All Chapters of 離婚協議の後、妻は電撃再婚した: Chapter 1371 - Chapter 1380

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第1371話

「目的のためなら、使える人間は誰でも使う」冬城の声は冷ややかだった。「他に用がないなら切る」「もしいつか、『瀬川真奈を殺せ』と言ったら、やるか?」電話の向こうの男は、試すような口調で問いかけた。冬城は冷淡に答えた。「とっくに俺のものではない女だ。情けをかける理由がない」「いいだろう、その言葉を忘れるな」相手は電話を切った。冬城は通話の切れた携帯を見つめ、福本英明からの十数件の不在着信に目をやった。冬城の眉間に深い皺が刻まれる。真奈……そう簡単に負けないでくれよ。一方、佐藤邸では。福本英明は居ても立ってもいられない様子で、その場を行ったり来たりしていた。一体どうなってるんだ?冬城の野郎!電話に出ないなんて!福本英明は再び冬城に電話をかけたが、着信拒否されていることに気づいた。「クソ!二度とてお前の話なんか信じるかよ!」そう言うと、福本英明は携帯を放り投げた。「この人でなしが!」そこへ、福本英明を訪ねてきた福本陽子がドアを開け、その光景を目撃した。福本陽子は驚いた。「兄さん、どうしたの?」一瞬見せた福本英明の表情は、陰鬱そのものだった。陽子の姿を認めると、福本英明は気持ちを切り替え、努めて平静に言った。「いや、瀬川お嬢様の件で腹が立ってな。お前には関係ないことだ。自分で何とかするから気にするな」「でも、さっき真奈はもう下に行ったし、大丈夫なんじゃない?彼女は知恵が回るし、絶対損なんてしない子だよ。兄さんも良かれと思ってやったんだから、気にしなくていいって」福本陽子が袖を引っ張ると、福本英明はようやく溜息をついて言った。「わかったよ、お前の顔に免じて怒るのはやめる」「そうこなくっちゃ」福本陽子はにやっと笑って言った。「ねえ、私がパパに電話してみたらどう?パパは私に甘いから、頼めばきっと真奈を助けてくれるわよ!」「あの人?俺たちを連れ戻しに来てないだけでも奇跡なのに、助けてくれるわけないだろ。甘い考えだな」「でも……」福本英明は苛立ちを募らせ、福本陽子を部屋から押し出しながら言った。「わかったわかった、頼むから一人にしてくれ。俺が撒いた種なんだ、どうやって瀬川お嬢様を助けるか考えさせてくれよ」「兄さん!」福本陽子の言葉も待たずに、福本英明はバタンとドアを閉
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第1372話

話し終えると、佐藤茂は再び真奈に目を向けて尋ねる。「青山から聞いたが、三階の屋根裏を見に行ったそうだ」「……ええ、見に行ったの」「何か見つけたのか?」真奈は目を伏せて言った。「古い物ばかりだったわ。ごめんなさい、佐藤さん。私の一時の気まぐれ」佐藤茂はそれ以上追求せず、真奈が身に纏った純白のサテンドレスに目を向けて尋ねた。「そのような装いで、お出かけか?」「記者会見を開いて、片付けなきゃいけないことがあって」佐藤茂は薄く笑みを浮かべて言った。「ネット上の騒ぎは多少耳に入っている。大したことではないでしょうが、もし佐藤家の力が必要なら、いつでも手配させるよ」「大したことではないので、自分で解決できる。佐藤さんに手を煩わせるつもりはない」真奈は言った。「佐藤さん……お大事に。私はこれで失礼するわ」「ああ」佐藤茂は頷いた。真奈はドアに向かって数歩進んだが、やはり立ち止まった。真奈の躊躇いを見て取ったのか、茂が声をかけた。「まだ何か、俺に言いたいことでも?」「私……夢を見たの」「夢?」「夢の中で、私、昔この佐藤家で暮らしていたみたいで。三階の屋根裏はとても可愛いお姫様の部屋で、優しいお兄さんがそばにいて、よくお話をしてくれたような気がするの」真奈は聞きたかった。佐藤茂は何か知っているのではないかと。あるいは、その「お兄さん」は佐藤茂なのではないかと。だが真奈が振り返ると、佐藤茂は変わらず穏やかな笑みを浮かべていた。「ただの夢だ。瀬川さんが考えすぎだ。子供の頃、君に会ったことはないはずだ」「……そうね。ただの夢だから、きっと私の思い過ごしね」真奈は少し腑に落ちた。佐藤茂が会ったことがないと言うなら、あれはやはり夢だったのだろう。真奈が立ち去ると、佐藤茂の顔から徐々に笑みが消えていった。「旦那様、お休みください」「ああ」佐藤茂はベッドの背にもたれかかり、力なく呟いた。「休まないとな」その姿を見て、青山は胸を痛めた。旦那様こそが誰よりも真奈のことを理解しているというのに、毎回わざと他人行儀に振る舞い、礼儀正しい言葉を使うたびに、二人の距離を遠ざけている。「佐藤さん」「瀬川さん」と呼び合う姿は、まるで何の関わりもない、ただの一時的な協力者のようだった。佐藤邸の外。真奈は車に
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第1373話

「冬城と望月ゆえが遊びたいなら、私たちも付き合ってあげましょう」真奈の声には笑いが滲んでいた。車はすぐにロイヤルホテルの入口に停まり、記者たちはすでに外で待ち構えていた。真奈と黒澤が車から降りるのを見ると、フラッシュが止むことはなかった。「瀬川さん!最近ネット上で話題の真偽令嬢について、何か説明はありますか?」「望月ゆえさんは本当に瀬川家の真の令嬢なのですか?」「ネットでゆえさんを誹謗中傷したのは、瀬川さんですか?」……記者たちの質問は次々と鋭く、真奈の口から真相を聞き出そうとしていた。だが真奈は一言も発せず、傍らの黒澤が冷たい視線を記者たちに向けた。その視線だけで、全ての記者の動きが止まり、背筋が凍るような感覚を覚えた。伊藤が言った。「記者会見はすぐ始まる!質問は会見でどうぞ!瀬川お嬢様が一つ一つ答える!」伊藤はこの業界で顔が広く、記者たちにも好かれていた。彼が話すと、記者たちは大人しく混雑を作らず、順番にホテルの入口へと入っていった。その頃、向かいの望月グループのビルでは。冬城はオフィスの窓からロイヤルホテルの様子を見下ろし、瞳を細めた。ちょうどその時、中井がドアから入ってきて言った。「冬城社長、準備は整いました。記者たちも到着しています。テープカットに行かれますか?」「いや、もう少し待て」「まだお待ちすますか?」「瀬川さんと黒澤さんが来たんじゃないが」冬城は言った。「これは我々への宣戦布告だ」「では……」「何とかして、向こうの記者を一人残らず奪い取れ」「ですが、向こうも同じ手を考えているのでは?」「なら、どちらが一枚上手か見せてやろう」その時、ドアが開いてゆえが入ってきた。ゆえはゴールドのロングドレスを身にまとい、その姿は高貴で優雅そのものだった。真奈に瓜二つの顔に薄い笑みを浮かべ、こう言った。「冬城グループは海城のトップでしょう?こんな風に話題をさらわれるなんて、みっともないわね」「望月さん」中井が脇に控えた。ゆえはその呼び名が気に入らなかったらしく、眉を吊り上げて言った。「冬城夫人と呼んでちょうだい」そう言いながら、ゆえは冬城の腕に絡みつき、艶めいた声で囁いた。「司、情けをかけちゃ駄目よ?」「敵に情けなどかけない」冬城の声は冷徹だ
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第1374話

冬城の手口はいつも同じで、真奈にはとっくにお見通しだった。「向こうに大ニュースがあるなら、私たちにだってあるはずでしょう?」真奈は言った。「ニュースの価値は話題性、どちらがよりスキャンダラスかで決まる。この点において、私たちには最強のプロがついているもの」「プロって誰?」幸江の言葉が終わらないうちに、ドアの外から福本英明の声が響いた。「もちろん俺だ」幸江が振り返ると、いつの間にか来ていた福本英明が立っていた。伊藤が言った。「福本社長、どうしてここに?」「もちろん瀬川お嬢様を助けに来たんだ!」福本英明が指を鳴らすと、新興新聞社の記者たちが続々と入ってきた。それは彼がこの業界で築いた人脈の全てだった。ここにいるのは、引退した伝説のパパラッチで、業界の大スクープを数多く暴いてきた人物。かつて有名雑誌の編集長を務め、数々の販売記録を打ち立てた者もいる。業界で最も著名な記者チーム、最先端の情報網を持つプロたち。こうして一列に並んだ彼らは、それだけで壮観な光景だった。福本英明は言った。「ここにいる一人一人が、金を出しても呼べないような報道界の大物だ。彼らがここに集まれば、他の記者も釣られて駆けつけるに決まってる」福本英明のこの手腕を見て、幸江と伊藤は思わず親指を立てた。今の海城で、ここまでできるのは福本英明だけだ!その時、福本陽子も入ってきて言った。「海外は私たち福本家の庭よ。望月ゆえなんて簡単に調べられるわ。これがゆえに関する全ての資料だわ」福本陽子は資料を幸江と伊藤の前に広げた。幸江は驚いて尋ねた。「こんな資料、どうやって手に入れたの?こんなに早く?」「海外の社交界なんて狭いものよ。望月ゆえが望月家に養子に入ったと言っても、十数年も家に閉じこもっていたわけないでしょう?海外の社交界にいる私の友達が知らないわけないわ」福本陽子は続ける。「私が得た最新情報では、彼女たちは望月家に娘がいることすら聞いたことがないって。それに海外の美容医療業界を徹底的に洗って、立花グループの主治医に問い合わせたら、この望月ゆえが病院で整形手術を受けたことが判明したの。ただ整形時期は半年前で、これが彼女の元の顔よ」陽子は入手した一次資料を全てテーブルの上に広げた。写真には整った顔立ちの女性が写っており、顔の輪郭は
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第1375話

ゆえは会場の控え室で化粧直しをしていたが、外の騒ぎを耳にして眉をひそめ、「入口で何があったの?」と尋ねた。「望月社長、例の記者たちです。みんな隣へ行ってしまいました」「隣に行ったって?」ゆえは立ち上がり、会場を見渡した。案の定、会場に残っているのはカメラを抱えた数人の三流カメラマンだけで、さっきまでいた芸能記者たちはどこかへ消え失せていた。「みんなは?どうして急に隣なんかへ?」ゆえの声には、相手を責め立てるような響きがあった。テープカットまで、あと五分しか残っていなかった。このタイミングで真奈が策を弄して記者を全員引き抜いたのなら、こちらのテープカットは誰もいない惨状になってしまう。「冬城司!彼はどこなの?」ゆえは苛立ちを抑えきれずに辺りを見回したが、冬城の姿はどこにもなかった。こんな大事な時に、冬城はどこへ行ったというの?もしテープカットに記者が一人もいなければ、わざわざこの日を選んで会社を立ち上げた意味がない。「望月社長!確認できました!瀬川真奈がどこからか報道界の大物を呼び寄せて場を盛り上げているらしく、芸能記者たちはそれを聞きつけて全員あっちへ走ったようです!」「何?瀬川真奈は前もって手を打っていたの?」ゆえは呆然とした。彼女はここ数日、真奈が令嬢の真偽騒動で混乱しているに違いないと思い込んでいた。だが今の様子を見る限り、困っているようには見えない。まさか、以前佐藤邸で病気だと言っていたのは、全部演技だったの?ゆえが考え込んでいると、冬城が二階から降りてきた。冬城の姿を見ると、ゆえはすぐに駆け寄って言った。「今までどこにいたの?瀬川真奈たちが……」「知っている」取り乱すゆえとは対照的に、冬城は冷静だった。「真奈が呼んだ連中はただ者じゃない。今回は、大人しく負けを認めろ」冬城に負けを認めろと言われ、ゆえは思わず拳を握りしめた。今回は真奈との初めての直接対決だ。みすみす後れを取りたくはない。ゆえが不服そうなのを見て、冬城は彼女の耳元に唇を寄せ、低い声で囁いた。「偽物は所詮偽物だ。自分の立場を弁えろ」その言葉に、ゆえは唇を噛んだ。冬城はすでに部下を連れて立ち去っていた。一方、こちらでは、真奈が記者たちの集まり具合を確認し、腕時計に目を落とした。時間ぴったりだ
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第1376話

大型スクリーンには望月ゆえの整形前後の比較写真が映し出された。今回は非常に詳細で、初診や再診の日時、最終的な術後写真、さらに整形前のプライベート写真まで網羅されていた。彼女のいわゆる養父である海外望月家の当主についても、資料には事細かに記されていた。これで望月ゆえが偽令嬢であることは、ほぼ確定した。その時、一人の記者が質問を投げかけた。「本日、新興新聞社が出した記事に虚偽の疑いが出ていますが、これは瀬川さんの指示によるものでしょうか?」記事の捏造疑惑について触れられ、福本英明が思わず立ち上がろうとした。だが真奈は余裕の笑みで答えた。「あの記事は、友人が私の名誉を守ろうと熱くなって出してしまったものです。内容は裏付けを取っておらず、第三者から提供された資料をそのまま掲載してしまいました。友人はその資料を信じ込み、まんまと罠に嵌められたのです。詳細を知りたい方は、会見後にいらしてください。資料をお配りします。その第三者がどんな手口を使い、何を企んでいたか、皆様の目でお確かめください」真奈は、ほぼ名指しで反論したも同然だった。その意図は明白だ。これは冬城が仕掛けた罠だということだ。それを聞いた記者が尋ねた。「では、瀬川さんこそが本物の令嬢だと、どう証明なさいますか?」「望月さんが瀬川家の令嬢を名乗っていることには、私も困惑しました。瀬川グループは一年前に事実上解体し、私がMグループに吸収合併させていますから。彼女が何を求めているのか理解に苦しみます。ですが、彼女がそう名乗る以上、証拠を提示すべきは彼女の方であって、私が自分を証明する必要はありません。そう思いませんか?」真奈は微笑んで続けた。「今、彼女の整形の証拠は提示しました。あとは皆様で裏を取っていただければ分かります。望月さんには……精査に耐えうる確実な証拠で身の潔白を証明していただきたい。さもなければ、私は望月さんと冬城グループを名誉毀損で訴えるつもりです」そう言い切ると、真奈は席を立った。「本日の会見は以上です。今後、同様の紛争が続くようであれば、法的な措置を取らせていただきます」言い終えると、真奈はきびすを返して立ち去った。黒澤が、真奈の背中を守るように付き従う。記者たちはまだ質問したそうだったが、福本英明が手配した人間たちがそれを遮った。「質問なら我
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第1377話

望月グループ社内。「冬城司はちっとも助けてくれませんでした!最初から裏切るつもりだったに違いありません!ボス、今日の計画が失敗したのは、全部彼のせいです!」ゆえは冬城を指差した。冬城の眉がわずかに動いた。ほんの一瞬だったが、彼の不満が見て取れた。デスクに座る男はスーツで身を固め、その背筋は伸びていた。だが、白い仮面の下の表情は読み取れない。彼は低い声で言った。「そうなのか?」追及されても、冬城はただ冷笑するだけだった。「あんな子供騙しで、海城における真奈の地位が揺らぐはずがない。彼女には黒澤と佐藤がついている。あの二人が生きている限り、真奈のMグループは潰れない。我々と対等に渡り合ってくるだろう」そう言いながら、冬城はゆえに視線を移した。「はっきり言わせてもらうが、こいつは役立たずだ。顔が少し真奈に似ているだけで、他には何の取り柄もない」「あなた!」ゆえは怒りに震えて冬城を睨みつけた。掴みかかりたい衝動に駆られたが、傍らの男を恐れて手が出せない。「冬城司、あなたまだ瀬川真奈に未練があるんでしょ!彼女に情けをかけたから、私の情報があっさり向こうに渡ったのよ!あなたが情報を漏らしたに決まってるわ!」「黙れ!」男は冷ややかに言い放った。「望月ゆえ、もうお前の出番は終わりだ。さっさと出て行け!」その声には抗いがたい威圧感があり、ゆえは全身を震わせた。ボスの前で告げ口をするくらいはできても。「出て行け」と言われれば、従うしかなかった。ゆえは必死に怒りを飲み込み、「はい、ボス」と答えた。ゆえはオフィスを後にした。オフィスには男と冬城の二人だけが残された。冬城は男を見据えて言った。「俺を信用しないなら、証明してみせてもいい」「どうやって?」「俺の手で彼女を殺す」それを聞くと男は立ち上がり、高笑いした。彼は冬城の肩を叩き、「まだそこまでする必要はない」と言った。「なぜだ?」「瀬川真奈は役に立つ。四大家族の若造たちもな。海城に眠る秘宝は彼らに解かせればいい。我々はただ、漁夫の利を得るだけでいいんだ」「海城の秘宝とは、一体何なんだ?」冬城の問いかけに、男は彼を見つめ、しばし沈黙してから意味深長に言った。「その時が来れば、わかる」一方、佐藤邸では――青山がドアを開けて言った。「旦那
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第1378話

真奈の特別なところ……それは他の誰でもない、佐藤茂だけがよく知っている。「旦那様、冬城社長に礼を言っておきましょうか?」「今は、彼と接触しないほうがいい」佐藤茂は言った。「相手が漁夫の利を得ようというのなら、望み通りにさせてやろうじゃないか。我々が秘宝のありかを見つけてやるんだ」「ですがそうなれば、海城は大混乱に陥りませんか?」「もう十分に乱れている」佐藤茂は眉をひそめて言った。「この大騒動に、さらに油を注いでやろう」夜が更けてきた。真奈たちは佐藤邸に戻った。青山は一行が戻ってきたのを見て、出迎えた。「瀬川さん、黒澤様」「青山、何しに行くの?」幸江が近寄って見ると、青山は様々な巻物を抱えていた。どれも古びていて、埃を被っている。青山は手元の巻物に目を落として言った。「これですか。旧市街の地図ですよ、何十年も前の。旦那様がカビ臭いから虫干しするようにと仰ったので、明日の朝干そうと思って出してきたんです」「旧市街の地図?」福本英明は興味津々な顔で言った。「見せてくれよ!」「兄さん!何でも見たがるんだから。汚いわよ!」「ちょっと見せてよ!こんな古いものこそ価値があるんだ!」福本英明が見たがっているのを見て、青山も拒むことはしなかった。「では広げますから、ご自由にご覧ください。ただ埃っぽいので、眺める程度になさってくださいね」「やった!」福本英明は宝物でも見るような目で、青山の手にある巻物を見つめた。「佐藤家にはお宝が多いって聞いてたけど、ようやく拝めたぜ」福本英明は手をこすり合わせた。青山が巻物を広げると、そこには確かに数十年前の旧市街の様子が描かれていた。当時の海城もそれなりに発展していたが、今とは比べものにならなかった。青山の広げた旧市街の地図では、市街地以外は一面の荒地や田んぼばかりだった。「うわっ、古すぎだろこれ」福本英明が言った。「数十年前の海城って、こんなに何にもなかったのか?」「何言ってんだ」伊藤は福本英明の頭をはたいて言った。「海城が経済発展したのはここ数十年の話だぞ。それにしても、ここまで貧相だったとは信じられないな。青山、地図を間違えたんじゃないか?」「これは開発前の旧市街の姿です。背後は山、前は海。当時は海沿いに小さな漁村がたくさんありました」
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第1379話

真奈は、皆の視線が自分に集まっているのを見た。彼女は眉をひそめ、「みんな、あの帳簿を覚えてる?」と言った。「覚えてるよ」「帳簿には、日常の品目以外は数字しか書かれていなかったわ」真奈は言った。「もしあの四冊の帳簿が本当に宝の地図だとしたら……あの数字は、地理座標なんじゃないかしら?」幸江は言った。「あんなにたくさんの座標があるわけないでしょ」「いや」黒澤は眉をひそめ、低い声で言った。「あり得る」伊藤が尋ねる。「どういうこと?」黒澤は言った。「北緯三十一度、東経百二十一度は赤道を基準にした海城の座標だが、海城には独自の座標系もある」真奈は言った。「海城は東経百二十度五十二分から百二十二度十二分、北緯三十度四十分から三十一度五十三分の間に位置しているの。百二十と三十という数字、見覚えがない?」幸江は手を叩き、「その二つの数字、帳簿に繰り返し出てきたわ!最後には赤でマークされてた!」と言った。「もしこの数字が、海城の中心を基準とした地理的方位を示しているとしたら?」「三十……百二十……」幸江は呟いた。「だとしたら、この山しかないわね」そう言いながら、幸江は郊外の山脈を指差した。そこには【30、120】の数字が特別に記されていた。幸江は不思議そうに言った。「でもこの山、もう切り崩されて平地になったんじゃなかった?」「山がなくなっても、その下に宝が埋まっている可能性はあるわ。以前、皇室が遭難して、宝物はすべて山の下に埋められたって話じゃなかった?」真奈は続く。「佐藤家が当時あれだけの大金を使ったのは、情報拠点の修繕じゃなくて、山を動かすためだった可能性が高いわね」「本当にそうなの?じゃあ私たちは宝のありかを突き止めたってこと?」幸江は急に興奮し出した。傍らにいた福本陽子でさえ、話に聞き入っていた。宝物だ。ドラマや映画でしか見たことのない、現実ではあり得ないような大冒険!誰だって興奮せずにいられないだろ?皆が宝を見つけたと喜んでいる隙に、青山は微笑み、隅で盗み聞きしている唐橋に視線を向けた。青山の瞳の奥の笑みが、さらに深まった。「遼介、明日……行きましょう」真奈は黒澤の手を握った。黒澤は軽く頷き、「ああ」と言った。「俺も行く!俺も!」「私も行きたいの!」翌日宝探し
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第1380話

明日の山への探索は、決して平穏なものにはならないだろう。黒澤は真奈の懸念を察し、彼女の手を握った。「心配するな。十分な部下を連れて行く、みんなの安全は俺が保証する」「わかった」真奈は即座に答えた。どうやら、彼らも万全の準備を整える必要があるようだ。その夜、真奈は佐藤茂の部屋のドアを叩いた。「入っていい」佐藤茂の声は淡々としていた。真奈がドアを開けると、佐藤茂が一人で囲碁を打っている姿が見えた。部屋には薄暗い灯り一つだけがともり、どこか不気味な雰囲気が漂っていた。「佐藤さん」「何を聞きたいかは分かっている」佐藤茂は顔を上げて言った。「知りたいだろう、あの背後にいる人物が誰なのかを」真奈は眉をひそめ、「あの山には、本当に宝物があるの?」と尋ねた。「わからない」佐藤茂の答えに、真奈の眉間の皺が深くなった。「わからないの?」「あの山は、数十年前に先祖が五年かけて切り開いたものだ。その後、長年放置され、次第に荒れ果てていった。今ではただの平凡な山道に過ぎない。人をやって探させたが……何も見つからなかった」「ということは、佐藤さんは最初から、この山が宝のありかである可能性を知ってたのね?」真奈は続ける。「あなたは多くの秘密を知っていながら、多くを隠し続けてきた。佐藤さん、あなたの言葉は七割が嘘だわ。どれが真実で、どれが嘘なのか見当もつかない。今回だって、どんな目的があるの?あなたのやり方は私たちを傷つけるものなの?それとも私たちをただの駒としか見ていないの?」その言葉に、佐藤茂の手が止まった。真奈は言った。「佐藤さんのことは尊敬しているよ。でも……あなたの手駒になるつもりはない。私は誰にも操られたくない」そう言い残し、真奈はきびすを返して部屋を出て行った。佐藤茂はうつむき、手にした碁石を見つめながら、ふっと笑った。胸を鋭利な刃で貫かれたような痛みに、息もできないほどだったが。結局、彼はまた盤の上に碁石を置いた。誰にも操られたくないか……そういう覚悟があるなら、それでいい。翌朝早く。皆が早起きした。ここから郊外まで車で行くには、どうしても二時間はかかる。運転手の伊藤はげっそりしていたが、他の者たちは上機嫌だった。「なんでまた俺が運転なんだ!」伊藤は今回ミニバ
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