Todos los capítulos de クズ男と初恋を成就させた二川さん、まさか他の男と電撃結婚!: Capítulo 1231 - Capítulo 1240

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第1231話

これまでどうして気づかなかったのだろう。敦がここまで本心と建前の食い違う人間だったとは。加津也がすぐに続けて口を開いた。「前の件については、もう不問にする。だがその代わりに、利益の二割を譲ってもらう」「二割なんてなおさら無理ですよ」敦はわざとからかうように言った。「なら、いくら?」加津也は眉をひそめ、内心いら立ちを募らせる。この契約は、そもそも今回、敦のほうから持ちかけてきた話だ。多少条件を出したところで、何の問題があるというのか。それくらい、敦が負うべきことのはずだった。だが敦は、落ち着き払った口調で言った。「利益を譲るのは無理ですし、そもそもこのプロジェクトを西山さんに渡すこと自体、できません」加津也は眉を寄せたまま、黙り込んだ。すると敦は、きっぱりと言い切った。「このプロジェクトで、最初から西山さんと組むつもりはないので」加津也の声には、怒気が混じった。「それは一体どういう意味だ、柿本」彼はもはや、以前のように「柿本社長」と呼ぶことすらしなかった。加津也が取り繕っていた余裕は、この瞬間、完全に崩れ去った。敦は心の中で冷笑する。なるほど、京弥が彼と加津也の協力を勧めなかったわけだ。こんな小物と組めば、後々必ず揉めるに決まっている。やはり、商業界の大物と呼ばれる人間には、それなりの理由がある。先を見る目がまるで違う。「ここまで説明しているのに、まだ分かりませんか。要するに、西山さんとは一緒にやる気がない、ということです」「なら昔、俺が贈ったものは?」加津也はわざと過去の話を持ち出した。しかし敦は、すでに我慢の限界だった。「西山さん、商売での贈り物なんて、持ちつ持たれつでしょう。そこを持ち出されても、議論のしようがありません。あれは全部、あなたが自分の意思でやったことですし、私は一度も強要していませんでしたよ」その言葉を聞き、加津也はスマホを握る指に力を込めた。歯ぎしりしながら問い詰める。「お前に恥というものはないのか」「酷い言われようですね」敦はわざと声を張った。「でもそれは、西山さんには関係ないでしょう」「じゃあ今日わざわざ電話してきたのは、俺を不愉快にするためか」加津也も、ようやく敦の本性をはっきり見抜いた。「
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第1232話

こんなこと、口に出してしまえば、笑いものになるだけじゃないか。加津也が「すまない」と言おうとした、そのとき――向こうから声が返ってきた。「分かっているなら、それでいい」その一言を聞いた瞬間、加津也の頭の中は真っ白になった。ということは、敦の背後で指示を出しているのは、本当にあの椎名京弥なのか。一体どれほどの力を持っているというのだ。敦がここまで従い、進んで彼のために動くほどの人物だというのか。加津也がさらに問いただそうとしたとき、敦は冷たく言い放った。「余計な詮索はしないほうが身のためです。これは忠告です。あの人を怒らせたら......後悔することになりますよ」そう言い残すと、敦は一方的に電話を切った。加津也に考える隙すら与えなかった。通話を終えた敦は、深く息を吐いた。これは、自分が下した中で最も正しい選択だと思った。京弥についていくと決めた以上、迷いは許されない。京弥の嫌うことはしない――その第一歩が、加津也との関係を断つことだ。人との縁は切れてもいいが、自分の金稼ぎの道だけは絶対に断ってはいけない。電話を切られた画面を見つめたまま、加津也はしばらく動けなかった。試しにメッセージを送ってみると、返ってきたのはエラー通知だった。加津也はそれを信じられない思いで見つめた。敦とは、これまでそれなりに長い付き合いだったはずだ。それなのに、今回はここまで容赦なく、迷いもなくブロックするとは。――どうやら、敦は本気だ。今回は本当に、一線を引くつもりなのだろう。では、これまで自分が敦に贈ってきたものは、何だったのか。自分は馬鹿にされただけなのか。加津也は「ガンッ」と音を立てて、スマホを床に叩きつけた。ちょうどそのとき、秘書が報告に入ってきて、その光景を目にした。何か言おうとしたが、加津也の凍りつくような視線と目が合った瞬間、言葉を失った。震えるように、業務報告だけを済ませる。報告が終わっても、加津也は何の反応も示さなかった。秘書はおそるおそる口を開く。「社長......ほかに、何か補足はございますか」その震えた声を聞いて、加津也はようやく我に返ったようだった。秘書を見つめるその目は、陰鬱で冷え切っている。「以前、お前に二川紗雪を見張らせてい
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第1233話

男女ではもともと力の差があり、しかも加津也は背も高い。秘書の隣に立つだけで、強烈な威圧感を放っていた。秘書は、てっきり加津也がもう自分を許してくれたのだと思い、心の中で礼を言おうとした――その次の瞬間だった。突然、大きな手が彼女の首を締め上げた。秘書は反射的に顔を上げ、加津也の深く冷たい眼差しとぶつかる。男は口元を歪めて言った。「表では従ってるふりをして、裏では逆らってるってことか。俺が何を言っても、いちいち言い返してくるとはな。そこまで口が達者なら、漫才でもやればいいだろ。こんな小さな秘書の仕事に応募するなんて、才能の無駄遣いだ」「ち、違います......そんなつもりじゃ......」秘書は必死にもがき、目を見開いた。呼吸が次第に苦しくなっていく。これほど激しく社長が怒る姿を見るのは、彼女にとって初めてだった。これまでは物に当たることはあっても、すぐに怒りは収まっていた。だが今は違う。彼は自分に直接手を上げている。その事実に、秘書の心は恐怖でいっぱいになった。「は、放してください......」秘書は必死に抵抗し、加津也の手を振り払おうとした。力いっぱい、彼の手の甲を叩く。だがそれは、加津也にとってまったく効果がなかった。「自分がどこを間違えたか、分かったか?」加津也は首をかしげ、ゆっくりと問いかける。その口調とは裏腹に、手に込める力は少しずつ強まっていた。秘書は、自分が何を間違えたのか分からなかったが、それでも必死にうなずいた。「どうか、お許しを......」やっとの思いで、その言葉を絞り出す。彼女の顔は、すでに暗い紫色に変わっていた。その様子を見て、加津也はようやく手を放した。秘書は床に崩れ落ち、荒く息をつく。その姿を見下ろしながら、加津也の胸の奥には、奇妙な満足感が湧き上がっていた。――ほら、見ろ。その気になれば、誰だって自分の前に跪き、頭を垂れる。取るに足らない秘書であろうと、敦であろうと。あるいは、何度も自分を刑務所送りにした紗雪や、あのヒモの椎名京弥であっても同じだ。いずれ全員、痛い目を見せてやる。一方、敦は加津也の電話を切ったあと、心の底から清々しい気分になっていた。やはり、あの男と組んでもろくな結果にはならない。
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第1234話

「プロジェクトの件は、もう結論が出ている」敦の声を聞いた瞬間、緒莉の胸は高鳴った。「ということは......二川グループと協力する方向で考えてくださっている、ということですか?」その声には、明らかに期待と弾むような響きが混じっていた。だが、敦の次の言葉は、まるで冷水を浴びせられたかのようだった。「いや、悪いが、総合的に検討した結果、御社はうちの理念には合わない、という結論だ」敦は笑みを浮かべて続ける。「別の適した案件を探すほうがいいでしょう。うちとは相性がよくないからね」「どうしてですか?」緒莉は拳を握りしめ、信じられないという様子で問い返した。「私が提示した条件にご不満があったのでしょうか。もしそうでしたら、まだ話し合う余地はあります。協力できるのであれば、条件については柔軟に対応します」緒莉が今一番必要としているのは、母親や株主たちの前で成果を示すこと、それだけだ。利益そのものには、そこまで執着していない。このプロジェクトさえ取れれば、自分は紗雪に劣っていないと証明できる。それなのに、なぜ敦は頑として協力を拒むのか。譲歩した分だって、彼女は自分の貯えから補填している。ここまで譲っているのに、いったい何が不満なのか。そう考えても、緒莉には理解できなかった。「二川さんのプロジェクト内容も利益条件も、正直言ってうちにとって魅力的だ。ただ、それでも協力できない」敦の返答は、どこか歯切れが悪かった。緒莉は必死に感情を抑えていたが、ついに堪えきれなくなる。「柿本社長、それは少し不誠実ではありませんか。私は率直にお話ししましたし、お互いに腹を割って話したいと思っていました。でも、そちらは何かを隠しているように感じます」緒莉は苦笑した。「柿本社長もご存じのとおり、私は社長に就いたばかりです。ここ数年は体調が思わしくなく、母に家で療養させられていました。最近になって、ようやく外に出て、こうした案件に関わり始めたばかりなんです。だから、もし私に至らない点があるなら、遠回しにせず、はっきり言ってください」その言葉に、敦は少なからず心を動かされた。しかし、商人にとって何より大切なのは利益だ。京弥と関係を築けるのであれば、今後の道は確実に広がる。目先の小さな利益のために、将来の
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第1235話

「冗談じゃない」敦は表情を引き締めた。「お互い忙しい身だ。こんなことでからかう必要はない」「でも私は彼女と大して変わらないはずです。どうして柿本社長は、うちに一度のチャンスも与えてくださらないんですか」緒莉は、なおも食い下がろうとした。彼女は、いつまでも紗雪の影の下に生きることが、どうしても受け入れられなかった。「二川さん、もうこれ以上はやめよう」敦は話題を切り替えるように言った。「もうわかってるだろう。理由はもう教えたはずだ。何を言っても、事実は変わらない。これ以上の食い下がるのはみっともないんだぞ」その言葉を聞いた瞬間、緒莉は、自分に残されていた最後の体面すら失った気がした。敦がここまで率直に、容赦なく言うとは思っていなかった。では、これまで自分が費やしてきた努力は、すべて無意味だったというのか。結局のところ、「二川紗雪」という名前一つのほうが、よほど価値があるということなのだろうか。あの名前には、そこまでの力があるというのか。緒莉は、必死に最後の平静を保ち、笑顔を作った。「すみませんでした、ご迷惑をおかけして。失礼します」電話を切ったあと、敦も小さく息をついた。正直に言えば、彼自身も緒莉と組みたい気持ちはあった。提示された条件は、確かに魅力的だったからだ。だが、一時の満足と長期的な利益、そのどちらを取るべきかは明白だった。商人とは、そういうものだ。一方、緒莉は考えれば考えるほど、怒りが込み上げてきた。どこへ行っても、結局逃れられないのは「二川紗雪」という名前。幼い頃、家で年長者たちから受けた評価。成長してからの学校生活、そして今の仕事。気づけばずっと、自分は紗雪の影の中で生きてきたのだ。こんな人生に、いったい何の意味があるのだろう。それならいっそ、母にすべて打ち明けてしまったほうがいい。母の顔を思い浮かべた瞬間、緒莉の目がふっと明るくなった。――そうだ。このプロジェクトはもうどうにもならない。だが、母に事情を説明することはできる。自分は努力していなかったわけではない。すべては、紗雪が裏で邪魔をしたせいだ。二川グループにこの案件を渡したくなかっただけなのだ。去っても、厄介事だけを残していく。そう考えるほど、怒りは募った。
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第1236話

母の心の底では、最初から「この子には無理だ」と思われていたのだ。だから、このプロジェクトがうまくいこうが失敗しようが、会社にとって大きな損失にはならない。いや、正確に言えば――母の中での自分の立場には、何の影響もない、ということだ。母はずっと、自分を「大したことは成し遂げられない人間」だと思っている。そう思うと、緒莉は思わず拳を強く握りしめた。「お母さん、今回プロジェクトは成立しなかったけど、ひとつ分かったことがあるの」緒莉は真剣な表情で母を見つめた。「どんなこと?」美月は少し気を取り直し、娘の真剣な様子に、かえって興味をそそられた。これまで、緒莉は何かあっても、母のところへ相談に来ることはなかった。この数日、彼女にプロジェクトを任せてはいたが、正直なところ、期待はしていなかった。この案件は会社の利益に大きく関わるものではあったが、今はもう紗雪がいない。仮に協力できなくても、それは仕方のないことだ。その場合は、山口に別の案件を探させればいい。そもそも、これほど大きな会社が、南の土地プロジェクト一つに依存しているわけではない。緒莉は、どこか悔しさを滲ませた口調で続けた。「この数日、柿本社長と会っていた。最初は、彼も私たちの契約内容にかなり前向きだったの。でも、途中から急に態度を変えて......何度も理由を聞いて、ようやく本当のことを話してくれた」「理由は何だったの?」最初はさほど関心を示していなかった美月も、ここまで聞いて、少し興味を持ち始めた。お金を嫌う人間などいない。本来なら成立してもおかしくない話が、別の理由で流れてしまったのなら、腹が立たないはずがない。娘のあまりにも悔しそうな様子を見て、美月も事態の異常さに気づき始めた。緒莉は、少しためらうような表情を浮かべた。「でも......お母さん、それを話すと、あの人にとってよくない影響が出るんじゃないかと心配で......」「もうそのプロジェクトは取れないんでしょう?今さら影響も何もないわ」美月は思わず、きつい口調で言った。「分かった。じゃあ話すね」緒莉は、大きな決意を固めたかのように言った。「柿本社長に、どうしてうちの会社とは協力しないのかって聞いたの。うちは鳴り城でも評判のあるのに、って。最初は
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第1237話

緒莉は信じられないという表情で美月を見つめた。「お母さん、まさか......私のことを信用してないの?」「信じていないわけじゃない。ただ、紗雪がそんなことをする理由が見当たらないだけよ」緒莉は悔しそうに唇を噛んだ。「だったら柿本社長に直接聞けばいいじゃない。これ全部、私が柿本社長と電話で話して、本人の口から聞いたことなのよ。私がお母さんを騙す必要なんてある?何の得もないのに......」泣き出しそうな緒莉の様子を見て、美月は内心、彼女の言葉にも一理あると感じた。確かに、こんなことで緒莉が嘘をつく必要はない。それに、紗雪はすでに会社を去っている。もしあのプロジェクトを自分の手元に握ったまま二川グループに渡さなければ、その話が上層部の耳に入れば、間違いなく問題になる。「そういう意味じゃないわ。そんなに気を落とさないで」美月は眉間を押さえながら言った。「あなたの言いたいことは分かってる。でも、あの子はもう会社を辞めた身よ。私も軽々しく口出しはできないわ」どのみち、紗雪は会社を去っただけで、何かを持ち出したわけでもない。今の立場では、彼女をどうこう言う資格もない。だが、緒莉は納得できなかった。「だからこそよ。妹は会社を辞めたのに、プロジェクトだけを握っているなんて......こんなの、フェアじゃない」「それはどういう意味?」美月は緒莉を見る目に、わずかな興味を宿した。「お母さんがまだ親子の情を気にしているのは分かってる。でも、妹のやってることを見る限り、もうそんなもの気にしてないのは明らかよ」美月が黙ったままなのを見て、緒莉はさらに言葉を重ねた。「それに、彼女が二川グループを離れたのは事実だし、あのプロジェクトも本来は彼女のものじゃない。それなのに、どうして柿本社長は私たちじゃなくて彼女とだけ組もうとするの?きっと彼女が、柿本社長の前で何か吹き込んだに決まってる!」誰が聞いても、緒莉が意図的に事を煽っているのは明らかだった。それでも美月は、彼女の言葉に少なからず真実が含まれていることを否定できなかった。敦が今、二川グループと手を組んでいないのは紛れもない事実なのだから。この点については、疑いようがない。「どうしても分からないの。どうして妹は、ここまで会社に冷たくできるの?たと
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第1238話

彼女は見てやろうと思った。この紗雪が、いったいまだどんな手を使えるというのか。今回は美月まで引っ張り出してきたのだ。紗雪がどれほど情を顧みないとしても、このプロジェクトだけは大人しく差し出さざるを得ないはずだ。美月は緒莉を一瞥し、ついてくるのを見ても、特に何も言わなかった。この件を最初に問題にしたのは、そもそも彼女なのだから。美月は車を走らせ、手際よく紗雪のいるスタジオへ向かった。実は紗雪が去ってからというもの、彼女は密かにその動向を見ていた。二川グループを離れた今、あの子は本当にうまくやれているのか。あるいは、ピラミッドの頂点で生きてきたお嬢様が、後ろ盾を失ってなお、以前と同じように自由気ままに暮らせるはずがない――そう思っていた。スタジオを目にした緒莉は、露骨に嫌そうな顔をした。「まさか妹が、こんなところに住んでるなんてね。どうしてあの時、二川グループに残らなかったのかしら。少なくとも、ちゃんとしたオフィスもあったし、外から見ても名の通った会社に勤めてるって分かるのに」その言葉を聞いても、美月は相槌を打たなかった。だが、考えていることは同じだった。立派な後継者の立場を捨ててまで、わざわざ外でスタジオを立ち上げるなんて。会社というものが、そんな簡単に回るとでも思っているのだろうか。もしそうなら、誰だって会社を作れてしまうではないか。美月は鼻で笑った。この件は、紗雪には到底無理だと、彼女は思っていた。今は一人でこんな場所を借りているだけで、ただの強がりに過ぎない。美月の目には、それは子どもの意地の張り合いにしか映らなかった。そう思うと、美月は大股で中へと踏み込んだ。緒莉も、ぴったりと後ろについていく。二川グループを離れて、今の紗雪がどんな暮らしをしているのか。それをこの目で確かめたかった。二人が門をくぐり抜けると、まず目に飛び込んできたのは、見事に整えられた庭だった。まるで誰かの家みたいだった。果樹が植えられ、木々には蔓が絡まり、そこには色とりどりの花が咲いている。庭の隅や窓辺にも、さまざまな草花が並べられていた。鉢植えは一つ、また一つと置かれ、どの草花も太陽に向かって伸び、生き生きとした生命力を放っている。その光景を見て、美月の胸にはわずかな違和
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第1239話

だからこそ、清那は誰かが来て彼女を煩わせるのを見過ごせなかった。だが、清那の言葉を聞いた緒莉は、さすがに黙っていられなくなった。「あなたたちが仲のいい友達なのは分かるけど、だからって、紗雪のすべてをあなたが決められるわけじゃないでしょ」一語一句、強い口調で吐き出されたその言葉は、すべて清那の胸に突き刺さった。その間、美月は何も言わなかった。だが内心では、緒莉の言葉に一理あると思っていた。清那と紗雪の仲がどれほど良くても、所詮は血のつながりのない他人で、ただの友人関係に過ぎない。紗雪の私生活に、清那がすべて口を出せるわけではないし、最終的に何を決めるかは、すべて紗雪本人の問題だ。そこに清那が関与する余地など、微塵もない。つまり、今の清那の振る舞いは、ただの独りよがりに過ぎないのだろう。隣で黙り込んだままの美月を見て、清那の胸には冷たいものが広がった。彼女は冷ややかに笑い、美月を見据えて問いかけた。「おばさんは、そう思っているんですね」「そんなことより、紗雪を呼んできなさい」美月は、それ以上話すつもりがない様子だった。その態度からも、彼女が緒莉の考えに同意していることは明らかだった。清那と紗雪は、あくまで血のつながりのない二人。一方で、自分は紗雪の実の母親だ。どんな事情があろうと、紗雪は多少なりとも自分の顔を立てるべき存在なのだ。血縁というものは、そう簡単に断ち切れるものではない。清那は小さく頷いた。胸の奥が、ひどく傷ついていた。「分かりました」清那が中へ入ると、緒莉は美月のそばに歩み寄った。「前の清那ちゃん、こんな子じゃなかったのに......」その言葉を聞き、美月の目がわずかに光った。確かにその通りだと、彼女も思った。以前の清那は、彼女の前では素直で、何かあれば相談しながら物事を進める子だった。紗雪に対しても忠実で、頭はあまり切れないにしても、目上の人には常に敬意を払っていた。それが今では、口答えまでするようになった。もしかすると――紗雪が二川グループを離れたことで、彼女の周囲の人間まで、自分を軽んじるようになったのではないか。そう思った瞬間、美月の瞳の奥に冷たい光が走った。庭に植えられた果樹を睨みつけるその目は、陰鬱な色を帯びていた。
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第1240話

たとえ避けようとしても、逃げる余地など与えられなかった。清那は唇を尖らせた。「私に言っても同じですっておばさんに伝えたんだけど、全然聞いてもらえなかった」「分かった。あとは私に任せて」紗雪がそう言うと、「ダメ!」と清那が思わず声を上げた。紗雪と吉岡は、揃って不思議そうに彼女を見た。だが清那は焦った様子で、身振り手振りを交えながら言った。「来たとき、おばさん、緒莉も一緒だったの。あの二人、何をするか分からないし、あなたに何かあったらって思うと......やっぱり一緒に行かないと安心できない!」そう言うと、清那は紗雪のそばに駆け寄り、彼女の手をぎゅっと掴んで離そうとしなかった。紗雪は清那を一瞥し、何も言わなかったが、胸の奥がじんと温かくなった。こういうときに、そばにいてくれる人こそが、本当に自分を思ってくれている存在なのだ。「分かった。一緒に行こう」紗雪は、握られた自分の手を見て、心にぬくもりを感じた。清那もほっとした様子だった。だが、美月のあの視線を思い出すと、やはり胸の奥がざわついた。「なんだかおばさん、前と少し変わった気がする。以前とは違う感じがして」清那の表情には迷いがあり、正直、もう一度美月に会いたくないという気持ちが滲んでいた。さきほど叱りつけられたときの様子が、今でもはっきり脳裏に焼き付いている。また会ったら、何が起きるか分からない。これまでの美月は、いつも穏やかで優しかった。あんな態度を取る美月を見るのは、初めてだった。清那の様子を見て、紗雪の心にも疑念が浮かんだ。――母は、本当に変わってしまったのだろうか。自分が二川グループを離れたから、母もこうなったのだろうか。紗雪は唇をぎゅっと結び、しばらく言葉を探した。そして、清那の肩を軽く叩いて言った。「大丈夫よ。私がいるから。うちの母、清那を食べたりしないわ」わざと冗談めかした言い方で、場の空気を和らげたのだった。清那に、これ以上怖がってほしくなかった。紗雪がそう言った以上、清那もそれ以上は何も言えず、ただ彼女についていった。二人が庭に戻ると、美月と緒莉はすでに石のベンチに腰掛けていた。まるでここが自分たちの家であるかのように、どこか他人行儀のない態度で。その光景を見た瞬間、紗雪の表
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