「ひいおばあちゃん!」あかりは唇を噛みしめ、小さな両手で紗月の指をぎゅっと握りしめた。「あかり、言ったでしょ!私はこのおばさんに面倒を見てもらいたいの!」「これ以上そんなこと言うなら、ひいおばあちゃんのこと、大嫌いになっちゃうからね!」夫人はその言葉にようやく冷ややかな表情を緩め、無理に笑みを作ってあかりを宥めた。「あかり、ひいおばあちゃんが教えたことを忘れたの?あなたは佐藤家のお嬢様なのよ。たかがメイドに、そんなに依存してはいけないわ」そう言い聞かせると、夫人は背後に控える執事に鋭い視線を送った。「あかりを外へ連れて行って、少し遊ばせておやりなさい。私は紗月さんと大事な話があるから」あかりはギュッと唇を噛んだ。子供ながらに、ひいおばあちゃんが紗月にする話が、決して良いものではないと察したのだ。彼女は細い腕で紗月にしがみつき、頑なに首を横に振った。「やだ!」「あかりは、おばさんと一緒にいるの!」「おばさんとあかりを引き離そうとする人なんて、一生大嫌いなんだから!」その遠慮のない子供の言葉に、夫人の表情はみるみる険しさを増していった。涼介がこの数年、女性を一切遠ざけていたのを見て、夫人はもう一生ひ孫を抱くことはできないと諦めかけていた。そこへ突然、あかりという存在が現れたのだ。夫人が彼女を溺愛し、宝物のように扱うのは当然のことだった。だが、どれほどあかりを可愛がっていようと、佐藤家の大奥様として絶対に譲れない一線がある。あかりにここまで身内以上の執着をさせる紗月のようなメイドは、絶対にこの家に置いておくわけにはいかない!ましてや、この女はあかりの心を掴んだだけでなく、あの涼介にまで一目置かれているのだ。数日前の火事の際、涼介はあかりが無事だとわかっているにもかかわらず、危険を顧みずに燃え盛る火の中へ飛び込み、この女を救い出した。挙句の果てには、部外者と乱闘騒ぎまで起こしたというではないか!涼介が身の危険を冒してまで女を守ろうとする姿を見たのは、夫人にとってこれが二度目だった。――前回、涼介が命懸けで守り抜こうとしたのは、「桜井紗月」という名の女だった。あの女が死んだ後、涼介は毎日部屋に閉じこもって酒を浴びるように飲み、自らの体を壊すまで荒れたのだ。当時の記憶が脳裏をよぎり、夫人の瞳に宿る冷気はさらに深まった。どんなにあ
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