All Chapters of 交際0日婚のツンデレ御曹司に溺愛されています: Chapter 631 - Chapter 632

632 Chapters

第631話

「牧野さん、あなたですか?」その時突然、明凛を呼ぶ声が聞こえてきた。明凛と涼太の二人は声がしたほうへ顔を向けた。唯花は淡々とお酒を飲んでいて、悟のことなど見ていないようだった。「九条さん?」こんなところで悟に会うなんて、明凛は意外に思った。悟は言い訳をした。「週末、友人たちと酒でも飲んで日頃の疲れを癒そうと思って。それがまさかこんなところで牧野さんに会うとは思ってませんでしたよ。座ってもいいですか?」明凛は笑って言った。「ここに座ってください。お友達はまだ来てないんですか?」彼女は周りを見たが、彼一人だけだった。悟は椅子に腰かけてから、唯花に挨拶をした。唯花は軽く会釈をして彼に挨拶を返した。「友人たちはもう帰りましたよ」悟はあのスケッチを見つけ、明凛に尋ねた。「これは誰が描いたんです?ちょっと見させてもらってもいいですかね?」明凛は親友のほうを見て、悟はすぐに唯花が描いたものだとわかった。唯花はこの時、お酒を飲むことにしか関心を向けておらず、ひとこともしゃべらなかった。悟は彼女が見せる気はないと思い、その紙を手に取ることはなかったが、何が描かれているのかは、はっきりと見ることができた。彼は一目でそれが理仁だとわかった。そして、心の中で呟いた。社長夫人、絵の腕前はなかなかじゃないか。理仁にそっくりだ。だが、わざわざ心臓まで描いてあり、しかもそれはとても、とても小さく描かれていた。これは……つまり心が狭い奴だと?理仁の絵の横には馬か牛であろう動物と鹿も描いてあって、その上には底が抜けた丸があるが、これはどういう意味だ?悟は絵を見て、また唯花のほうを見た。彼女の顔は真っ赤に染まっていて、目も視点が定まらない様子だった。これは彼女はもう完全に酔っぱらっている。「内海さん、この絵はあなたが描いたんですよね。とてもお上手ですね!」この絵の意味は――理仁と牛と鹿!いや、違う!悟はもう一度よくその絵を見てみた。理仁と、馬?牛?それから底の抜けたマル?悟はその絵を暫く見つめ、よく考えを巡らし、ようやくどういうことか理解したらしい。これは牛じゃなくて馬で、隣に鹿がいるから「馬鹿」そして、マルが抜けて「まぬけ」か。これは、これは!社長夫人ときたら、人を罵るにもなかなかセンスのあ
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第632話

「唯花」明凛は急いで彼女の体を支えに行った。「まらのめるわよ……」唯花は明凛に支えてもらわないといけないほどふらついているというのに、口ではまだ飲めるとぶつぶつ言っていた。悟は唯花のこの様子を見て、心の中で携帯を撮りだして、その様子を撮るのは失礼だろうと思っていた。しかし、この店には監視カメラが設置されているから、後でその映像をもらって理仁に見せればいい。このように心から好きになれる妻がいるというのに、大切にせず、いつもいつも喧嘩して冷戦状態になって、周りにいる人たちも巻き込むのだから、本当にあきれる。「唯花、酔ってるから、家まで送ってあげる」明凛は立ち上がると、悟に申し訳なさそうに言った。「九条さん、唯花が酔っぱらってしまったから、家まで送ってきますね」「牧野さんもお酒を飲んでいるから、車の運転ができないでしょう。俺は飲んでないので、あなた達を送って行きますよ」悟がここに来た目的は明凛だったので、全くお酒を飲んでいなかった。そうすれば明凛を家に送り届けるチャンスを掴めるからだ。「九条さん、ありがとうございます。でも、弟が車で来てるから大丈夫です。この子に私たちを送ってもらうために連れて来たんですよ。彼はお酒を飲んでいない、というか飲めないので。アルコール分解できない体なんですよね、この子」悟「……」わざわざここに来て、きっと明凛を家に送り届けて、好感度が上げられると思っていたのに。いくら予想したとしても、まさか明凛の弟の涼太がアルコールを受け付けない体質だったとは。それに彼がここにいるのは、この二人の女性を安全に家まで送り届けるためだったとは、もっと予想だにできなかったことだ。彼はこの時、時間を確認した。理仁がプライベートジェットで戻って来るなら、おそらくそろそろ到着する頃だろう。「唯花、帰るわよ」明凛は唯花を支えて立ち上がらせた。唯花はまだもごもごと何かを呟いていた。「まだいける……よっれないわ……このおさけ……にせものらもの……」悟「……」九条弦の店で偽物の酒を売っているわけないだろう?まあ、それも唯花が適当なことを言っているだけで、誰も彼女に文句など言わない。それがもし、他の人間であればバー・レガリスで提供されている酒が偽物だと難癖付けようものなら、店側はそいつらにデタラメを抜か
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