All Chapters of 交際0日婚のツンデレ御曹司に溺愛されています: Chapter 2041 - Chapter 2050

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第2041話

「凪、早く出ていったほうがいいよ。ここにいたらお母さんがイライラするでしょ。あなたのせいでお母さんすごく怒ってるみたいだし、早く出たほうがいいって」若葉は良い人そうに凪にそう言った。彼女は自分から凪に近寄って手を引っ張り、急いで凪を外へ出そうとした。凪は言い訳も拒否もすることなく、若葉に引っ張られるまま外へ出た。若葉は凪をオフィスから追い出した後、バタンッと大きな音をたてて、ドアを閉めた。若葉はこの時、上機嫌だった。母親が凪に任せた小さな事業、子会社をあれだけの実力を発揮して完璧に管理していると思っていたら、それは誰かに頼っていたからだったのか。兄たちの成果まで横取りしているようだ。そういうことだとわかり、若葉は安堵した。凪がひたすら母親を満足させることができなければ、二人が本当の親子であっても、次期当主の座は難しい。それに、母親はまた当主の座を若葉に戻すかもしれない。小さい頃から当主の手で教育を受けてきたのは若葉のほうなのだから。若葉は母親ほど傑出した才能はないものの、田舎娘の凪よりもずっとマシだと思っていた。若葉はくるりと体の向きを変えて、歩きながら言った。「お母さん、あなたもそんなにイライラしないで、凪はビジネスに関しては初心者だもの、まだ慣れてなくて当然よ。だって、前は田舎で畑仕事とかしてたんでしょ。良くて小さな工場でバイトしてたくらいよ。毎月だって、十万も稼げてなかったはず。大きな事業なんて扱ったことないんだし」和子は期待を裏切られたかのようにこう言った。「黛家の女性は昔から男よりも優れていた。どうして私の娘になると、使い物にならないのかしら。いくらわからないと言っても、会社に入ってもう一年よ、少しくらいは理解できるはずでしょ。あの子ったら、他人の功績を横取りすることしか知らないの。偽りの自分を私に見せて、能力が高く、実力があると思わせようとしたのよ」「お母さん、もう少しだけ凪に時間をあげなよ。そんないつも彼女を叱らないで。あの子ったら怒られて顔も上げられなくなってるよ」若葉は嘘らしい言葉で母親に助言していた。彼女はすぐに母親にお茶を持ってきた。「お母さん、まずはお茶でも飲んで落ち着いて」和子は若葉が持ってきたお茶を手に取り、顔を上げて次女を暫く見つめてから、ため息をついた。「若葉、あなた
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第2042話

凪はそんな会社の古株たちの考えなどお見通しだった。「プルプルプル……」エレベーターに乗った後、凪に電話がかかってきた。彼女は着信表示を見てから出た。「お嬢様、ある知らせを受け取りました。前任のご当主様はお嬢様の伯母にあたる人物で、確かに彼女には二人の娘がいるようです。その二人は数十年前に失踪し、今では星城にいると」星城に?凪は低く冷たい声で尋ねた。「その二人は星城のどこにいるかわかる?今どんな生活を送っているの?彼女たちは自分が黛家の出身だと知っているの?」「前任の当主様の長女は星城の神崎家の奥様です。神崎グループ社長の母親でございます。次女は十六年前の交通事故で他界されています。しかし、二人の娘様がいらっしゃって、そのうち一人は星城一の財閥家、結城家の若奥様である唯花様です」それを聞いて、凪の顔色が一変した。彼女が黛家に戻ってすぐ、一族の老人たちがこそこそと話しているのを凪は聞いてしまった。現当主は本来、凪の母親がなるはずではなかった。凪の母親は当時、姉と妹を殺害して自分が当主となったのだ。そして前任の当主というのは、凪の実の伯母であり、伯母には二人の娘がいた。しかし、伯母の一家は全員亡くなり、二人の娘も行方知れずとなった。みんなその二人のことを幸が薄い子たちだと言っていた。凪が黛家に戻ってきてから、一族はみんな気弱そうな彼女を見て期待できないと思っていた。黛一族はみんな最後にはあの養女である若葉に乗っとられてしまうのではないかと心配している。だから、一族の者たちは和子にばれないように、あちらこちら、凪の従姉妹を探していた。そして二人がまだ生きていることを期待したのだ。そしてついに、本当にあの二人の情報が手に入った。しかも、その身分や地位は桁違いだった。神崎グループは星城において、唯一結城グループと張り合える相手で、結城グループの好敵手でもある。そこから神崎グループの実力がわかる。前任当主の娘のうち、次女のほうは若くして他界しているが、二人の娘を残していた。そのうち一人は結城家の後継者、結城理仁の妻で、唯花はだいぶ前に各都市の上流社会では有名になっていた。唯花の影響力は半端ない。もし、唯花と詩乃がこの過去を知れば、恐らく憎しみを抱き、もしかすると血で血を洗う争いが起こるかもしれない
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第2043話

「お嬢様、これは隠す隠さないの問題ではありません。そもそもこの情報はあちらのほうから流れてきたものです。現在、すでに星城の神崎夫人に会う手配をしています」凪は暫くの間黙っていてから口を開いた。「そう、わかったわ。当主のほうにはまだ隠しておいて」凪の母親が奪い取ったものは、最終的に本来あるべきところに返さなければならないだろう。凪がどのような選択をするかだ。通話を終えると、凪はエレベーター内の壁に寄りかかり、呆然と天井を見つめていた。この一族は本当に闇が深い。もし、この噂が真実なのだとしたら、凪の母親は自らの手を血に染めたということだ。しかもその血は二人のおばの血なのだ。権力争いのために、母親は家族としての情も捨て、残酷なことをしたのだ。それならば、凪はどのような選択をすればいいのだろうか。一体どうすればいい?悪事に手を染めることなど、凪にはできない。養父母は小さい頃から愛を込めて彼女をちゃんと育っててくれなかったが、彼女は何が正しく、何が間違っているのか、善悪がはっきりわかる人間だ。星城の神崎夫人が確実に自分の伯母の娘であることがわかったら、その時またどうするか決めればいい。今現在、彼女が優先しなければならないことは、まず黛グループを掌握し、権力を持ってから、黛家の当主の座を本来なるべき者に返すことだ。数分ほどの短い時間で、凪は自分の中で正確な答えを出してしまった。彼女はどうにかして、黛家当主の座を伯母の後代に返すと決めた。これはもとから伯母の家族のものだからだ。凪はそもそも、この当主という座には全く興味がなかった。しかし、彼女が黛家の血を引く人間だとわかってから、しかたなくその責任を負うしかなかった。自分よりも相応しい人間がいるとわかれば、彼女は快くその地位を譲るつもりだ。そして、その後は自分が設立した会社の経営に戻ればいい。ただ、神崎夫人の年齢は恐らくすでに五十を過ぎているはずだ。彼女がもし黛家を継ぐのであれば、すぐに次の後継者に変わる必要がある。年齢が邪魔をして力を発揮できないからだ。神崎夫人の娘はその能力があるだろうか、と凪は思った。これもさっき凪が詩乃を調査し、全ての情報を得ようとしている原因なのだ。そしてすぐ、エレベーターのドアが開いた。凪は平然とした様子でエレベーターを
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第2044話

「私、会社に戻りたくてお母さんに適当に何か役職をつけて戻してって頼んだんですけど、凪が反対したんです。会社では暇人を養うことはできないとか言って、自分は役に立つ人間だとでも思ってるんですかね?あいつのほうこそ何もできない暇人でしょ」若葉は腹の底にたまっていた怒りを、この時一気に綾にぶちまけて訴えた。家では、両親も兄もその嫁たちもみんな自分のほうを大切に思ってくれている。「お義母様は他にも何か言ってた?」綾は若葉と凪が対立するのを楽しんでいた。「えっと、凪に会社を継ぐ力がなければ、当主の座もあの子に譲るかはまだわからないって。お母さんの話を聞くからに、凪は後継者としての立場は不安定なんです。だから私にもまだチャンスがあるってことですよ。綾さん、お兄さんに頼んでお母さんの前で私を会社に戻すよう言ってって伝えてもらえませんか。私は徹底的に凪と争ってみせます。だって、私は小さい頃から後継者としてお母さんに育てられてきたんですから」若葉は自分が凪を打ち負かすことができると自信を持っていた。綾が言った。「私たちもお義母様の前ではあなたの良いところを話しているわ。それにあなたのお兄さんはね、凪はあんまりだって言ったのよ。だって、あの子は実力もないのに、あなたを会社に戻すことを許さなかったでしょ。きっとあなたとは比べ物にならないほどひどいってわかってるからなのよ。若葉ちゃん、この件はやはりあなた自身にかかっているんだからね。お義母様があなたを一番大事に思っているわ。お義母さんに思いっきり甘えて、ご機嫌を取るのよ。そうしたらきっと会社に戻る許可をくれるはず。黛グループは今もまだお義母様に決定権があるのだから、あの子には何もできないわ」「ええ、後でお母さんに新しいお洋服と、アクセサリーを買ってきて、喜ばせるつもりです。夜は私がお母さんが好きな料理をたくさん作るつもりです」母親のご機嫌取りなら、若葉はお手の物だ。彼女は小さい頃からかなり甘えてきた。母親は確かに彼女のことを可愛がり、最も溺愛している。小さい頃、兄たちが何か過ちを犯して母親が家訓に則り罰を与えようとした時、若葉が甘えて兄たちを許してほしいとちょっとおだてるだけで、母親はすぐに許してしまった。だから、兄たちは若葉のことを可愛がっていた。それから父親が多めに小遣いがほし
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第2045話

「凪、凪、凪って、あの女が何だっていうんです?まったくの役立たずで、お母さんが必死に教え込んだって無意味だったじゃないですか。お母さんがあの女のことを諦めた時にはやっと誰が後継者として相応しいか気づきますよ。私をバカにしてる奴ら、覚えておきなさいよ!それから、私が気に入った白山社長もいつの日か落としてみせますから。お母さんも私が彼を追いかけるのを応援してくれてますし」若葉は、後継者と決まっていない今のうちに、まずは玲を口説いて落とそうと考えていた。それから後継者としての身分を取り戻すのだ。そうすれば好きな人も、身分と地位も全て手に入る。これで完璧だ。綾は若葉と凪が争い合い、夫が漁夫の利を得ることを期待している。だからもちろん若葉の後押しをするため、若葉には自分がこの世で最も素晴らしい女性だと思い込ませるようにおだてまくった。黛一族の内部争いに関して、唯花も星城で九条家の力を借りて、静かに注目していた。もちろん、自分自身も毎日楽しく過ごしている。遠く柏浜の黛家の内部争いのせいで、自分の楽しみや幸せを忘れてはいけない。周りには唯花が幸せに暮らすのを妬む人物もいる。絶対に彼女と理仁の家庭を壊してやろうと考えているのだ。金曜日の朝、唯花はわざわざ早起きして理仁と一緒に陽を幼稚園まで送った。それに午後は幼稚園まで陽を迎えに行くと約束し、陽はやっと先生と一緒に幼稚園に入っていった。見送りを終えてから、夫婦二人はそれぞれ出勤していった。唯花は今まずは本屋に行くようにしている。本屋に入ると、明凛が彼女に言った。「唯花、レジの上に大きな封筒を置いてるんだけど、あれはある高校生が持ってきたの。その子が道端で知らない人に突然呼びとめられて、あれを私たちの店に持って行くよう頼まれたらしいのよ。封筒にはあなたの名前が書いてあるわ。触った感じ、写真っぽいけど」明凛はそう言いながら、キッチンのほうへ行き冷蔵庫の中から昨日の昼に夫が持って来た果物を出した。彼女は食べきれなかった分を冷蔵庫に入れておいたのだ。果物を水洗いした後、皿にのせて出てくると、唯花に言った。「その中に入ってる写真、きっとあの恋敵と結城さんにそっくりな男性よ」唯花は自分のカバンを置いてからレジの奥に行って椅子に座り、その大きな封筒を触ってみた。確かに写真のようなものが入
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第2046話

「あなたはとっても綺麗よ。妊娠したってスタイルはずっとキープしているし、それに自立した素敵な女性って感じで、九条さんもかなりメロメロに酔ってるでしょうね」それを聞いて明凛は大笑いした。「悟の家族からはよく食べろ食べろってなんでもかんでも与えられているんだから、なにがスタイルをキープしてるよ。私もうすぐお腹がぷくって出てくると思ってるの。太るに決まってるわ。毎日毎日ペットに餌を与えるみたいに食べさせられて、太らないほうがおかしいでしょ。今はちょっとエクササイズでもして鍛えたいって思ってるんだけど、悟が許してくれないのよ。まあ、だけど私も自分をコントロールできていないわね。前から食いしん坊だったし、妊娠してからはそれがもっと激しくなったって感じよ。一日中草を食べてるウサギみたいに口が止まらないのよね」明凛はそう言いながら、立ち上がってお菓子の入った箱を二つ持ってきた。「これね、うちから持って来たの。うちのシェフが考えた新しいデザートだよ。とても美味しかったから、あなたのために持って来たの」唯花は一箱受け取って言った。「あなたのうちのシェフは腕がかなり良いみたいね。食べてみるわ。美味しかったら、一箱琴ヶ丘のほうに持って帰って、そこにいるシェフに味をみてもらって作ってもらおう」「今週は琴ヶ丘で週末を過ごすの?」「うん、二週間に一回はあっちに行って、家族や親戚と過ごしているからね。それにまだまだいろんな事をお義母さんに教えてもらわないといけないから」麗華は早く唯花に結城家の女主人としての役目を教え込みたかった。そうすれば、自分は肩書きだけで引退できるからだ。しかし、来月は理仁と唯花の結婚式が控えている。唯花はその準備に忙しく、今は姑から女主人として管理すべきことを引き継ぐ余裕がない。「あなたも来る?」唯花は明凛に尋ねた。「いいわね、後で悟に言ってみる。午後高校生たちが授業が終わって下校時間が過ぎてから、私たちもあなた達夫婦と一緒に琴ヶ丘邸のほうで週末を過ごすわ。今こんだけ暑いから、琴ヶ丘のほうへ行けば涼しくて良い休暇が過ごせるでしょうね」琴ヶ丘は景色が素晴らしいだけでなく、自然が多くあの地域を歩いてまわればそこまで太陽の光に晒されることはない。それに、常に風が吹いていて、とても涼しく感じられるのだ。「おばあさんはまだ帰ってき
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第2047話

この時、理仁は会議中だった。それですぐに唯花に返事はできなかった。話し終わった後、理仁はやっとテーブルの上に置いていた携帯を手に取って、LINEを開いた。唯花から連絡が来ているのを見て、彼は思わず表情を緩めた。会議室にいる管理職たちは、社長が急に表情を和らげたのを見て、きっと奥様からだろうと予想した。その場の全員がほっこりとしていた。結城社長夫妻が結婚してからもう一年経つ。まだ結婚式は挙げていないが、それももうすぐだ。来月には結婚式が行われる。夫婦の仲は、やはりとても良く。しかも時間が経てば経つほど良くなっていっている。彼らはその目で、冷徹社長が社長夫人の前では、少しずつその氷を溶かしていくのを見届けてきた。鉄も熱を加えれば柔らかくなりその姿を変える。いくら頑固で厳しい男でも、心から愛する女性に出会えれば、柔らかくなるのだ。しかしその時、彼ら結城社長の表情はさっきとは打って変わって一変し、彼はガタンと音を立てて勢いよく立ち上がった。椅子をのけて、背を向け外へのほうへと歩いていった。数歩進んで会議の途中だったことを思い出し、振り返って悟に言った。「悟、あとはよろしく頼む」悟はすぐに承諾した。そして悟は心の中で、一体また何があったのだろうと考えた。悟はかなり長い間、このように慌てた様子の理仁を見ていない。理仁は大股で会議室を出ていった。彼は自分のオフィスに戻ると、すぐに唯花に電話をかけた。「唯花、この写真は一体どこで手に入れたんだ?」「さっき受け取ったの。誰かがうちの店に届けて、明凛が受けたんだけどね」すると理仁は小さな声で何度か悪態をついた。「あなた、怒らないで。この写真の男はあなたじゃなく、姿がちょっと似ているだけでしょ。あの人たちが親密そうにしている写真を撮ったところで、あなたとは関係ないことよ。辻さんはただ身代わりを見つけてきただけでしょ。ただ、何か企んでいつも私にこういう写真を送りつけて、私の心を乱そうと思ってるのよ。彼女たちの陰謀も成功することはないわ。だけど、いつもこんなふうに親しそうにしている写真を見ているのも目が痛いわ。そろそろどうにかしないと。安心して、私はあなたを誤解なんてしてないから。もし、誤解してしまったら、彼女たちの思うツボでしょ。だったらいっそ私たち
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第2048話

「もう冗談は言わないから怒らないで、ね。彼女の対処は面倒だから、父親である辻社長に任せましょ。社長はきちんと物事を判断できる方だから」唯花は辻グループの社長である豊への印象はよく、夕菜に対しては悪かった。夕菜は一人っ子だ。しかも、豊が治療を繰り返してやっと手にすることができた子供であるから、あのようにわがままな娘に育ててしまった。夕菜は気に入った人や、物を何が何でも手に入れないと気がおさまらない。豊は娘と話し合い、叱ってしっかりと注意していたはずだ。父親から何も言われていなければ、彼女がおとなしく地元で理仁の代役を探し写真を撮って、唯花を誤解させようと送りつけてくることはなかっただろう。理仁は言った。「後で辻社長に連絡するよ。写真は彼に送って見てもらう。そして娘の件を処理してもらうんだ」結城グループと辻グループが提携を決めた後、理仁はあれからこの事業に関してはノータッチだった。部下を担当者にあてたのだ。理仁は既婚者で妻との関係も良好だというのに、娘は理仁に一目惚れをし、モラルに欠いた行動をしたと豊は思っている。感情をコントロールするのは確かに難しいから、許されるべき状況もあるのはある。何と言っても結城理仁という男は魅力的すぎる。しかし、娘は理仁を刺激し、隠すことなく彼にアプローチをした。この件で豊は怒りを爆発させ娘に警告するように注意した。それから彼は理仁に対して申し訳なく思っていた。理仁から連絡することもなければ、豊から理仁に連絡することもなかった。豊は今も海外出張中で、あと数カ月は帰国できない。辻グループの事は、基本的に夕菜が取り仕切っている。夕菜の肩書きは辻社長つきの秘書になっているが、社員たちは、辻グループはいずれは彼女に継がれることになるとわかっている。それで、辻社長が不在の間、夕菜が会社の全てを任されていて、誰も口を挟むことはないのだ。しかし、豊は娘のことは少し警戒心を持って構えていた。彼が出張している間に、娘を制御する人間がおらず、また何か過ちを冒すのではないか心配だった。そして、わざわざ甥の響にも少し権利を与え、夕菜の動向に目を光らせておくよう頼んでおいた。特に夕菜が勝手に星城に行って、理仁と接触しないように響に任せていた。「昼は迎えに行くから一緒にご飯を食べよう」「はい、わかり
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第2049話

唯花は電話を切ると、明凛に言った。「うちの理仁さん、演技には付き合ってくれないっぽいわ」明凛は、はははと笑った。「そんなの考えるまでもなく、彼が同意するはずないわ。結城さんは金魚のフンみたいに、二十四時間ずっとあなたの傍にくっついていたいのよ。そんなくっつき虫さんがあなたの演技に付き合うわけないでしょ。万が一、本気で彼を書斎に追いやって、彼がそこで寝る羽目になったら、もう彼にとっては損しか残らないじゃないの」「類は友を呼ぶ、でしょ。あなたのところの旦那さんだって同じく、くっつき虫よ」明凛は無邪気そうに言った。「違うわ、私はまだ午後一緒に琴ヶ丘で週末過ごそうって彼には伝えてないもの。昼ごはんの時にまた言いましょ」今悟に伝えて、万が一彼が行きたがらなかったら、仕事に影響が出てしまう。一方、理仁は妻との電話を終わらせると、すぐに辻社長に電話をかけた。辻社長はすぐに電話に出た。「もしもし、結城社長」「辻社長、失礼いたします。あの、急で申し訳ありませんが、社長のLINEを登録させていただけませんか?」豊は突然のことで少し驚いたが、すぐに笑顔を作って言った。「もちろん、よろしいですよ」「では、LINEでまたお話しましょう」そう言うと、理仁は通話を終わらせた。そして豊のほうはというと、気が気ではなかった。両グループが提携を決めてから、理仁とは長い時間連絡していない。豊のほうからも理仁に連絡しないようにしていた。何かあれば、彼は悟のほうへ連絡を取っていた。それが今日突然理仁が電話をかけてきて、開口一番にLINEを追加したいと言われたため、豊は何かあったのではないかと不安に感じた。もしかすると、自分が海外にいる間に、娘が大きなトラブルを起こしたのではないかと気になった。しかし、甥の響は何も報告してきていない。豊があれこれと憶測している頃、理仁は豊のLINEに友だち申請を送った。豊は急いで申請許可のボタンを押した。友だち登録された後、理仁はすぐに写真を送った。何枚もの写真を立て続けにだ。理仁は写真を送り終えると、今度はボイスメッセージ機能を使ってメッセージを送った。豊は先にその音声を聞いた。「辻社長、さっき送った写真はそちらの娘さんが送ってきたものです。写真に写っている男は私ではありません。ただ
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第2050話

「辻さんは一人でこんなことはできないはず。彼女には星城に手助けをする仲間がいるんですよ」豊は何度も理仁にこの件はしっかり処理すると約束した。理仁はその言葉を信じると返事をした。辻社長を利用して夕菜と手助けをしている女を片付けること。同時にやってしまえば、理仁たち二人もわざわざ自ら手を出す必要もない。理仁からのメッセージが来なくなってから、豊はすぐに甥の響に電話をかけた。この二人はほぼ毎日電話している。何かを決定するのには、やはり辻社長の指示が必要なのだ。いくら夕菜が決断しても、慎重な響は、相変わらず伯父に指示を仰いでいた。そんな慎重な態度と、社長を中心に行動しようとするその姿勢が、豊を安心させていた。響はすぐに豊からの電話に出た。「もしもし、おじさん」「響か、正直に答えてくれ。私が不在の間夕菜は何かしでかしたの?もしかして彼女は結城社長に似ている男を見つけたのでは?あの子とその男が親密に何か行動しているのでは?」それを聞いた瞬間、響は少し驚いた。この件がここまで早く、伯父の耳に入るとは思っていなかったのだ。きっと、結城社長が我慢できなくなったのだろう。あの従妹は本当に期待通りに動いてくれる、と響は思った。星城のほうで誰かが、夕菜の傍にいる男が何者かを調査している時、響もそれを知っていた。彼はずっとこの件に注目していたからだ。そして響はわざとあの男の情報を流出して、悟がすぐにそれを掴む手助けをしていた。もちろん、響が裏でこそこそ何をしているのか、悟側もよくわかっていた。ただ響だけがばれていないと思っているだけだ。理仁がただ響もこの件に関わっていることをばらしていなかっただけだ。あのクソ生意気な女は怖いもの知らずだ。彼女には従兄と辻グループの権力争いをさせて、理仁を怒らせた者の末路をしっかりと味わってもらおう。理仁のことを好きになる女性は、ほとんどが熱狂的になってしまう。あの姫華のように、理仁が既婚者であることを知るとすぐにその気持ちに終止符を打つような女は少ない。理仁が既婚者であると知る前の姫華もかなり狂った行動に出ていたではないか。夕菜はそう簡単に気持ちを諦めることができない。彼女は両親から大事に育てられてわがままお嬢様になってしまった。自分が欲しいものは必ず手に入れないと気が済まない。
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