「......彼も私に会いたいって?」澪音が戻って知らせた言葉に、弥生は目を瞬いた。「ええ。でも霧島さん......弘次さんの様子がいつもと少し違うように見えました」考えごとをしていた弥生は、その言葉に顔を向けた。「どう違うの?」澪音はうなずいた。「はい。話し方も表情も、普段と少し違うように感じました」弥生は唇をかすかに噛んだ。言われてみれば確かにそうかもしれない。ここ何日も彼女は弘次に会おうとせず、言葉をかけられても無視を貫いてきた。彼女の多くの時間は眠りの中で過ぎ、弘次が訪ねても、彼女は視線すら向けなかった。それでも彼はただ黙って傍に立ち続けた。ときに三十分、ときに一時間、時には半日立ち尽くしていたことさえあった。澪音から聞かされた初めて、弥生がそれらのことを知ったのだ。そんな彼が今になって突然会いたいと言った。まさか、彼もついに堪えきれず、何かを切り出そうとしているのだろうか。澪音は弥生の着替えを手伝った。弥生はグレーのコートを羽織り、長い髪をまとめ上げると、見違えるほどすっきりとした印象になった。食事を取るようになったとはいえ、体はまだ回復していない。寒さもあって、顔色は白くて唇にも血の気がない。最初、弥生は歩いて行こうとした。だが弘次が車椅子を用意し、座るようと言った。「私は歩けるのに......」躊躇している彼女に、澪音は言った。「霧島さん、この数日はろくに食べられていないので体力が落ちています。歩くより、車椅子で移動した方が楽です。無理しない方がいいですよ」その意図を悟った弥生は、静かにうなずいた。「......分かったわ」実際に座ってみると、長く立っているときに覚える眩暈が軽くなり、車椅子は思いのほか助かった。長い準備の時間を経て、澪音に車椅子を押されて外へ出ると、すでに夜の帳が降りていた。「外で......会うの?」弥生は驚きに声を漏らした。澪音も首をかしげた。「私も家の中だと思っていました。出てみたら外だと聞かされて......しかも住所を見ると、屋上のようです」「......屋上?」その言葉に、弥生の心臓は大きく跳ねた。屋上での面会、何のために?胸がざわめき、手は車椅子の肘掛けをぎゅっと握った。「霧島さん、
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