「朱莉さん。もしよければ何処かで食事をして帰りませんか? この近くに美味しいイタリアンの店があるんですよ。お詫びにご馳走させて下さい」病院を出ると、京極が朱莉を食事に誘ってきた。「お詫びなんて言わないで下さい。マロンの病気は京極さんのせいではありませんから」すると……。「お詫びなんてただの口実です。朱莉さん。僕は貴女に色々聞きたいことがあるんです。どうか僕の為に朱莉さんの時間を分けて貰えませんか?」京極がいつになく真剣な目で朱莉を見つめている。「き、聞きたいこと……?」朱莉は口元を震わせ、京極は慌てた。「い、いえ! 決して朱莉さんを尋問しようとかそんなつもりはなく……ただ、色々とお話しできればと思っただけなので。答えたくなければ答えなくて結構ですから。ただ朱莉さんと話がしたいだけなんです」京極にはマロンを預かって貰った恩がある。だから彼の誘いを無下にすることは出来なかった。「分かりました。食事……御一緒させて下さい……」躊躇いがちに朱莉は返事をすると、京極が笑顔になる。「良かった……。ありがとうございます、朱莉さん」その笑顔は子供のように無邪気だった――**** 京極が連れて来てくれたイタリアンレストランは堅苦しい雰囲気が一切無く、カジュアルなイメージで料理もバリエーションに富み、美味しかった。 特にデザートのパンナコッタはとても朱莉の好みの味だった。 お店を出て、助手席に乗ると朱莉は嬉しそうにお礼を述べた。「京極さん、今夜は素敵なお店に連れて来て下さり、本当にありがとうございました。イタリアン料理とても美味しかったです」すると京極は笑顔になる。「こんなに朱莉さんに喜んでもらえるとは思いませんでした。てっきり今夜は断られてしまうかと思って、強引にお誘いしてしまったのですが……無理にお誘いした甲斐がありました。これで少し安心出来ましたよ」「え……? それは一体どういう意味ですか?」(今の京極さんの台詞……すごく意味深に取れるのだけど……気のせいかな?)すると、朱莉の質問に答える前に京極が言った。「ああ……あそこにいるのはやはり……」「え?」気づいてみると、そこはもう億ションのエントランスの前だった。そしてエントランスに設置してある椅子に人影がある。朱莉は驚きで目を見開いた。「あ、あの人は……京極さん! 車を止めて
Last Updated : 2025-04-04 Read more