瑛介は酒を飲んでいない、熱もないのに全身が熱くなっている理由に気づいたとき、弥生は思わずごくりと唾を飲み込んだ。驚きのせいか、唇がわずかに開き、少ししてからそっと下唇を噛んだ。「それで?自分でこういう状態だってわかってるのに、私のところに来て何をしようっていうの?」抱きしめたままの瑛介は、しばらく沈黙した後、ようやく口を開いた。「......わからない」その声は、どこか迷子のような響きだった。「君以外......誰に頼ればいいのか、わからなかった」そう言い終えると、彼はさらに彼女を強く抱きしめ、目を閉じて弥生の首筋に顔を埋めた。耐え難いこの衝動のなか、彼女のぬくもりと香りだけが、かろうじて彼を落ち着かせた。少なくとも、今そばにいるのが彼女だということが救いだった。「頼る相手がいないからって、私のところに来たの?」「違う......」瑛介の声はすでに理性を失いかけており、途切れ途切れに続けて言った。「君だけに......会いたかった」弥生は少し怒り、そして少し呆れた。「私のところに来て何になるの?私たちの関係で、私が君を助けるとでも思った?」そう言って、弥生は両手を彼の胸に当て、力いっぱい突き放した。瑛介はよろめいて二歩後ろに下がり、壁にもたれた。目を伏せ、顔は赤く、抑えきれない衝動に必死で耐えているその姿は、まるで傷ついた子犬のようだった。最初は熱かと思ったが、まさかこんなことになっていたとは......自分がこんな風に仕掛けられるなんて......まったく情けない。「行くあてなんてどこでもいいでしょうよ。そんなふうに私に頼って、その場で穴でも掘って自分を埋めちゃいなさいよ!」鋭い言葉を投げつけ、弥生はさっと家の中に入り、ドアをバタンと閉めた。ドアが閉まる音は廊下に響き、音が消えたあとは、しんとした静けさが残った。あとは、瑛介の荒く抑えきれない呼吸音だけが廊下に残った。「その場で穴でも掘って自分を埋めちゃいなさいよ!」苦しみながらも、瑛介の耳にはしっかりその言葉が届いていた。こんな自分を見たら、彼女が怒り失望するのも当然だろう。いや、彼自身もこんな自分には失望していた。でも、命の恩って一体どうやって返せばいい?たぶん、彼にはもう、彼女を手に入れる資
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