほら、果物でも食べて。そんなに怒らないの、今は楽しい気持ちを保つことが大事でしょ。子供に伝わるんだから。あなたの子供は、私にとっても自分の子供のように大事なんだからね」明凛はテーブルのほうへやって来ると、唯花の向かい側に座って、果物を食べながら尋ねた。「結城おばあさんはまだ帰ってきてないの?」「芽衣ちゃんと離れたくないみたい。あと数日はあっちにいるって」明凛は笑って言った。「そんなことだろうと思った。おばあさんは若い頃娘が欲しいって思ってて、孫ができた時も
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第2008話

「辻家のあのお嬢様にデリバリーを届けた時に、彼女に気に入られたらしいわ。噂では、辻さんのひもになった彼は、高級ブランドのスーツとネクタイを買ってもらって、数人のボディーガードもついて高級車で送り迎えしてもらってるらしいわ。きっと彼を第二の結城さんに仕立て上げたいんだろうね。彼女の結城さんに対する執着って本当に露骨だわ」理仁に会ったことがある人であれば、夕菜の「ひも」となったあの男の後ろ姿を見ただけで、きっと結城理仁だと勘違いするはずだ。唯花は少し黙ってから口を開いた。「顔が似ていたとしても、理仁ではないわ。あれが理仁じゃないなら、彼女がいくらどの男をひもにしたところで、別に私には関係ないし」「彼女が毎日SNSに彼とのラブラブな写真をアップしてるから、彼女が結城さんと一緒にいるって周りが疑ってるじゃないの。彼女がする投稿写真に写ってるあの男は全く正面からの写真がないのよ。明らかに周りに彼女と結城さんが一緒にいるんだって誤解させようとしてるわよね。こういうやり方であなた達夫婦の仲を裂こうっていう魂胆よ。あなたにあれは結城さんなんだって勘違いさせて、彼を誤解させるためにね」唯花は笑った。「私は夫のことを信じてるもの。ただ、彼女は理仁のことを全く理解してないとしか言えないわね。たった二回会っただけで、理仁の外見にはまちゃったのね。こんな方法で私たち夫婦の仲が引き裂けると思ってるなら、本当に無邪気だわ。浮気している現場を押さえない限り、私は理仁のことを疑ったりしないわ。もちろん、もし理仁が本気で私を裏切るというなら、彼らの好きにさせるけど」明凛は言った。「それはそうね。私も結城さんを信じてるわ。だって、彼はかなりの時間をかけてやっとあなたのことを好きになったでしょ。彼は簡単に誰かを好きになるタイプじゃないよ。もし、綺麗な女の子を見てすぐに惚れちゃうような男なら、あなたとは結婚していないし。そんな奴なら元カノが大量にいるはずよ」唯花は果物を食べながら、ふいに明凛に向かって言った。「明凛、私、理仁とわざと喧嘩する演技でもしてみるってどうかな。辻さんの企みにこっちから乗ってやるの。そうしたら、彼女は見事私と理仁の仲を引き裂くことに成功したと勘違いして、次の行動に移すかもよ」明凛は笑って言った。「私はそれには賛成だけど、私の理性がそれは反対した
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第2009話

明凛は声を抑えて笑っていた。唯花は完全に理仁の影響を受けているし、同じく、理仁も唯花の手に完全に落ちている。夫婦二人は非常に深く愛し合っている。愛がなければ、相手から影響を受けるようなことはない。唯花はまずコホンと咳払いをし、それから理仁の電話に出た。「理仁」唯花はわざと甘えた声で理仁の名前を呼んだ。その声に、電話の向こうの理仁は手を震わせ、危うく携帯を床に落としてしまうところだった。彼は電話をかけ間違えたのではないかとまで思ってしまった。携帯を耳元から離し、画面を見て自分が愛妻に電話をしていることを確認した。そしてまた携帯を耳元に戻し、おかしそうに唯花に尋ねた。「何か俺にばれたらまずいような事でもしたの?それとも、隠れて俺の悪口を言っていたとか?」「そんなわけないじゃない。あなたのことが恋しいって思ってたところ。なに、さっきみたいな声で呼ばれて痒くなったの?ドキッとしなかった?嫌い?」理仁は笑って言った。「ただ驚いただけだよ。電話をかけ間違えたのかとも思ったぞ。絶対裏で俺の悪口を言っていたに違いない。悪口の途中にちょうど俺が電話をかけてきたから、そわそわしたんだろう。それであんな可愛い声で俺の名前を呼んだんだ。じゃなければ、君はあんなに可愛い声で俺を呼ぶはずがないな」「違うってば、本当よ。あなた、何か用事?」気まずい唯花は急いで話題を変え、理仁に何の用事でかけてきたのか尋ねた。「君のことが恋しくなったから、電話をしただけだよ。ダメなのか?今本屋にいるの?」「ええ、さっき到着したところよ」理仁はまた明凛も店にいるのか尋ねた。それがわかってから、彼はやっと本題に入り、唯花に伝えた。「さっき、奏汰から電話があって、あることを俺に伝えてきたんだ。本当は君に話したくはなかったけど、秘密にしておくこともできないし、やっぱり伝えようと思ってね。だけど、君は何もする必要はないから、伯母さんに任せておけばいいよ」「伯母様に任せるって、一体どんな事なの?」唯花は気になって尋ねた。すると、理仁は黛家の件を唯花に伝えた。唯花はそれを聞いた後、暫くの間呆然としていて、ようやく我に返ると話し始めた。「後で伯母様のところに行って、この件を話すわ。伯母様は当時小さかっただろうけど、それでも記憶は少しあるはずよ」「ああ
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第2010話

明凛はこの時、唯花と詩乃の血縁関係が間違った結果なのかと思ってしまった。「お母さんと伯母様は確かに本当の姉妹だよ。今ね、奏汰さんが柏浜に行ってるんだけど、ある女性を当主の座につける一族について調べたの。その一族の前任の当主は妹の策略にはまって命を落とした。そして、その夫を含めた家族みんな殺されたらしいわ。だけど、表向きには事故死的な扱いになっているみたいね。その前任の当主には二人の娘がいたって。彼女たちは数十年前に失踪してしまい、その生死は確認されていないらしいの。その一族は黛家と言って、私のお母さんの旧姓も黛。だから、理仁はその一族とお母さんが関係あるんじゃないかって疑っているのよ」明凛は目を大きく見開いて、驚愕していた。「嘘でしょ、そんな複雑な事情があったなんて」これには、唯花の実母は本当に過酷な運命を持つ人だと言うしかない。もし、本当にその黛一族の人間だったとすれば、生まれつきの令嬢だったはずだ。しかし、裕福な暮らしを奪われ、幼くして家族をみんな失ってしまった。そして実の姉とともに児童養護施設に流れ着き、その後は養子として外に出された。しかし、それでも安定した幸せな生活を送ることはできず、何度も別の養父母にたらい回しにされ、七、八歳になってようやく今井家の養子となって大人になった。その後は内海家に嫁いで、二人の娘を生んだのだが、不公平な義父母にあたってしまった。たった一つの救いは、夫がとても彼女を大事にしていたことだ。娘たちも物分かり良く、親孝行な子だった。そのような生活が続いたことは、幸せと言えるだろう。それがまさか不幸にも、夫婦二人は交通事故で帰らぬ人となってしまった。その事故による賠償金も内海家と今井家に大半を奪われてしまった。そして母親のその不運は、二人の娘も巻き込んでしまい、唯花たちは十数年も苦労することになった。唯花も母親の運命がここまで複雑なものだとは思ってもいなかった。彼女は携帯を持ち、明凛に言った。「明凛、あなたは店番をお願い。私は今から伯母様のところに行ってくるから」「任せて、車の運転には気をつけるのよ。それが本当か嘘かはともかく、ゆっくりみんなに尋ねて、調べればいいよ。いつかは真実が明るみになるわ。結城さんも悟に頼んで調査することだろうしね。それが真実だったとして、結城さんの言う通り、こ
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