夢の中で、彼が彼女にいっぱい話してきたが、肝心な内容が彼女は聞きとれなかった。夢の中の唯花は彼に「聞こえないから声を大きくして」と言ったのだが、理仁はただ唇を動かすばかりで、その声が全く耳に届いてこなかった。それが非常にもどかしかった。清水は振り向いて彼女をチラッと見てから、また自分の仕事に専念した。「昨日の午後、唯月さんと陽ちゃんを先に家まで送って、昨夜もお姉さんのお宅に泊まりましたから、結城さんが戻ってきたかどうか、私は知らないんです」唯花はおでこをぽんと叩いた。「そうでしたね。清水さんは昨日家にいなかったんですよね。うう、頭が痛い。清水さん、あさりの味噌汁を作ってくれませんか。二日酔いがひどくて。もうだめ、私は鎮痛剤を飲んできます。本当に痛くてたまらないんです」唯花はくるりと出口のほうを向いてキッチンを出た。そして、何事もなかったかのように客室に入り、救急箱から鎮痛剤を取り出し、包装を開けて、薬を口に入れようとした。「頭が痛くなった?」その時、姉の声が耳に響いてきた。唯花はびっくりして手が震え、薬を落としてしまった。「寝不足だから、頭が痛いの。鎮痛剤を飲めば大丈夫よ」もう姉に見つかってしまったので、唯花はもう何も隠さず、堂々と薬を飲んだ。「もう何回も言ったでしょ。お酒を飲まないようにって。お酒に弱くてちょっと飲んだだけでも酔っちゃうくせに、いつもいつもこっそり飲んでいて。私の言うことは耳元を吹いていったそよ風と同じなのかしら?結城さんがいないからって、好き勝手に飲んでたでしょ?」唯月は心配と怒りが入り混じった表情で妹の耳を軽く引っ張った。「結城さんが帰ったら、出張に家族を連れて行けるなら、あなたを一緒に連れて行ってもらうよう頼むわよ。留守中にお酒を飲みに行かないようにね」「お姉ちゃん、彼は仕事で出張してるのよ。私がついて行っても何もできないよ。本当に二杯しか飲まなかったから、大した量じゃないでしょう」「嘘をつかないの。あなたがどれくらい飲めるか私が知らないとでも?弱いくせにいつも飲みたがって、監視する人がいなければ、絶対がぶがぶ飲むでしょ」唯月は妹を叱りながらキッチンに向かった。「清水さんにあさりの入った味噌汁を作ってもらうわね」「お姉ちゃんが私のことを大事にしているのはわかってるよ。世界
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