「冬城社長にお返しするものがあります」真奈は無表情のまま、シャツからブローチを外した。その胡蝶蘭のブローチ。誰が贈ってくれたのか、ずっと考えていた。長い間考えた末、行き着いた答えは冬城、ただ一人だった。冬城は真奈の手から床に滑り落ちたブローチを一瞥し、その瞳を微かに震わせた。だが彼はすぐにいつもの冷静さを取り戻し、淡々と言った。「見覚えがないものだ。瀬川社長の勘違いだろう」「そう……私の勘違いかもしれませんね」真奈の表情は穏やかだった。冬城はゆえの手を引き、背を向けて会議室を出て行った。床に投げ捨てられたブローチを、真奈は二度と見ようとはしなかった。彼女は室内の株主と取引先に向き直った。「皆様、ご支援に感謝します。はっきり申し上げておきますが、瀬川家の令嬢は私ただ一人。Mグループのトップも私一人です。もし別の道を歩みたいなら、今日このドアを出て行ってください。それでお別れです。ですが、もし私を信じてくださるなら、私はその信頼に必ず報いてみせます」真奈は静かに告げた。「去るも残るも、皆様次第です」「俺は残る!冬城がどこの誰とも知れない女を連れてきて、瀬川家の令嬢だとまで言い張り、さらにはMグループをよこせとは、図々しいにもほどがある!そんなこと認めない!」「その通りだ!我々が認めているのは瀬川社長という人間だ。瀬川家の令嬢という肩書きじゃない!」「あの時、瀬川社長がいなかったら、俺たちはとっくに路頭に迷っていた!瀬川家が危機の時には姿も見せなかったくせに、景気が良くなった途端に戻ってきて分け前を寄こせだなんて、そんな虫のいい話があるか!」……周囲から支持する声が次々と上がり、取引先たちも動揺し始めた。その時、外から数人の経営者が入ってきた。「私は瀬川さんを支持します!」その声は力強く響いた。彼らの家柄は大きくはないが、この業界では義理堅いことで知られていた。七瀬社長は旧友の高田社長の姿を認めると、急いで駆け寄った。「青葉!どうして……」「瀬川さんを支持するんだ!」青葉社長は七瀬社長を見て言った。「七瀬、俺たち十年以上の付き合いだ。俺の目に狂いはない。忘れたのか、昔瀬川さんはお前を助けてくれただろう。お前は言っただろう。瀬川さんは良い人だが、惜しむらくは女だと。だが俺は思うんだ。
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