匠は本題へ切り込んだ。「母さん、そろそろ今年は俺にもお見合い相手を探してくれていいと思うんだ」匠の母は「は?」と頭の中を疑問符でいっぱいにした。どういう風の吹き回しなのか、急に息子が目覚めたみたいなことを言い出したからだ。今までの匠は、こんなふうに自分から動くタイプではなかった。会うたびに「仕事が忙しい」とか、「自分の生活のペースを崩したくない」とか、「今は恋愛する気がない」とか、理由を並べてはお見合い話をかわしてきた。とにかく言い訳が多く、あの手この手で見合いを避け続けていたのだ。だからこそ、今日の匠の言葉は母親にとってかなり意外だった。しかし匠はもっともらしい顔で言う。「俺だってもういい歳なんだよ?相手も見つからないのに、母さんは焦らないの?」「そりゃ焦るわよ!でも、あんたがそう思ってくれたなら良かったわ。任せなさい。明日にでもいい子を紹介してもらうから!」匠の母は勢いよく膝を叩き、その場で話を決めてしまった。その言葉を聞き、匠も上機嫌で笑ったが、電話を切る頃になると、今度はぼんやり後悔し始めていた。今はまさに、仕事が軌道に乗ってきた大事な時期だ。そんな時に急にお見合いなんてして、本当に大丈夫なのか。仕事に影響したらどうする?今の彼は年収千万クラス。だが結婚相手も確定していない段階で金を使えば、それは実質、他人の妻になるかもしれない女に、先投資してやっているようなものだ。そのくらいの損得勘定は匠にも分かっている。彼は馬鹿ではないし、自分の金を他人に好き勝手使われるのも嫌だった。とはいえ、もう口に出してしまった以上、あとは母親に少し頑張ってもらうしかない。匠はため息をつき、それ以上は考えないことにした。どうせ母親も家で暇を持て余している。自分のために相手探しでもしていれば、ちょうどいい暇潰しになるだろう。少なくとも、暇すぎて余計なことを考える時間は減る。人間、暇になると考え方まで変わって、あれこれ余計なことを考え始めるものだからだ。匠は意識を切り替え、再びデスクへ戻って仕事に取り掛かった。......その頃、ネットではすでにデマが拡散され始めていた。栄斗は緒莉の目の前で、堂々とデマ拡散の指示を出していた。その様子を見て、緒莉は内心大喜びだった。
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