皆が入札を止めた。 桜子は目を輝かせて、初めての好調なスタートに満足していた。 「1億4000万」 後ろの方から、落ち着いた、響きのある声が突如として会場に響いた。 桜子の呼吸が一瞬止まり、顔に浮かんでいた笑顔がすぐに消えた。 周囲の人々も驚きの声をあげた。 「これは、宮沢グループの隼人社長だ!」 「えっ、いつ来たの?まるで忍者みたいに突然現れた!」 「控えめだけど、何か高貴な雰囲気が漂っているな」 隼人は手にした札を高く掲げ、冷徹な表情を浮かべて堂々としていた。その姿からは、絶対に負けないという自信が伝わってくる。 だが、桜子は一度も振り返らず、彼を無視した。 1億4000万でネックレスを手に入れたとしても、桜子からの一瞥さえ得られないのか。 どうやら、もっとお金を積まなければならないようだ。 「1億4000万、このネックレスにはちょっと値が張りすぎだろう。お金があっても、こういう使い方はどうかと思う」 エースはその行動に不快感を覚え、首をかしげた。 「こんな愚かな金持ちが増えれば、貧困地域の子どもたちに希望が与えられるかもしれないな」 桜子は唇をわずかに引き上げ、心の中で隼人に対して激しく罵倒していた。 「おめでとうございます、宮沢グループの隼人社長!慈善活動へのご支援、感謝申し上げます!」 オークションの司会者がハンマーを振り下ろし、会場が拍手で包まれた。 カメラが隼人を映し出したとき、彼は薄く微笑み、冷たい返答をしていた。 その近くにいた隆一は、眼鏡を軽く押し上げると、冷ややかな目で隼人を見つめていた。 オークションは順調に進んでいた。寄付された宝石は次々と高値で落札され、宮沢秦も象徴的に1点購入した。 だが、桜子が最も不快に感じたのは、隼人が値段が上がらない宝石をわざと高額で買い続けていたことだ。 わずか1時間の間に、隼人はすでに3つの宝石を購入し、6億円以上を費やしていた! 桜子は顔をしかめ、あの男をこの会場から追い出したい衝動に駆られた。 その時、また価値が低い宝石が隼人によって落札された。周囲の人々がざわつき始めた。 「こんなもの、8000万の価値があるのか?隼人社長、宝石を見極める目が足りないん
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