Alle Kapitel von クズ男と初恋を成就させた二川さん、まさか他の男と電撃結婚!: Kapitel 1461 – Kapitel 1470

1602 Kapitel

第1461話

匠は本題へ切り込んだ。「母さん、そろそろ今年は俺にもお見合い相手を探してくれていいと思うんだ」匠の母は「は?」と頭の中を疑問符でいっぱいにした。どういう風の吹き回しなのか、急に息子が目覚めたみたいなことを言い出したからだ。今までの匠は、こんなふうに自分から動くタイプではなかった。会うたびに「仕事が忙しい」とか、「自分の生活のペースを崩したくない」とか、「今は恋愛する気がない」とか、理由を並べてはお見合い話をかわしてきた。とにかく言い訳が多く、あの手この手で見合いを避け続けていたのだ。だからこそ、今日の匠の言葉は母親にとってかなり意外だった。しかし匠はもっともらしい顔で言う。「俺だってもういい歳なんだよ?相手も見つからないのに、母さんは焦らないの?」「そりゃ焦るわよ!でも、あんたがそう思ってくれたなら良かったわ。任せなさい。明日にでもいい子を紹介してもらうから!」匠の母は勢いよく膝を叩き、その場で話を決めてしまった。その言葉を聞き、匠も上機嫌で笑ったが、電話を切る頃になると、今度はぼんやり後悔し始めていた。今はまさに、仕事が軌道に乗ってきた大事な時期だ。そんな時に急にお見合いなんてして、本当に大丈夫なのか。仕事に影響したらどうする?今の彼は年収千万クラス。だが結婚相手も確定していない段階で金を使えば、それは実質、他人の妻になるかもしれない女に、先投資してやっているようなものだ。そのくらいの損得勘定は匠にも分かっている。彼は馬鹿ではないし、自分の金を他人に好き勝手使われるのも嫌だった。とはいえ、もう口に出してしまった以上、あとは母親に少し頑張ってもらうしかない。匠はため息をつき、それ以上は考えないことにした。どうせ母親も家で暇を持て余している。自分のために相手探しでもしていれば、ちょうどいい暇潰しになるだろう。少なくとも、暇すぎて余計なことを考える時間は減る。人間、暇になると考え方まで変わって、あれこれ余計なことを考え始めるものだからだ。匠は意識を切り替え、再びデスクへ戻って仕事に取り掛かった。......その頃、ネットではすでにデマが拡散され始めていた。栄斗は緒莉の目の前で、堂々とデマ拡散の指示を出していた。その様子を見て、緒莉は内心大喜びだった。
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第1462話

「ああ。適当に噂を流すだけの話だろ」「ええ、そうよ。じゃあ、いい知らせ、待ってるからね」そう言って、緒莉は栄斗の口元へそっと軽いキスを落とした。まるで本物の恋人同士のように親密な空気だった。その一瞬で、栄斗は完全に有頂天になった。今すぐ緒莉のそばに張り付き、片時も離れたくないと思うほどに。だが緒莉は、そんな彼を軽く押し戻し、一歩距離を置いた。犬を躾けるにも、飴と鞭の加減が必要だと彼女は分かっている。少し自由に走らせる時間も必要なのだ。「焦らないの。これから先、いくらでも機会はあるから」緒莉は色っぽくウインクを投げながら言った。「この件を上手くやってくれたら、ご褒美をあげる」その言葉に、栄斗は一気に目を輝かせる。「どんなご褒美?」緒莉は彼の耳元へ顔を寄せ、小さな声で何かを囁いた。その瞬間、栄斗の目がぱっと明るくなる。「絶対だぞ」「もちろん」緒莉は自信満々に笑った。飼い犬には、適度に餌を与えなければならない。そうでなければ、どうして大人しく働いてくれるというのか。動物ですら褒美と罰が必要なのだ。まして相手は、生きた人間。緒莉は男を操るのが上手かった。彼女の保証を得たことで、栄斗のやる気はますます高まった。その夜、緒莉の見ていない場所で、彼は密かに自分の裏の人脈へ指示を出す。ネット上で、徹底的にデマを拡散しろ、と。......もともと紗雪は、ネットの話題にそこまで敏感なタイプではなかった。だが今回の件は、普段ほとんどネットを見ない彼女ですら気付くほど大きくなっていた。それでも最初は、その話題の中心が自分だとは思っていなかった。清那から電話が来るまでは。「紗雪、トレンド見た?」「トレンド?何かあったの?」紗雪は不思議そうに返した。このところ彼女はバラエティ番組の件で忙しく、スマホをいじる時間すらほとんどなかった。たまに自分の名前がトレンドに入っているのを見かけても、詳しく開きはしなかった。監督が公開した番宣ポスターが話題になったのだろう、くらいに思っていたのだ。だから皆、自分の名前を付けて「この新人は誰だ」と騒いでいるだけだと思っていた。しかし紗雪の言葉を聞いた清那は、明らかに焦った様子で言った。「まだ見てないなら.
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第1463話

「そんな連中のことで腹を立てる必要ないよ。放っておくのが一番だと思う。どうせそのうちみんな忘れるし、時間が経てば自然に収まるから」清那のどこか噛み合わない慰めを聞きながら、紗雪は思わず苦笑した。額を押さえながら、呆れ半分に言う。「さっきから何を言ってるの......もう、自分で見るから。例の内容、全部送って」自分でも話が滅茶苦茶になっていると気付いたのか、清那はしばらく黙り込んだ。あれこれ言ううちに、逆に自分まで混乱してしまっていたのだ。紗雪の言葉を聞いて、これ以上隠し通すのは無理だと悟った。「......分かった」結局、清那は折れた。どれだけ隠したところで、いずれ紗雪自身が向き合わなければならない問題だ。それに、もし裏で糸を引いている人間を突き止められれば、それは紗雪にとっても悪いことではない。何も悪いことをしていない側ばかりが晒され、加害者だけがのうのうとしているなんて、おかしな話だ。ほどなくして、清那から大量のスクリーンショットやリンクが送られてきた。それを見た瞬間、紗雪は眉をきつく寄せた。「これ、誰が最初に流したの?」「SNSの大手アカウントだよ。紗雪のポスターを見たあとに暴露話として投稿したの」清那は怒りを抑えきれない様子で続ける。「ほんと、この人たち何考えてんの。紗雪と兄さんの結婚なんて普通の流れじゃん。なのに何が『金持ちに取り入った』だとか、『結婚を利用してコネを作った』だとか......こんなの、普通に名誉毀損でしょ?責任取らなくていいわけ?」言葉を重ねるほど、清那の怒りは膨れ上がっていった。考えれば考えるほど腹が立つ。紗雪がどうしてこんなふうに悪く言われなければならないのか。今のネット民は、キーボードさえ持てば何にでもなれると思っている。画面の向こうに隠れながら、自分が世界を支配しているかのように、好き放題に他人を叩く。そう考えると、清那はますます悔しくなった。そんな彼女を見て、紗雪はむしろ苦笑混じりに宥める。「大丈夫。私は別に怒ってないんだから、清那も落ち着いて」「私は、あなたの代わりに怒ってるんだよ!」清那の声は少し詰まり、今にも泣きそうだった。「みんな、あなたのこと何も知らないくせに......どうしてあんなふうに悪く言えるの?」
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第1464話

今のところ、紗雪の頭に浮かぶ人物は一人しかいなかった。それ以外に、ここまで執拗に自分を狙う理由が思い当たらない。そんな中、ほどなくして監督から電話がかかってきた。スマホ画面に表示された名前を見ても、紗雪は特に驚かなかった。ネットであんな騒ぎになっている以上、一番焦っているのは間違いなく監督だろう。まだ番組は放送前なのに、すでにここまで混乱しているのだ。もし悪意ある人間にこの件をさらに利用されたら、番組自体にまで影響が及ぶかもしれない。幸いだったのは、放送開始前に問題が起きたことだ。もし放送期間中にこんな騒動になっていたら――監督がどれほど大変な目に遭っていたか、想像もつかない。彼女は深く息を吸い込み、覚悟を決めて電話に出る。「監督――」そう呼びかけた瞬間、相手は焦ったような口調で言った。「二川さん、ネットの件は気にしないでください。私が何とかしますから」「......え?」紗雪は一瞬、意味が理解できなかった。彼女はてっきり、番組中止の話をされるか、あるいは真っ向から責められるものだと思っていたのだ。今回の騒動の発端は自分だ。もし自分一人のせいで番組全体に迷惑をかけたのだとしたら、当然申し訳なさを感じる。だからこそ、彼女はすでに番組降板や放送延期の覚悟までしていた。「......私のこと、責めないんですか?」紗雪は戸惑いながら尋ねた。だが監督の方がむしろ不思議そうだった。「どうして責める必要があるんですか?君は何か悪いことをしたんですか?」「......してませんけど」「だったら話は終わりですよ。あれは全部、ネットの連中が勝手に騒いでいるだけですから。もし私がそのせいで番組を止めたり、君に偏見を持ったりしたら、それこそ連中と同じ卑怯者になってしまうじゃないですか」その言葉を聞いた瞬間、紗雪の胸は熱くなった。電話に出る前までは、本気で監督が問い詰めに来たのだと思っていた。だからこそ、降板すら覚悟していたのだ。それなのに、返ってきたのはこんなにも温かい言葉だった。本来なら、監督を励ますべきなのは自分の方だったはずだ。なのに最後には、逆に自分が慰められている。この時間の積み重ねで、二人の間には確かに「戦友」のような信頼関係ができていたのだろう。「で
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第1465話

できることなら、普通は少しでも損失を減らそうとするものだ。「つまり、私は最初から君を降ろすつもりなんてないということですよ。今日電話したのも、それを伝えたかっただけなんです。安心してください。番組は予定通り進めます」その言葉を聞き、紗雪は思わず目を見開いた。驚きのあまり唇がわずかに開き、しばらくしてからようやく呆然とした声を漏らす。「......監督がそこまで考えているなんて、正直、予想外でした」「まあ、普通はそう思いますよね」監督は笑いながら彼女を安心させるように言った。「だから、私が君を降ろすんじゃないかなんて心配する必要はありません。最初から選択肢にすら入っていないんです。そもそも、君みたいに相性のいいパートナーには今まで出会ったことがありません。たかがネットの騒ぎ程度で君を切るなんて、損な話にしかなりません」その言葉に、紗雪は胸がいっぱいになった。彼女は率直に言う。「そう言っていただけて、自分のすべきことがはっきり分かりました。安心してください。監督が私を降ろさない限り、私もちゃんと最後まで番組をやり切ります」「よし、それじゃ予定通りのスケジュールで進めましょう」少し考えたあと、紗雪は口を開いた。「......ネットの件なんですけど、私から釈明した方がいいでしょうか?」すると監督は落ち着いた声で答える。「いや、今はまだ少し泳がせておきましょう。相手はようやく尻尾を見せ始めた段階です。たぶん、まだ後続のネタを用意していますよ」監督は鼻で笑った。「こんな露骨なやり口、長年この業界にいる私が見抜けないわけないでしょう。相手は最初から君を引きずり下ろす気で動いているんです。もし私がその流れに乗って君を番組から外したら、それこそ向こうの思う壺じゃないですか」その話を聞き、紗雪は改めて監督の判断力に感心した。「私も、たぶん監督の推測通りだと思います。向こうは私を狙ってる」「だからこそ、早めに黒幕を突き止めた方がいいですね」監督は真面目な口調で続ける。「二川さんは自分でスタジオも立ち上げたばかりでしょう?こういう噂は、今後の仕事や信用にも響きます。立ち上げ直後の時期は、人脈を広げるのが特に大事なんですから」その言葉の一つ一つから、監督が本気で自分の立場を考えてくれているのが伝わって
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第1466話

「あなたまで知ってたの?」紗雪は少し意外そうに尋ねた。ネットの騒動は、どうやら周囲の人間はみんな把握していたらしい。何も知らなかったのは、今の今まで本人だけだった。もし清那が連絡してこなければ、彼女はおそらく最後までネットを見ていなかっただろう。吉岡は真面目な顔で頷く。「もちろんです。社長がバラエティ出演を発表してから、ずっとネットの情報を追ってましたから」そう言いながら、彼は例の番宣ポスターを取り出した。「ほら、ちゃんと保存までしてます。いやほんと、この写真めちゃくちゃ綺麗なんですよ。うちの社長、どの角度から見ても完璧に写ってます」そんなふうに真正面から褒められ、紗雪は少し頬を赤くした。「勤務中にそういうこと言わなくていいから......」だが吉岡は納得していない。「いやいや、適当言ってるわけじゃないですって。これ、本気で思ってますから。それに私、前からずっと社長って綺麗だと思ってました。あの芸能人と並んでても、社長の方が目立ってましたし。ポスター見た瞬間、最初に目に入ったの社長の顔でした」その言葉に、紗雪はますます居心地悪そうになる。「相手はプロの芸能人なんだから、比べても仕様がないよ。私はただ、建築の魅力を伝えるために出演するだけなんだから」そして彼女は珍しく真面目な顔で続けた。「もうそんなこと言わないでね。人にはそれぞれ違う魅力があるんだから」それを聞いた吉岡は、ますます感心したような顔になった。――やっぱり、自分は人を見る目があった。こんな謙虚さや器の大きさは、誰にでも持てるものじゃない。しかも紗雪は、周囲にどれだけ褒められても、決して浮かれない。ちゃんと自分のペースを持っていて、他人に振り回されることもない。彼女の周囲には称賛する人間が山ほどいる。それでも志を忘れず、自分を見失わない。それは本当に難しいことだ。「......はい」彼としては、女の子に「綺麗だ」と言って嫌がられることはないと思っていた。だから紗雪を褒めることにも、何の問題もないと思っていたのだ。だが彼女は、他の女性たちとは少し違っていた。女性にはそれぞれ違う美しさがあり、誰かと競う必要なんてない――そう本気で考えている。普通なら、比べられることを喜ばない女性なんて
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第1467話

「もし向こうの目的が私を降板させることなら――残念だけど、その時点でもう失敗してるよ」そう言った紗雪は、軽く眉を上げて笑っていた。その姿はどこか自由奔放で、眩しさがあった。吉岡は一瞬、思わず見惚れてしまう。彼は前から自分の社長が綺麗だとは思っていた。だが、どれほど綺麗なのかを、うまく言葉にできたことはなかった。ただ、このところずっと紗雪のそばにいるうちに、自分の美的感覚まで知らないうちに引き上げられている気がしていた。毎日のように彼女の顔を見ているせいで、他の人間にはほとんど反応しなくなっている。芸能界には美男美女が溢れているというのに、彼はまるで興味が持てなかった。――もっとも、吉岡自身は、そんなものを見る暇があるなら仕事をした方がいいと思っている。その時間でプロジェクトを増やし、自分の能力を磨いた方がよほど意味がある。「......本当に、調べなくていいんですか?」吉岡はまだ諦めきれない様子だった。どうしても、紗雪が傷つけられるのを黙って見ていることができない。だが紗雪自身は、自分が何をしているのかちゃんと理解していた。彼女には彼女の進め方がある。「ええ。本当に大丈夫だから」「......分かりました」吉岡は少し肩を落とした。それでも部屋を出る前に、何度も念を押す。「社長、もし何か私にできることがあったら、絶対言ってくださいね。ネットの件だって、私なりに勉強して対応できるようになりますから」紗雪は笑いながら「OK」のサインを見せた。その様子を見て、吉岡もようやく安心したように部屋を後にする。自分では、大した力になれないことも分かっている。それでも、少しでも紗雪の負担を減らしたかった。自分にできることなら、何でも全力でやるつもりだった。――ただ、どうか見捨てないでほしい。ずっと、紗雪のそばで働いていたい。ドアが閉まる音が響いてから、紗雪は静かに息を吐いた。ネットの件について、彼女も今ではだいたい察しがついている。ここまで自分に敵意を向ける人間など、緒莉以外に思い浮かばない。彼女はこれまでずっと、口にしてきた通りの人生を歩いてきた。出会ってきたのは友人や恩師ばかりで、敵などほとんどいなかった。だが唯一の例外が、緒莉だった。彼女の存在
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第1468話

緒莉はわざと残念そうな口調を作った。「でも......私はただ、妹に少し知らしめてやりたいだけなの。まさかバラエティまで降板することになるなんて......こんなの、お母さんに知られたら絶対怒られちゃうよ......」電話の向こうで、それを聞いた栄斗はなんとなく不快感を覚えた。緒莉の言いたいことは、実際かなり分かりやすい。彼女が許可しなければ、自分だってここまで大々的にデマを撒いたりはしなかった。そもそも最初、栄斗は紗雪という人間の存在すら知らなかったのだ。全部、緒莉の口から聞かされた情報だった。それなのに今になって、自分は関係ありませんと言わんばかりの態度を取っている。確かに彼は緒莉の顔に惹かれていた。だが、一度手に入ってしまうと、皮肉なことに彼の中の熱は少しずつ冷め始めていた。とはいえ、まだ飽きたわけではない。だから今は、とりあえず彼女を手のひらの上で大事に扱い、話を合わせてやるつもりだった。「前に緒莉が言ってただろ。あいつ、君にかなり嫌なことしてきたって。だから少し懲らしめてやろうと思ったんだよ。ちょっとやり過ぎてもいいじゃないか」栄斗は自然に緒莉へ逃げ道を作ってやった。どうせ若い女だ。適当に機嫌を取っておけばいい。それより今の彼が気になっているのは、緒莉が約束した「ご褒美」の方だった。だから自分からその話題を持ち出した。だが緒莉は、わざと何でもない風を装って言う。「でも、まだ結果が完全に出たわけじゃないでしょ?」「まあ、それもそうだな」栄斗は納得したように笑った。「じゃあ、最終結果をゆっくり待つとするか。でも俺から見れば、あいつのバラエティ出演はもう終わりだな」その点について、栄斗はかなり自信を持っていた。普通の番組なら、こんな悪評だらけの素人を使い続けたりしない。紗雪には知名度もない。ただの一般人だ。消えたところで、番組への影響なんて大したことはない。まともな頭のある監督なら、絶対に紗雪を再起用したりしない――栄斗はそう確信していた。だからこそ、あれほど自信満々に緒莉へ保証できたのだ。緒莉は何も言わなかった。だが、その目には隠しきれない笑みが浮かんでいる。まさか栄斗が、ここまで綺麗に仕事を片付けるとは思わなかった。自分の予想通
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第1469話

だが一階のリビングへ降りると、ソファには美月が座っていた。その姿を見た瞬間、緒莉の胸に嫌な予感が走る。彼女は気付かれないようそのまま立ち去ろうとした。しかし次の瞬間、美月が口を開く。「緒莉、ちょっと来なさい。聞きたいことがあるの」その一言で、緒莉の心臓がどくりと鳴った。――やっぱり。嫌な予感は当たった。それでも彼女は表情を崩さず、ゆっくり足を動かして美月の前まで行く。「お母さん、どうしたの?」緒莉は何も知らないような無垢な目で尋ねた。美月は何気ない雑談のような口調で言う。「最近、会社で一件プロジェクトをまとめたって聞いたわ」その言葉に、緒莉は素直に頷いた。「うん。このところ、ずっと自分の能力をもっと伸ばしたいって考えてたの。いつまでもお母さんの後ろに隠れて、足を引っ張るだけじゃ駄目だと思って」緒莉は真剣な顔で続ける。「だから、今まで会社で保留になっていた提携案件を、早めに進めようって思ったの」「でも、どうして川口社長と組もうと思ったの?」実のところ、美月もそこが気になっていた。秘書の山口から、「緒莉がプロジェクトを取った」と報告を受けた時、彼女は純粋に嬉しかったのだ。それはつまり、自分の見る目が間違っていなかったということだから。紗雪がいなくても、会社はちゃんと案件を取れる。会社は紗雪一人を中心に回っているわけではない。もし本当にそうなら、これまで会社はどうやって運営してきたというのか。まさか紗雪がいなくなっただけで、会社が立ち行かなくなるとでも?そんな話、考えれば考えるほど馬鹿げている。美月自身、そんな状況は絶対に認めたくなかった。彼女が望んでいるのは、会社を常に自分の手の中で掌握しておくことだ。誰か一人に依存しなければ生き残れない会社など、あってはならない。たとえ紗雪がいなくても、秘書を雇うことはできるし、緒莉を育てることだってできる。だが、会社を完全に紗雪に握らせることだけは絶対に嫌だ。まして今や紗雪は、あからさまに自分を裏切った存在だ。そんな相手に全ての希望を託していたら、笑いものになるだけだ。緒莉も、美月の考えをちゃんと理解していた。だからこそ、自分の意図を丁寧に説明し始める。「私は、会社に案件が溜まりすぎてるせいで、
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第1470話

実際のところ、緒莉自身もよく分かっていた。美月が一番嫌うのは、姉妹同士で争い合うことだということを。美月はずっと、自分と紗雪のことを「仲の良い姉妹」だと思い込んでいた。少なくとも、姉妹の間に亀裂などあってはいけない――そう信じている。だからこそ、緒莉と紗雪の確執は、あくまで水面下に隠しておかなければならない。表に出してはいけないのだ。もし美月に知られてしまえば、会社での立場も、美月の中での自分の評価も揺らぎかねない。今の彼女はまだ二川グループの庇護下にいる。何をするにも、美月の意向には逆らえない。美月は緒莉の顔をじっと見つめる。少なくとも、嘘をついているようには見えない。だからもう一度確認するように問いかけた。「本当に、知らないの?」すると緒莉は大きな瞳を瞬かせ、逆に無邪気そうに問い返す。「え......私、知るべきだった?」その反応に、美月もそれ以上疑う様子は見せなかった。責め立てることもせず、ただ静かに、ネット上で紗雪に起きている騒動を説明していく。話を聞き終えた緒莉は、驚いたように口元を押さえた。「紗雪を狙う人がいる?紗雪、大丈夫かな......」彼女がそう言う間も、美月はずっと表情を観察していた。そして最後には、自分の考えすぎだったのだと判断する。緒莉の驚きは、とても演技には見えなかったからだ。「この件は、さっき伊藤が教えてくれたものよ」美月は穏やかな口調で続ける。「何にせよ、紗雪も二川家の人間なんだから。あの子の結婚は知っていたけれど、まさかこんな形で世間に知れ渡るなんてね」少し間を置いてから、美月は真面目な顔で言った。「正直に言えば、私は紗雪のスタジオが順調に立ち上がったのも、京弥のおかげなんじゃないかって少し疑ってる」その言葉を聞き、緒莉は内心かなり驚いた。まさか美月まで紗雪を疑っているとは思わなかったのだ。彼女はこれまで、美月は本当は紗雪に甘いのだと思っていた。表向きは平等を装っていても、心の中では紗雪を優先しているのではないか、と。だが今日のやり取りを見て、緒莉の考えは少し変わり始めていた。美月は、どうやらそこまで紗雪側に立っているわけではない。むしろ今は、自分の側に立って紗雪を批判しているようにすら見える。――ど
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