《交際0日婚のツンデレ御曹司に溺愛されています》全部章節:第 2011 章 - 第 2020 章

2108 章節

第2011話

唯花は理解して笑って言った。「明凛もそう言ってた。姫華、伯母様はいらっしゃる?」唯花は袋を提げて、姫華と一緒に屋敷の中に入っていった。「ええ、いるわよ」姫華はそう答えると、また小声で話した。「お母さん、最近はちょっとおとなしいんだけど、でもやっぱり善君と一緒にいるのが受け入れられないみたい。唯花、頃合いを見て、お母さんにちょっと善君の良いところを話してよ。私たちがいくら言っても、お母さんは聞く耳を持たないの。あなたと唯月さんの話なら、お母さんも少しは聞いてくれるわ」唯花は快く承諾した後、また尋ねた。「伯母様、おとなしいって、何かあったの?」「あとでまた話すわ。あなたにしか話さないから、絶対に秘密にしてよね。明凛にだって教えないで。彼女が知ったら、私も大変なことになるのよ」明凛は今、悟の妻だ。もし彼女にここ二日ほど弦がこそこそと贈り物をしてきていると知られてしまえば、明凛は絶対にそれを悟に伝え、それが弦の父親に伝わり、九条家のみんなに知られてしまう。弦の父親は今狂ったように、息子の気持ちを動かせる女性を探しまわっている。もしそんな彼に弦の最近の行動が知られてしまったら、夜中でも神崎家に結婚の申し込みに来るかもしれない。詩乃は娘を星城出身の男性と結婚させたいと思っているが、九条弦のような立場の人間には、やはり娘を嫁がせるのは躊躇ってしまう。主に、弦は姫華に対して一切愛情などなく、淡々とした様子であることが原因だ。弦があのようにしたのは、絶対に人には言えない目的があるからだ。あのような弦と比べて、詩乃は善の良いところが見えるようになった。それで、ここ二日はかなりおとなしくなっている。善が家に訪問してきても、以前よりも少し態度が良くなっている。姫華の話を聞いて、唯花は自分が旅行している間に、二人の親友が何かで衝突したのかと思い、気になって尋ねた。「明凛に知られたらまずいのね?彼女と喧嘩でもしたの?」「そうじゃないわ、別に喧嘩なんてしてない。結婚に関する大事なことよ。さ、家に入りましょ。お母さんに聞かれたらまずいから話はここまでね」姫華は別の話題に変えた。唯花は何があったのかとても気になっていたが、姫華に話題を変えられてしまった。話したくなさそうだったので、唯花もそれ以上尋ねることはしなかった。唯花がここ
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第2012話

陽は唯月にそっくりで、唯月は母親に似ている。詩乃は姪親子を見ると、いつも妹に会ったような気持ちになる。「泣いてませんよ。すごく嬉しいみたいで、朝早くに起きて制服に着替えて、自分からカバンを背負って楽しそうに幼稚園に行きました。逆に私と姉のほうがそれに慣れない感じです」子供が初めて幼稚園に通い始めると、子供たちは意外とあっという間にその環境に慣れてしまうが、逆に親のほうが慣れなかったりする。いつも幼稚園に行っている子供の事を考えていて、早く帰りの時間にならないかと考える親も中にはいる。詩乃は笑って言った。「幼稚園に初めて行くから、新鮮な気持ちなんでしょうね。きっと楽しいところだって思ってるんだわ。一日中幼稚園にいないといけないなんて考えてもいないのかもね。多くの子供たちは二、三日したら、幼稚園に行きたくないって泣き始めるものよ」詩乃は自分の娘のほうを見て、彼女が小さい頃の恥ずかしい話をし始めた。「姫華が小さい頃、幼稚園に通い始めた時もそうだったの。初日と二日目はルンルンしながら楽しそうに行っていたけど、三日目から朝なかなか起きなくなって、起こしてもまだ寝る、幼稚園なんか行きたくないって言い始めたのよ。一週間後、泣き喚くこの子を無理やり車に乗せて、幼稚園まで送ったわ。着いたらまた抱き上げて幼稚園の先生のところに任せに行ったの。数人の先生たちが泣き喚くこの子を捕まえて、なんとか教室まで入っていったわ」姫華は顔を真っ赤にさせた。「お母さん、それ本当に私?誰かと勘違いしてるんじゃないの?私は記憶にないのよ。昔の私はとっても可愛い聞き分けの良い子だったとしか覚えてないわ」幼稚園に行くのに、親に抱き上げられて車に乗せられ、また同じように車を降ろされていたとは、そのシーンを想像してみると、姫華はそれが自分だとは信じられなかった。絶対に他の誰かだ!きっと次男だろう。次男ならその可能性が高い。姫華のように可愛くお利口な女の子がどうしてそのような恥ずかしい事ができるだろうか。「お母さんは記憶力がいいのよ。あなたで間違いないわ。あなたはお父さんとお兄さんから溺愛されていたから、あなたが幼稚園に行きたくないってひとこと言えば、お父さんが幼稚園をやめさせようかと考えだしたの。私がどうにかそれを阻止していなければ、きっとあなたは幼稚園生活を送っていなかった
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第2013話

「柏浜市の黛一族?」詩乃は驚いて言った。「聞いたことはあるわ、だけど、黛家とは付き合いがないわね。どうかしたの?」「伯母様、黛という名字は珍しいですよね。柏浜の黛家は他の一族とは全然違います。あの一族は女性が上に立ち、当主は常に女性が継いでいます」詩乃は唯花を見つめて尋ねた。「唯花ちゃん、私は黛家と関りがあって、血縁者だと思ってるの?」唯花は頷いた。「私はそう疑っているんです。夫たちもそう思っています。夫からこの件を聞いたんです。それで伯母様に聞きたいと思って今日は来ました。伯母様は、小さい頃どこに住んでいたか覚えていらっしゃいますか?」詩乃はすぐには答えず、記憶を呼びおこしていた。彼女と妹が児童養護施設に送られる時、彼女もたった八歳だった。確かに物心はついていたが、その年齢だったので、多くの事はよくわかっていなかった。彼女はただ、自分の両親とその家族たちは全員いなくなり、姉妹は孤児になってしまったことだけわかっていた。ある家政婦が家から彼女たちを連れ出し、多くの場所を転々として、最終的に星城にある児童養護施設にやって来たのだった。姉妹はあの頃まだ幼く、いくら記憶力が良い人間だったとしても、自分の家がどこにあったのかははっきりと覚えていない。ただ、小さい頃家庭条件はかなり良く、周りから自分はお嬢様と呼ばれていたことだけしか覚えていない。母親は非常に忙しい人で、彼女と妹の世話をしてくれていたのは、いつも父親だった。両親は彼女たちのことをとても可愛がってくれていた。祖父母もこの姉妹を疎ましく思うことはなく、逆に女の子のほうが良いと思っていた。そしていつの事だったか、彼女たちの両親、祖父母、おじやおば達が出かけてから二度と戻ってこなかった。そして後から大人から両親は出かけた時に事故にあってしまい、どちらも亡くなってしまったのだと教えられた。そして彼女たち姉妹二人だけになってしまった。妹はあの頃幼すぎて、死が何なのかもわかっていなかった。実際、彼女自身もよくわかっていなかったが、ただ両親には二度と会うことができないことだけはわかっていた。そしてそれからまた暫くして、彼女と妹は誰かに連れられて暮らしていた家から離れた。そして何度も車を乗り換え、歩き、また車に乗っては歩きを繰り返して、最後には二人を連れていた家政婦のお
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第2014話

黛家の現当主は、今年七十歳だ。彼女の姉が第一子を出産した時、彼女はちょうど十八になったばかりだった。もし、詩乃が黛家当主の姪であるなら、今年はまだ五十二歳だ。唯花は自分の伯母が五十二歳より上だったと記憶している。伯母は神崎グループで働き始めてから当時の社長に気に入られて、今の夫に愛され、結婚し出産した。長男の玲凰は今年すでに三十二歳だ。もし、伯母が黛家前任当主の長女だったとしたら、彼女が二十歳の時に玲凰を出産したことにならないか?四、五十年前の人は結婚するのが早かったとはいえ、唯花は二十歳で子供を生むのは、やはり少し早いと思った。「伯母様、黛家当主の姪御さんは、今年は五十二歳のはずです。だから伯母様とは年齢的に合わないかなって」詩乃は言った。「今私が使っている年齢は嘘なの。本当の年齢よりも八歳サバを読んでみんなに言ってるの」それを聞いた唯花と姫華は言葉を失っていた。「お母さん、まさか八歳も上にサバ読んでたの!?」実の娘である姫華でさえも、母親の本当の年齢を知らなかったのだ。詩乃は言った。「まあ、口ではどうにでも言えるものだし。唯花ちゃんがこの件を話さなかったら、私だってあなた達に教えなかったわよ」神崎グループに勤める時はどうしたのかは知らないが、つまり彼女は十何歳かで働き始めたということになる。玲凰を生んだ時は二十歳にも満たなかったということだ。あの年代では十七、八歳で子供を生む人も多くはなかったが、それでもそういう人もいた。彼女はそんな人たちよりも少し遅めに生んだくらいだ。「年齢的に合うなら、伯母様とお母さんが黛家当主の姪である可能性が高いです」唯花が言った。詩乃は昔の事と、唯花から聞いた黛家の事情を合わせて、心の中で、自分は柏浜の黛家が実家にあたる一族だろうと思った。そして詩乃は暫くの間考えてから口を開いた。「唯花ちゃん、私とあなたのお母さんの出生に関しては、私がきちんと調べてはっきりさせるわね」「伯母様が何か手助けが必要なら、私と理仁さんにも言ってください。私はあまり力になれませんが、理仁さんならできますから。今、奏汰さんが柏浜にいるから、黛家の過去については彼が白山玲さんに聞いてくれたんです。実際、このような事は柏浜では秘密になっているわけではないでしょう。上の世代に聞けば、すぐにいろい
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第2015話

唯花はこの件は伯母に関わる大きな事であり、気持ちにも影響を与えているとわかっていた。そして唯花は気遣う言葉をかけた。「伯母様、少しゆっくり休まれてください。私は姫華とちょっと出かけてきます」詩乃は頷いて、娘に言った。「姫華、唯花ちゃんと遊んでらっしゃい。私のことは心配しなくていいわよ。大丈夫だから。私は波乱万丈な人生を歩んできた人間だからね」詩乃が本当に黛一族の人間で前任の当主の娘であったのだとしたら、彼女の両親と家族はみんな現当主に殺害されたことになる。彼女はその証拠を長い時間かけて集めなければならない。そうしないと現当主を法の下に裁くことはできない。しかし、この件はすでに数十年が経過しているのだから、本当に証拠を見つけ出すことなどできるだろうか?詩乃は自分に、まずは落ち着け、冷静になれと言い聞かせた。調査をして自分が本当に黛家の出身なのだとはっきりしてから、慎重に行動を起こさなければならない。「伯母様、私と姫華で出かけてきますね」唯花は立ち上がって、姫華に一緒に出ようと目配せした。姫華はかなり心配そうに母親を見ていた。「姫華、お母さんのことは心配しなくていいから」詩乃は再び娘に安心するように言い聞かせた。姫華は、母親は昔から強く自立した人だ、ということを考えていた。この件が母親に大きな衝撃を与えることは当然で、母親の出生に関わる事だが、母親はそれに押しつぶされることはないと思った。母親が本当に血塗られた深い憎しみを抱える運命にあるのなら、きっと両親に代わってその復讐を果たすだろう。娘として、母親の味方でい続ければそれで十分なのだ。「お母さん、唯花と一緒に庭で散歩してるから、何かあったら私たちを呼んでね」詩乃は笑った。「わかったわ。あなた達は遊びに行ってらっしゃい。お母さんは一人でちょっと考えるから」そして姫華と唯花は出ていった。家を出ると、姫華はすぐに携帯を取り出して父親に電話をかけた。そして口では唯花に父親の不満をもらした。「お父さんったら、最近釣りにはまっちゃって、よく朝早くに出かけて夕方遅くに帰ってくるのよ。日によっては夜になってやっと帰ってくるんだから。お母さんのこと一人にしちゃってさ」姫華の父親の航はすぐに娘からの電話に出て、小声で尋ねた。「姫華、何か用か?父さん今釣りしててね、大
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第2016話

「お母さんはたぶん、柏浜の黛家出身なの。それに、私のおじいちゃんとおばあちゃんは今の黛家当主に殺された可能性も高いわ。もし、お母さんが本当に黛家出身なら、当主はお母さんの叔母にあたる人で、親の仇になるわね」姫華は簡潔にどういうことなのか父親に説明した。航はそれを聞いて、これは一大事だと思った。するとすぐに娘に言った。「わかった、父さんは今から帰る。父さんは別に母さんと一緒に過ごしたくないんじゃなくて、母さんが川魚が美味しいって言ったから、毎日釣って食べさせてあげたいと思ってるだけだぞ」航は人生で最も妻を愛している。そんな彼が妻を放っておいて、自分の楽しみに明け暮れるわけはない。彼が最近毎日釣りに出かけているのは、妻からのそのひとことがあったからなのだ。姫華は言った。「帰る時は、安全運転でね」「わかってるよ」航はすぐに電話を切り、急いで釣竿を片付けて、妻のところに戻るために帰る準備を始めた。父親が電話を切った後、姫華は唯花に言った。「またお父さんからのろけ話を聞かされちゃったわ。お父さんが最近釣りばかりで変わっちゃったのかと思ってたら、お母さんが川魚が美味しいって言ったから毎日釣りに行ってたらしいわ」唯花は笑って言った。「お二人はとても仲良しだものね。若い頃に結婚してから今まで、まるで新婚の時みたいにラブラブだなんて、こんな夫婦になれたら羨ましいわ」幸せな家庭で、子供たちも孝行者だ。唯花は伯母は母親より幸運で、幸せだと思った。唯花はこの時、自分の両親のことを思い出していた。二人がまだ生きていていたら、伯母夫婦のように幸せに暮らし、もちろん唯花と唯月はそんな両親に孝行していることだろう。しかし残念なことに、姉妹二人が大人になりそれができる力がついた時には、すでに両親が他界して長い時間が経過していた。彼女たちが親孝行したいと思っても、それはできない。「羨ましがる必要なんてないでしょ。結城社長のことは言うまでもないじゃない。あなた達夫婦はこれからもずっと幸せで周りから羨望の目を向けられる対象であること間違いなしなんだから」「それはあなたもよ」唯花は言った。「音濱岳で過ごした数日間、桐生家の雰囲気はとっても良かったわ。うちの結城家とはあまり変わらない仲のいい一族なの。年配世代はみんな開放的な考え方を持って
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第2017話

唯花は目尻にたまっていた涙をポタリと落とした。「お母様は天国であなたとお姉さんが幸せに暮らしているのを見て、きっと喜んでくれるわ」唯花は力強く頷いた。両親があの世で、姉妹が今日このように幸せに生きていることを知れば、絶対に安心して眠りにつける。「ピンポーン……」インターフォンの音がした。唯花と姫華は庭で散歩していて、誰かが門のところにいるのが見えた。使用人が門を開けに行く必要もなく、姫華はそこに立っているのが誰なのかすぐにわかり、自分から開けに行った。唯花も彼女について行った。そこにいたのは住宅地の管理人だった。彼は大きな花束と、服が入っているらしいいくつかの袋を提げていた。「神崎さん、またあの方からこれを持っていってほしいと頼まれました」そう言うと、花束と袋を姫華に渡した。姫華は焦らずそれを受け取って尋ねた。「彼はもう帰ったんですか?」「ええ、車から降りてこれを預けるとすぐに帰って行かれました」姫華は唇を噛みしめた。これを返そうと思ってもできないからだ。彼女は仕方なく花束といくつかある袋を受け取り、管理人にお礼を言うと彼は返事をして仕事に戻った。唯花は誰からなのか気になって尋ねた。「姫華、また他の人に好かれちゃったの?これって善さんからのプレゼントじゃないよね」管理人の話からすると、姫華にプレゼントをした人物はこれが初めてではないようだ。姫華は苦笑いした。「好かれてるかどうかは私もはっきりそうだとは言えないわね。でも、そうじゃないと思うわ。これがまさにあなたに教えたいけど明凛には知られてはいけないって言ったアレよ。行きましょ、東屋の所に座ってゆっくり話すわ。だけど、これは絶対に秘密だからね。明凛には言ったらダメよ。彼女が知って旦那さんが知れば、私が困ることになるんだからね」唯花は言った。「安心して、絶対秘密にするから。明凛に知られちゃまずい大事なことを私は教えたりしないから」そして二人は東屋に行った。すると、姫華はまた執事に電話をかけて、お菓子や果物を持ってくるように伝えた。彼女は花束と袋を置いた。袋の中には弦が贈った服が入っている。しかし、彼女は着ることはできない。別に嫌いなわけではなく、サイズが合っていないからだ。弦はただ形だけこのように贈り物をしているだけ
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第2018話

唯花はかなり驚いていた。彼女は信じられないといった様子で、花束と袋を指差した。「九条弦さんが贈ってきたって?つまりあの私が知っている九条弦さんでしょ?」唯花の中で、弦は非常に近寄りがたい人物だった。実際、彼とは話をすることも難しい。唯花は結城理仁の愛妻であり、明凛の親友であることから、弦も彼女の顔を立てているだけだ。それに、弦も言っていたが、彼はパーソナリティ障害を抱えている。この世には星の数ほど女性がいるが、性的な興味が極端に薄い彼にとっては、たった一人の女性が彼の心を動かすことができるらしい。その女性が姫華であるわけがない。弦も別に初めて姫華と知り合いになったわけではない。もし、姫華が彼の運命の相手であるなら、彼が今に至るまで独身であることなどないのだ。彼の人生におけるこの結婚という一大イベントに、狂ったように焦っているのは弦の両親だ。そもそも弦が結婚していないので、彼の弟も結婚したくないと思っており、従弟たちに関しては、悟を除いて誰も結婚したいと思っていない。みんな弦が結婚していないことを盾にしている。それで弦のおじやおばたちは弦の父親である寛哉に苦情を訴えるしかなかった。寛哉は弟や妹たちの訴えを聞き、息子に結婚を迫るしかなかった。「弦さんがあなたのことを好きなわけ?」唯花はかなりの衝撃を受けた後、急いで姫華に尋ねた。「そんなわけないでしょ?確かに弦さんとはあまり会ったことはないけど、初めて知り合ったわけじゃないわ。もし、私が彼の運命の女性だっていうなら、彼は今でも独身のはずがある?」弦は善良な人間とは言えない。彼がもし、本当に気になる女性と出会ったら、絶対に有無を言わさず家に連れ帰っているはずだ。「だったら、彼がどうしてあなたにプレゼントするのよ。口説かれているように見えるけど」「彼は確かに私を口説いているけど、私が好きなわけじゃないわ。見れば一発で彼が私のことなんてなんとも思ってないことがわかるもの。一体何があったのかわからないけどね。唯花、私いつの間にか彼を怒らせるような真似をしてしまって、今仕返しされてるんじゃないかしら」姫華は自分が容易に他人を怒らせてしまう性格をしているとわかっている。だから、もしかすると、本気で無意識のうちに九条弦を怒らせるような真似をしてしまい、このように報復さ
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第2019話

唯花は少し考えてから言った。「それもそうね。善さんでもあの九条弦さんにお願いすることは難しいし彼もこのようなことをする人じゃないもんね。うちの理仁だってそれは難しい話よ。毎回彼に何か頼む時には、必ず悟さんに話をしてからだもの。姫華、弦さんが突拍子のないことをしてきても、どのみち善さんにとっては都合が良かったんでしょ。伯母様も、もう彼があなたに相応しくないなんて考えない。これであなた達はすぐにゴールインできるはずよ」唯花はかなり楽観的だった。きっと自分自身のことではないから、姫華のように焦ることはないのだ。本気で弦から好かれていないのであれば、問題はない。「だけど、これも綱渡りのようなものよ。毎日ひやひやして、いつとんでもない目に遭うかわからないんだからね」姫華はため息をついて、唯花に言った。「私ってあんまり運が良くないのかもね。特にこの『愛』には障害が多すぎだわ」理仁のことはもう言わない。あれはただ純粋に一目惚れだった。しかし、善とは相思相愛で、家柄も釣り合う仲だというのに、母親という障害があった。以前、姫華は理仁のことを好きだったが、誰からも応援してもらえなかった。彼女と善は誰が見てもお似合いなのに、理紗だけが応援してくれて、他は母親同様に遠くにお嫁に行くことを嫌がっていた。善の家も隣にあるのだから、結婚した後は毎日家に帰って食事をすることだってできる。それなのに、遠くにお嫁に行くのは反対だと言われてしまっては、姫華もどう説得すればいいのかわからなかった。「姫華、あなたと善さんが諦めなければ、絶対に良い結果になるわよ。あなただって、伯母様は今彼にかなり態度を良くしてるって言ってたでしょ。実際、伯母様は善さんは良くないなんて言ってないのよ。彼女は家族をとっても大事にしているから、あなたが遠くに行っちゃうかもしれないのが受け入れられないだけ。そこへ弦さんが関わってきたことで、伯母様も一体誰があなたに相応しい人なのか理解できたでしょ?」唯花の伯母と母親は、幼い時に家族全員を失い家なき子となる悲惨な運命を辿った。そののち、姉妹は離れ離れになってしまったのだから、伯母が家族のことを特別に大事に思うのは当然のことだ。伯母は小さい頃に家族を失い、唯一の妹とも離れてしまったうえ、二度と会うことは叶わないのだ。姫華は笑った
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第2020話

唯花と姫華が暫くおしゃべりしていると、航と玲凰が帰ってきた。父と兄が帰ってきたのを見て、姫華は唯花と一緒に家に戻った。しかし、理仁が電話をかけてきたから、唯花はすぐに神崎家を出た。神崎家からすぐに結城グループへと向かった。理仁は実は、さっき会議を終わらせて会議室から自分の社長オフィスに戻り、座ったばかりだった。その時唯花がドアをノックして入ってきた。「唯花」妻が来たのを見ると、理仁は立ち上がってデスクをぐるりと回って出てきて、唯花を迎えた。「電話で会社に来てほしいって、何か急用だった?電話で聞いても答えてくれないし」唯花は急いで神崎家を後にしてやって来た。それは理仁が電話で彼女に会社に来てくれと言ったからだ。しかし、彼に何の用なのか尋ねても、教えてくれず、唯花は不安になってすぐに駆けつけてきた。理仁は妻の手を引いてソファに座らせると、彼女のために温かいお茶を入れてお菓子と一緒に持って来た。そして笑いながらこう言った。「別に何もないよ。昼は君と一緒に食事したいなと思ってさ。時間を見たらちょうどいい時間だったから、電話して来てもらったってわけ」唯花は彼を睨みつけた。唯花は彼が何か急用があると思っていたのに、それがまさか一緒に食事をするためだけに呼び出したと言うのだ。「伯母様の家で食事の用意をしてくれていたから、あそこで一緒に食事するつもりでいたのに。私が好きな料理をたくさん作ってくれていたのよ。それがあなたから電話が来て、何も教えてくれずにすぐ来てくれって、それで急いでやって来たのに、まさかそんな……」唯花は失笑して、彼の腕をパシンッと叩いた。「本当にびっくりさせないでよね。何かあったんじゃないかって思ったんだから」理仁はぎゅっと彼女を抱きしめ、唯花の顔に何度もキスをして笑って言った。「夫と一緒に食事するのだって、一大事じゃないか。人は食べることこそ最も重要なんだからね」唯花は黙ってしまった。「唯花、もうすぐ俺たちの結婚記念日だね。何が欲しい?」理仁は彼女を抱きしめたまま離そうとしなかった。彼は彼女が自分の懐にいるのが好きだった。こうやって彼女を抱きしめていると、まるで世界の全てを手に入れたような気持ちになるのだ。「別に足りてないものもないしなぁ。足りないものがあったらあなたがくれるし。それにまだま
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