紗雪はふと、これまでずっと気になっていたことを思い出した。京弥の「初恋」は一体誰なのか、と。今になって考えると、それってもしかして学生頃の自分だったのでは?でも、彼がさっき瓦礫の中で言っていた、「ずっと前に会ったことがある」。あれはいったい、いつのことなのだろう?どうして自分にはまったく記憶がないのか。それはさておき、今の紗雪は喜びのあまり涙を流すばかりだった。長い時間をかけて探し、恩を返したいと願っていた人が、ずっとそばにいた。しかも、その人は今や自分の夫になっているのだ。こんな話、誰に言っても信じてもらえないに違いない。でも、よかった。神様は彼女に、やり直すチャンスを与えてくれた。まだ遅くはない。彼女にはまだ、誰が自分を陥れようとしたのかを探し出す時間が残されている。それ以上に、これからは京弥のために時間を費やすべきだと思った。長い間誤解し続けてきた彼を、これからはちゃんと愛していこう。それは最低限のこと。そしてもっと大事なのは、二人の関係をどうやって育んでいくかを学ぶこと。今の紗雪の胸の内は、甘やかな思いでいっぱいに満たされていた。一刻も早く現実に戻りたい。ここでこれ以上時間を浪費したくない。知りたかったことは、ほとんど解き明かされた。残りは自分で調べればいい。ここに居続けるのは、もはや意味のない時間の浪費に過ぎなかった。そう心の中でつぶやいたその瞬間、視界が唐突に暗転した。だが、訪れたその感覚は恐怖よりもむしろ喜びをもたらした。体がどんどん軽くなり、頭の中も澄みわたり、全身が心地よさに包まれていく。これは、現実に戻る前触れでは?そう気づいた瞬間、紗雪の唇から笑みがこぼれた。今はただ、京弥に一刻も早く会いたい。一分一秒すら無駄にしたくなかった。現実の京弥さんは、今どうしてるの?心の中でそう問いかけながら、彼への想いがあふれ出す。特に、彼こそが自分が長年探し続けてきた人だと知ってしまった今、京弥に対する気持ちは以前とは比べものにならない。京弥、待っていてね。そう願った瞬間、視界がぱっと明るくなった。次に気づいた時、紗雪は病室のベッドに横たわっていた。考える暇もなく、視線の先で「誰か」が注射器を手に、自分に向けて針
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