「崩れた......?」清那は思わず二歩ほど後ずさりした。精巧で可愛らしい顔に信じられないという色が広がり、口の中で繰り返す。「崩れたって......どういうこと?」警官はそんな彼女を見て胸が痛み、慰めようと口を開きかけた。だが、その隙を清那に突かれてしまう。彼女は身を低くして、警官の腕の下をすり抜けると、教室棟の方向へ駆け出した。十数年来で一番速く走っているに違いなかった。胸の奥ではまだ「きっと全部嘘だ」と願っていた。だって、あんなに聡明で優秀な紗雪が、こんな災害に呑まれるなんて、信じられるはずがない。あまりの速さに、警官も反応が追いつかなかった。「おい、君!立ち入り禁止だって言っただろ!」慌てて追いかけるが、訓練を受けたはずの自分より清那の脚は速かった。ついに追うのを諦め、立ち止まる。悔しいが、到底追いつけそうにない。そのとき、警官は思い出した。さっき彼女が「友達がホールにいる」と言っていたことを。友達を探しに行ったのか。根が優しい彼は、これ以上は止めずに見逃すことにした。混乱の中、誰も気づきはしないだろう。左に曲がった先、ホールの建物はまだ見えない。だが人がどんどん集まってきていた。心臓は早鐘を打ち、胸の奥を締め付ける。ようやくわかった。さっきからの高鳴りは錯覚なんかじゃなかったのだ。そのとき、紗雪はすでに危険に巻き込まれていたのか。清那には、もう他のことを考える余裕などなかった。頭の中は「元気な紗雪に会いたい」という思いでいっぱいだ。誰に対しても後悔なんてしたくない。何より一番辛いのは、紗雪をホールに行かせたのが、自分の頼みだったという事実。全部、自分のせい。そう思った瞬間、涙がにじみ、視界はどんどんぼやけていく。それでも走る足は止まらなかった。ここまで来たのだ。絶対に諦めるわけにはいかない。そしてホールの前に辿り着いたとき、そこに広がっていたのは――瓦礫の山だった。かつての立派な建物は、跡形もなく崩れ落ちている。あまりの光景に、清那は思考が追いつかなかった。遠隔監視で倒壊の瞬間を見ていた校長や幹部たちですら、現場の衝撃には言葉を失ったのだから。想像を絶する光景だった。清那は瓦礫に駆け寄ろうとした
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