「唯花、あなたは出て行かなくていいわ。私がどうにかするから」明凛はそうひとこと言って、疾風の如くササッと店の前に行き、金城琉生を阻止した。手を広げて彼の邪魔をし、そして彼を引っ張って行った。「明凛姉さん」琉生は無理やり従姉に連れられて行き、彼は立ち止まりたいと思ったが、明凛が力いっぱい彼を車の前まで引きずっていった。「車の鍵を開けな!」明凛は冷たい顔でそう命令した。琉生は彼女を見つめ、非常に不満そうな顔をしていた。「明凛姉さん」「車を開けなさいって言ってるでしょ!」明凛は厳しい口調でまた命令した。彼女は琉生よりも頭一つ分小さいが、その勢いは彼には負けていなかった。彼女の美しい瞳は冷ややかに琉生を睨んでいた。それで琉生は思わず車の鍵を開けた。すると、明凛は車のドアを開け、彼を押して中へと押し込み、完全に彼を車に放り込んでしまった。「明凛姉さん、俺は姉さんに用があって来ただけで、唯花さんを探しに来たんじゃないんだよ」琉生は助手席に無理やり座らされ、従姉が彼のシートベルトを締めた。「座ってなさい、車から降りちゃだめよ!」明凛は彼にそう命令してから車のドアを閉め、運転席のほうへぐるりと周り車に乗り込んだ。彼女のこの動作は素早く、その一連の動作はあっという間だった。唯花がお店から出てきた時には、明凛はすでにエンジンをかけ、琉生を乗せたまま車を走らせていった。この時、唯花の表情もあまり良くはなかった。琉生にはあれだけ散々言ったのに、まだ彼女のところに来るとは、これは彼女に店を引っ越すか、それとも明凛との関係を断てということなのか?都合の良いことに、明日から高校生は冬休みに入るし、年末も近いので、彼女も店を閉めて家でハンドメイドでもしていればいい。そしてすぐ、唯花は視線を店のほうへ向け、引き続き片付けを始めた。店の前に出していたラックを一つ一つ店の中へと移動していった。明凛は速度をあげて車を走らせた。琉生は何度も口を開いて話したが、彼女はひとこともしゃべらなかった。「姉さん」琉生は少し怒った口調で言った。「俺をどこに連れて行く気?さっきから姉さんに話しかけてるのに、なんでひとことも返事してくれないんだよ。唯花さんのことは諦めろって言ってたけど、自分の従姉に用があって来てもダメだって言うの?」
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