All Chapters of 情熱的なあなたに抱かれ私は甘い夢を見る~新人看護師は無敵な外科医にしつけられてます~: Chapter 111 - Chapter 120

140 Chapters

3 ふたりの未来への1歩

「もっと激しくしてやる。覚悟して」毎回、私を狂わせるくらい、蒼真さんに攻められる。こんなにも激しくしつけられて、私は……あなたという底の無い沼から抜けられなくなってしまった。「蒼真さん、そこ、気持ちいいです」「本当?こんなところがいいんだ。また1つ感じる場所が増えたな。藍花の体はしつけがいがある。触れれば触れる程に敏感になって……。じゃあ、ここは?」どんどんあなたにハマる感覚を、私はこの上ない「幸せ」だと思える。この人だけの物になりたい。私の全部を蒼真さんにあげたい。離れたく……ない。心から強く思った。「ずっと一緒だ」「……はい。嬉しい……です」温かな胸に抱かれ、お互いの肌が触れ、私達は愛に満ちた最高の世界にいつまでも身を置いた。***そして、月日は流れ、私は体の異変に気づいた。すぐに病院に行く。予想は的中していた。私は、蒼真さんとの子どもを授かった――感動で涙が溢れ、止まらなかった。いつかはもしかして……と思っていた。勢いでそのまま抱かれた時もあったし、でも、気をつけようなんて、お互い言わなかった。だから、当たり前と言えば……当たり前だった。私はこの状況をすごく嬉しく思ったけれど、蒼真さんはどうなんだろう?もしかして私はフラレるのだろうか?そう思ったら心底怖くなった。そんなことはない、絶対に蒼真さんは私のことを大事にしてくれる。きっと、大丈夫――それにしてもいつ話そうか?頭の中にいろんな思いが巡る。確かに不安は拭いきれない。私は、蒼真さんの部屋に招かれた日、ちゃんと打ち明けようと決意した。いつものように食事をしてから、ドキドキしながら話を切り出した。「あの……蒼真さん」「ん?」こちらに顔を向け、蒼真さんは私をじっと見た。「あっ、あの。えっと……」かなり不安げな表情だったのか、蒼真さんは心配そうに眉間に皺を寄せた。「大丈夫?落ち着いて。ゆっくりでいいから何があったのか話して」「……は、はい」
last updateLast Updated : 2025-04-13
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4 ふたりの未来への1歩

「……藍花」それでもなかなか切り出せない私に、優しく呼びかけてくれた。その思いに背中を押され、私は口を開いた。「蒼真さんとの子ども……あ、赤ちゃんが私のお腹にいます」「……」数秒の沈黙。私は蒼真さんの表情を確かめるのが怖くて、下を向きながら続けた。「あっ、でも、もし私と赤ちゃんが重荷なら、私は身を引きますから。蒼真さんには外科医という大切なお仕事がありますし、私は1人でもこの子を……」えっ……突然体が大きくて温かいものに包み込まれた。「……蒼真……さん?」「藍花……ありがとう。俺、すごく嬉しい。本当に……嬉しい」そう言って、蒼真さんは抱きしめた腕を離し、私を真っ直ぐに見つめた。瞬きした瞬間、蒼真さんの瞳からキラキラした雫が1粒こぼれ落ちた。泣いている……?蒼真さんの涙、初めて見た……「あの……赤ちゃん、喜んでくれるんですか?」「当たり前だろ。喜ばない理由なんて何一つない。嬉しくてこんなにも胸が熱い。俺、いつか……こうなることを願ってたのかも知れない」その優しい答えに肩の力が一気に抜けた。「良かった……です。嬉しいです。もしかしたら私、蒼真さんにフラれるんじゃないかって、怖くて」私も、自然に涙が溢れた。「フラれるなんて思うな。絶対に離さないって言っただろ。正直、近いうちにプロポーズするつもりだったんだ」「えっ……。本当……ですか?」「ああ。でも、俺達の赤ちゃんが1日も早い結婚を願ってくれたんだな。藍花の中に芽生えた小さな命、俺の全てかけて守るから。もちろん、藍花のことも、必ず守る」蒼真さんの瞳には1ミリのかげりもない。私と赤ちゃんを本気で受け入れてくれてると、ちゃんと思えた。霧がかかったみたいな暗い気持ちが一気に晴れて、私の心に明るい光が差し込んだ。「私、蒼真さんと赤ちゃんと3人で家族になれるんですか?」「ああ、もちろんだ。藍花、俺と……結婚してくれないか?」心にズシンと重く響く「結婚」の2文字。嬉しくて、嬉しくて、喜びが心の底から溢れ出してくる。「……本当に私でいいんですか?」「ああ、俺達、夫婦になろう。藍花のこと、世界一幸せにするから、俺に着いてきてくれ」迷いのない蒼真さんの言葉。この瞬間、蒼真さんといることが私にとって何の間違いもない、1番正しい選択だと確信できた。
last updateLast Updated : 2025-04-14
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5 ふたりの未来への1歩

「蒼真さん、はい、こんな私ですが、どうぞよろしくお願いします」「良かった」「私……こんなに幸せでいいんですか?」「藍花。たぶん、俺はお前より幸せだと思ってる」すぐ目の前の優しい笑顔に照れてしまう。「そんなことないです。私の方が幸せです」2人で微笑み合う。「ただ1つだけお願いがある。藍花にはうちの病院で出産してもらいたい。その方が何かと安心だ。俺も藍花のすぐ側にいるから」どこまでも私を大切にしてくれる蒼真さん。その気遣いに心から感謝した。「実は今の病院は婦人科だけなんです。出産できる病院を探そうと思っていたのでちょうど良かったです。それに松下総合病院には最高の先生と看護師が揃ってますから、私も安心して赤ちゃんを産めます。蒼真さんも同じ病院にいてくれるので心強いです。本当にありがとうございます」私は、蒼真さんとの子どもを産んでママになる。まだ全く実感は湧かないけれど、次々と起こっていく夢のようなストーリーに、私は子どもみたいに心が踊ってしまう。恥ずかしくなるくらい、幸せ過ぎてたまらなかった。***私達は、2人のことを病院のみんなにも話すことにした。婚約、そして妊娠のことはあっという間に広がり、いろいろな反響があった。七海先生が辞めた時以上に「白川先生」のファンはザワザワしているようで、改めて蒼真さんの人気ぶりに驚かされた。中川師長と歩夢君が特に喜んでくれたことはとても嬉しく、話せて良かったと思った。歩夢君も、「藍花さん、おめでとうございます。すごく嬉しいです。あなたが幸せで良かった」と、ニコッと最高の笑顔で微笑みかけてくれた。最初は病院中、そして患者さんまでが私達の噂で持ち切りだったけれど、いつしか穏やかに見守ってくれるムードになっていた。それからしばらくして、つわりがかなりキツくなり、私は仕事は辞めることにした。すごく寂しかったけれど、仕方がない。この状況ではまともに仕事ができず、みんなにも迷惑をかけてしまうとわかっているから。またいつか、ここで働けることを願って――私は、後ろ髪を引かれる思いで松下総合病院を去った。
last updateLast Updated : 2025-04-15
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6 ふたりの未来への1歩

しばらくして、蒼真さんは私をマンションに呼んでくれた。「一緒に暮らそう。藍花が心配だし、側にいたい」「いいんですか?」「ああ、もちろん。君の体もつらいだろうし、無理のないように過ごしてくれればいい。一緒にいれば、もし何かあった時、少しは安心だろう」「少しだなんて、私……正直不安だったので、蒼真さんと一緒にいられたら、本当に安心です」とはいうものの、蒼真さんはホワイトリバー不動産の御曹司。それに比べて私はごく普通の一般人。身分の違いには天と地ほどの差がある。本当に、私はここで蒼真さんと一緒に暮らしてもいいのだろうか?でも、少し前にも「身分の違いなんて関係ない。そんなものは一切気にするな」と、叱られてしまったから……だから、もう言わないようにしたかった。引越しも全て蒼真さんが手配してくれ、もったいないくらいに広くて素敵な部屋での生活が始まり……何だか心も体もリラックスできて、この環境ならお腹の赤ちゃんにも良さそうだと思えた。それに、何よりも、大好きな蒼真さんの側にいられること、それが1番心強くて嬉しかった。蒼真さんのぬくもりに包まれる安心感は半端なく、私はこの心穏やかで幸せな日々に感謝しかなかった。
last updateLast Updated : 2025-04-16
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1 新しい家族の誕生

まだ少し肌寒く感じる4月初旬。つわりも早めに落ち着いてホッとしていた。「藍花、大丈夫?寒くないか?」「大丈夫です、蒼真さん。ありがとうございます」「体、絶対冷やさないように」「はい」「10月には俺達の赤ちゃんがこの世に誕生するんだな……すごく不思議な気持ちだ」私のお腹をゆっくりとさすりながら蒼真さんが言った。「本当に信じられないです。私がママになるなんて」「俺もパパになるんだな。今から楽しみで仕方ないよ」「蒼真さんがパパで、この子は本当に幸せです。こんな素敵な人がパパで、赤ちゃんびっくりすると思いますよ」「そうだといいけどな。いつまでも素敵なパパでいられるようにしないとな」「蒼真さんならいつまでも若々しくてカッコ良くて、最高の自慢のパパになりますよ」「だったら藍花は自慢のママだな。誰よりも綺麗で、可愛くて、キラキラ輝いて……。この子のママは世界一素敵なママだ」「は、恥ずかしいです」「恥ずかしくないだろ?本当のことなんだから」何気ない日常のやり取り、私は、いろんなことに幸せを感じながら、明日、蒼真さんと婚姻届を出す。前々から蒼真さんの4月の誕生日に出すことを決めていた。妊娠中ということもあり、2人で真剣に話し合った結果、式は挙げないことにして、ドレスとタキシードで写真撮影をすることになった。数日前にカメラマンさんが撮ってくれた写真の中の私達は、2人とも笑顔だった。それを見ていたら、少しずつではあるけれど、本当に夫婦になったんだと実感した。白いタキシード姿の蒼真さんは、世界中の誰よりもカッコ良くて、この人を他の誰にも渡したくないと思った。永遠に私の側にいて、私のことだけを見ていてほしいと心の底から願った。蒼真さんは私の平凡な人生をバラ色に染めて、180度変えてくれた。これからは……「白川先生」と「新人看護師」という関係ではなく「夫婦」として長い道のりを一緒に歩むんだ。***そして、10月――木々の葉っぱが赤や黄色に美しく色づいた秋晴れの日に、私達の待望の赤ちゃんが誕生した。産声をあげたのは元気な男の子。七海先生の紹介で入った女医さんが、赤ちゃんを取り上げてくれた。さすが七海先生の肝いりの先生だけあって、腕も確かで出産時の声掛けも素晴らしかった。女医さんや蒼真さん、周りのみんなのおかげで、私は安心して出産す
last updateLast Updated : 2025-04-17
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2 新しい家族の誕生

陣痛も短く、驚く程に安産で、スっと出てきてくれた赤ちゃんに感謝した。この世に生を受け、一生懸命生まれて来てくれた我が子がどうしようもなく愛おしくて、涙が止まらなかった。蒼真さんもパパになることを楽しみにしてたから、小さなその体を初めて腕に抱いた瞬間、大粒の涙をこぼしていた。その顔を見て、私もまた泣いた。あの白川先生が涙を流すなんて……という感じもあったのか、周りにいた女医さんや看護師さんまでみんなもらい泣きしていた。赤ちゃんの泣き声と共に、分娩室は感動の連鎖で温かな空気に包まれた。入院中は代わる代わる中川師長や歩夢君、他の看護師達も部屋に寄ってくれて、赤ちゃんを抱っこして喜んでくれた。中川師長は「孫ができたみたい!」と言ってくれ、歩夢君は毎日「可愛い可愛い」と言って部屋に来てくれた。私への気持ちなんか決して口にせず、私と赤ちゃんを優しく見守ってくれている感じがしてすごく有難かった。赤ちゃんの名前は、しばらくして蒼真さんが決めてくれた。「蒼太(そうた)」元気な男の子にピッタリの名前だと思った。私が絶対に「蒼」という漢字を入れてほしいと頼んだこともあって、ずいぶん悩んでいたけれど、ようやく蒼太に決めたようだった。気づけば、蒼真さんと急接近して、付き合って、赤ちゃんまで授かって、そして結婚まで……こんな人生、私には予想もできなかった。あまりにも嘘みたいな展開に自分でも驚いている。とんでもないシンデレラストーリーに、私はまだ半分夢見心地だ。だけど、いつまでもフラフラしていてはいけない。本格的に子育てが始まったのだから、ママになった自覚はキチンと持たなければ。慣れない家事をしながらの育児に、最初は戸惑いはあったけれど、それでも毎日私なりに一生懸命頑張った。夜泣きしたり、ミルクを飲まなかったり、眠れない日々が続いても、やっぱり我が子はとてつもなく可愛くて、愛おしかった。子どもの笑顔には、疲れを吹き飛ばす偉大な力があるということを、ヒシヒシと実感していた。
last updateLast Updated : 2025-04-18
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3 新しい家族の誕生

それでも「疲れているだろう」と、蒼真さんは私を気遣ってくれる。診察、回診、手術……きっと自分の方が何倍も疲れているはずなのに……その、人を思いやる優しさに、私は心から感謝の気持ちでいっぱいになっていた。***それから1年――1歳になった蒼太に会いに、久しぶりに月那が遊びにきてくれた。月那は今は仕事に大忙しで、旦那様ともラブラブだった。「本当に幸せだよね、藍花。こんな立派な新居を建ててもらって、こんな可愛い蒼太君がいてさ」蒼太を見て微笑む月那は相変わらず美人だ。こんな美しい女性が私の友達だなんて、かなりの自慢になる。「うん、幸せだよ。みんなに感謝しかないよ。月那にはずっと相談に乗ってもらって、本当に感謝してる。いろんなことが月那の言う通りになっていくのがすごく驚いたよ」「当たり前だよ。月那様には全てお見通しだったからね。あの時の藍花はすごく迷ってた。3人のイケメンの間で揺れてたよね」「そう……だったね。あの時の自分は何もわからなくて本当に困ってた。ただ頭を抱えているだけで、前に進むことができなかったから」「まあ、仕方ないけどさ。あんなイケメン達に告白されたら、人間誰だってちょっとしたパニックになるよ。きっと世界が違って見えるんだろうな。その世界が見れた藍花は本当に幸せ者だよ」「世界が違って見えたかどうかはわからないけど……でも、もし月那がいなかったら、私は素直になれてなかったかも知れない。今でもまだ、月那がいう『違う世界』で迷子になってたかも……」本当にそうだ。恋愛マスターの月那がいたから、私は今の幸せを掴めたんだ。月那には、感謝してもし足りない。「ううん、藍花の中ではさ、本当は決まってたんだよ。3人の中で白川先生が1番好きだって。だから……白川先生と上手くいった……」「……そ、そうなの?」「うん。でも、藍花は優しいからさ。みんなに対していろいろ考えてたら何が何だかわからなくなってたんだよ。七海先生も、歩夢君も、みんなを大切に考えて……。私、見てて可哀想なくらいだったから。でもいろいろあった結果、藍花は世界で2番目に幸せになれたんだから、良かったんだよ」ニコッと笑う月那。「世界で1番幸せなのは……月那、だね」「もちろん、その通り。なかなかやるね」2人の笑い声、久しぶりの楽しい時間が嬉しかった。
last updateLast Updated : 2025-04-19
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4 新しい家族の誕生

私は病院から少しだけ離れたところに新居を建ててもらい、月那はマッサージ店の近くのマンションを買った。常にいつでも会える距離……ではないけれど、大好きな月那とはたまにはこうして会いたい。月那のアドバイスはやはり直接聞きたいし、そばにいてくれるだけでかなり安心できる存在だから。「ねえ、あれからみんなどうしてるの?病院行ってもなかなか情報聞き出せないしさ」「月那、スパイじゃないんだから」「似たようなもんよ。客商売、情報が全てでしょ」「ダメだよ、病院の内部事情をお客さんに話したら」「当たり前だよ。言っちゃダメなことは言わないようにしてる。それくらい心得てるから大丈夫……たぶんね」「たぶんって、本当にダメだって~」「大丈夫、大丈夫、ちゃんとわかってますよ。だけど、白川先生と藍花のことは当然みんな知ってるよ。患者さん達も喜んでたし。あの子なら仕方ないって、白川先生のファンのおば様達が言ってたから」「そ、そうなんだ……」蒼真さんのファンって……まるでアイドルみたいな扱いだ。「それでもさ。未だに病院じゃ、みんな白川先生のことをハートマークのついたキラキラした瞳で見つめてるから気をつけた方がいいよ~」そう言って、月那は意地悪そうに微笑んだ。「うん。そうだね。でも、病院じゃなくても蒼真さんといるとみんなそんな目で見てるから。本当にどこにいても注目の的で……」あのルックスでは絶対に目立ってしまうから仕方がない。ただでさえそうなのに、最近はますます男性としての魅力に磨きがかかっている。やはり蒼真さんは無敵だ。「うらやましいよね、本当。だってさ、太一といても誰も振り向かないから」月那が大きな声で笑う。だけど……みんなは月那のことを見ているんだ。太一さんには申し訳ないけれど、2人は美女と野獣というか……月那みたいなすごい美人はなかなかいないし、どうしても目を引いてしまう。私達とは逆――視線は全て蒼真さんに向いているから。「ねぇ、それよりさ。歩夢君はどうしてるの?元気なの?」突然、月那が話題を変えた。
last updateLast Updated : 2025-04-20
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5 新しい家族の誕生

「うん、今、すごく頑張ってるんだって。蒼真さんが歩夢君をとても可愛がってるみたいで、人一倍動けるし、患者さんからの人気もあるって言ってた」「そうなんだ。歩夢君、やるね~。本当に真面目ないい子なんだね。見た目も可愛くてイケてるしさ。キュートな眼鏡男子って感じで」「うん、そうだよね。本当にみんな癒されてた。歩夢君がいてくれたら職場が安定するというか……」「安定剤だね」「確かに。歩夢君、前にお母さんのために早く1人前になりたいって言ってたけど、十分過ぎるくらい頑張ってる。体を壊さないかって蒼真さんも心配してた。まあ、中川師長がすぐ側にいるから大丈夫と思うけど。ほんと、新人なのに私の何倍も偉いよ。私は……さっさと辞めちゃったしね」歩夢君の頑張っている話を聞くとすごく嬉しくなる。でも、バリバリ仕事ができることが、少しうらやましくも思える。私も、歩夢君みたいに看護師という仕事が好きだから……「藍花が辞めたのは妊娠したからだし、またいつか復帰するって思ってるんだからさ。何も卑屈になる必要はないよ。それまでは白川先生と蒼太君のために「奥さん」と「お母さん」を頑張りな」「うん、そうだね」「そうだよ、藍花は本当に幸せ者なんだからさ」「ありがとう、月那。今は家族のことだけ考えて、いつかまた看護師に復帰できたら、その時はしっかり頑張るね。蒼真さんと同じ病院は無理かも知れないけど、ここの近くにも病院はたくさんあるからね」「うんうん、頑張れ!応援してる」「……ありがとう。すごく心強いよ」「あっ、そうだ。あともう1人のイケメンは?」「……七海先生?」月那がうんうんとうなづく。「蒼真さんにはたまに連絡があるみたいだよ。あれからお見合い相手の人と結婚したんだって。でも……」「ん?」「……七海先生、フラれたみたいで……」「嘘!あの超イケメンが!?」「そうみたいなんだ。残念だけど……」「えっ、七海先生、結婚したお見合い相手にフラれたの?」「……うん」蒼真さんから聞いた時はすごく驚いた。せっかく新しい1歩を踏み出したのに……「でも何で?あんな超イケメンをフルなんて度胸あるよね」「別れた原因はわからないんだって。フラれたとだけ聞いたって。今は1人で、もう一生結婚はしないって言ってるみたい。お父様の病院で産婦人科医として仕事に生きるって……」
last updateLast Updated : 2025-04-21
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6 新しい家族の誕生

「そっか……。奥さん、毎日側にいてわかったんじゃないかな。七海先生の中には他の誰かがいて、自分を見てないって。最初からわかってたつもりだったけど、実際に側にいると余計につらいと思うからさ」「……」その言葉について、私は何も言えなかった。「大好きな七海先生と別れるのは寂しかったかも知れないけどさ。その分、藍花が幸せにならなきゃダメだよ。奥さんだって、七海先生より良い人に必ずいつか巡り会えるんだから。そのための離婚だよ。絶対に」「月那……」その言葉にほんの少し救われる。七海先生が私のことをずっと想ってくれているなんて、自惚れたくはないけれど、奥さんの、好きな人と別れる決断は、ものすごくつらかっただろうと、今の私には痛いほどわかる。結婚して蒼真さんの側にいて……私はどんどん彼を好きになっていくから。「七海先生はさ、たぶん1人で大丈夫だよ。あの人、結局誰と結婚しても一生藍花を想い続けるから。それが七海先生の幸せなんじゃない?」「そんな……。私、どうしたらいいかわからないよ」「出たね、藍花の迷い癖」「えっ?」「いいんだよ、どうもしなくて。本当にほおっておきなよ。好きにさせてあげたらいいんだよ」「でも……」「でもじゃない。七海先生にとってはそれが1番の幸せなんだって。藍花は気にせずに自分の幸せだけを考えたらいいの。でないと白川先生に悪いよ」「……うん。わかった……」「素直でよろしい!いい子だね、よしよし」月那は私の頭を優しく撫でた。その仕草に少し照れる。「とにかくさ。七海先生と歩夢君はそれぞれに幸せなんだからね。自分のせいだとか考えちゃダメだからね。藍花が幸せになることが、2人にとって何よりも嬉しいことなんだからね」
last updateLast Updated : 2025-04-22
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