現場に着くと、美月は迷わず車を降り、ヒールの音を響かせながらホールの方へと歩いていった。かつて緒莉もこの学校に通っていたので、建物の配置にはそれなりに覚えがある。そのことを思い出した瞬間、美月の胸にさらに強い自責の念が湧き上がる。結局、緒莉のことばかり気にかけていたから、この学校の印象も鮮明なのだ。では紗雪のことは?自分はあの子をどこに置いてきてしまったのだろう......彼女は無意識にバッグを強く握りしめ、罪悪感で胸が締めつけられていった。そんな美月の様子を見て、伊藤も胸が痛んだ。少なくとも、自分の過ちに気づき始めているのは確かだ。それが本気であってほしい――そう願わずにはいられない。そうでなければ、この後も紗雪にとっては救いがないのだから。ご主人を亡くして以来、美月はあまりに孤独で、哀れだった。もし松尾さんがそばにいなければ、本当に寄る辺のない身になっていただろう。あの頃の彼女の目には、緒莉しか映っていなかった。伊藤は思う。だからこそ紗雪は、あまりにも報われない。だが当の美月は、そんな執事の気持ちを察する余裕もなく、頭の中は紗雪のことでいっぱいだった。愛していないわけではない。ただ、どう愛していいのか分からなかっただけ。長い年月が経つうち、それが習慣のようになってしまったのだ。緒莉だけを気にかけ、紗雪には「放っておく自由」を与える――そんな不自然な形で。だが、改めて考えれば、これはやはり間違いだ。外から見れば、二人とも自分の娘。なのにどうしてこんなに差をつけるのか。それは本当に正しいことなのか?美月は拳を握りしめ、ホールにたどり着いた。そこにはすでに人だかりができていて、胸の奥で嫌な音がした。かつて威容を誇っていた建物は、今や無残な瓦礫の山に変わり果てている。記憶にある姿とは、あまりに違っていた。伊藤もその光景に足がすくみ、心臓が沈み込むような思いがした。それでも、必死に気を取り直す。今、ここで自分が崩れてしまってはならない。もし何か役に立てることがあるなら、動けるように備えなければ。彼は自分の役割をわきまえていた。美月は瓦礫の山を見つめ、涙をこらえても目の縁が赤く染まっていく。その視線はやがて人混みの中の校長を捉え
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