会場は完全に大混乱だった。警備員が出動し、必死に秩序を取り戻そうとしている。だが今日は規模が桁違いだ。招かれたメディアの数も多すぎる。記者たちは一斉に篤志へ殺到し、真ん中に押し込めるように囲み、前にも後ろにも動けない状態に追い込んだ。身動きひとつ取れない。メディアなんてそんなものだ。ネタは、彼らにとって血の匂い。サメが嗅ぎつけたら、もう止まらない。しかも今回は、天地がひっくり返る級のスキャンダル。達也の婿であり、市長選挙で最も注目される男が、裏では私腹を肥やし、金も女も貪る害虫だった——誰もが一番の特ダネを取りたいのだ。皆、篤志を一人一口ずつ食いちぎって、骨まで残さない勢いだった。「市長、本部に連絡して増員を呼びましょうか?ちょっと手に負えません!」秘書官が慌てて古川市長に伺いを立てる。古川市長は目立たない隅に立ち、広い舞台を宿敵に譲ったまま、どこか面白がっているような笑みを浮かべた。「静かに見物していればいい。わざわざ大げさにする必要があるか?」そして目だけは鋭い。「ただし、俺と妻だけはきちんと守れ。これからもっと大きな見世物が始まって、血しぶきを浴びる羽目になったら困るからな」……事態の悪化を恐れた白石家は、会館の正面と裏口に人を増やし、出入り口を固めた。そのとき。黒いセダンが三台、凄まじい気迫で正面玄関に乗りつけた。前後ぴったり連なって停車し、空気が一段冷える。ドアが開き、スーツ姿で胸元に身分証を下げた検察官たちが、素早く降り立つ。先頭に立つのは栩。星みたいに澄んだ目を鋭く光らせ、表情は冷たく深い。家族の前で見せる軽口の男とは別人だった。その圧は息を呑むほどで、正面から目を合わせることすらためらわせる。検察の一団が雷みたいな勢いで迫ってきて、入口の警備は思わず顔を見合わせた。さすがに腰が引ける。「通してください。職務の妨げはしないでいただきたい」栩は淡々と告げる。声も顔も落ち着き払い、冷ややかだった。止められるはずがない。警備はへこへこしながら道を開けた。ホールに足を踏み入れた瞬間、栩は左耳のBluetoothイヤホンに触れ、桜子へ連絡する。「桜子、入ったぞ」「え?こんなにすんなり?ちょっと意外なんだけど」桜子の声には、少しだけ驚きが混じっていた。「へ……俺が誰のために動いてると思
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