どこからか、陰気な男の声が低く響いた。その一言を聞いた瞬間、清那はびくりと肩を震わせた。彼女は吉岡の腕をつかみ、そのまま走り出そうとする。ここはもう長居する場所じゃない。紗雪は思わず吹き出しそうになりながら、京弥を見た。「もう、何もしてないのに。驚かせなくてもいいでしょ?」「俺たちをからかう度胸までついてるんだ。そうしないとますます調子に乗る」さっき清那が言っていたことを思い出し、紗雪の頬がまた自然と赤く染まる。そう考えると、京弥の言い分も間違っていない気がしてきた。紗雪は真面目な顔でうなずく。「確かに一理あるかも。ちゃんと叱っておいたほうがいいね」少し離れた場所にいた清那はその言葉を聞き、思わず叫んだ。「紗雪!友だちだと思ってたのに、裏切ったのね!」けれど紗雪はまったく動じない。さっきまで、清那が物陰から楽しそうに様子をのぞいていたことを思えばなおさらだ。京弥の言葉を改めて思い返し、悪い子はきちんとしつけるべきだと納得する。紗雪はもう止めなかった。京弥は大股で奥へと入っていく。その結果、清那は一か月分の小遣いを失うことになった。外に出てきた清那は、半泣きになりながら言う。「紗雪、ひどいよ。私たち、親友なのに」紗雪はわざとらしく空を見上げた。「いやあ、今日はほんとにいい天気だね」「......」やっぱり情が薄れたんだ。今じゃ紗雪は自分をかばってもくれない。清那の呆れた顔を見て、紗雪は心の中でくすりと笑う。そっと近づき、小声でささやいた。「もう、次から盗み聞きしないこと。小遣いはあとで一か月分、私が補ってあげるから」清那の目がぱっと輝く。「本当?」紗雪がうなずくと、清那は嬉しそうに抱きついた。「やっぱり紗雪の方が一番優しい!さっきは誤解してた、ごめんね」傍らで見ていた京弥は、何も言わなかった。教訓になれば、それで十分だ。......やがて、スタジオの内装工事も無事に終わった。約束していた開業の日も、いよいよ目前だ。テープカット前夜。紗雪は珍しく緊張していた。ベッドの上で何度も寝返りを打ち、なかなか眠れない。その様子に、京弥はすぐ気づいた。長い腕を伸ばし、紗雪を胸の中へ引き寄せる。「どうした?さっきか
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