Semua Bab 偽りの結婚生活~私と彼の6年間の軌跡 偽装結婚の男性は私の初恋の人でした: Bab 161 - Bab 170

434 Bab

6-24 朱莉の嘘と母の気遣い 2

 琢磨はホテルで朱莉の分の飛行機の航空券チケットを予約していた。ゴールデンウィークも半ばに迫ってきていた中、何とか片道分の飛行機のチケットを取ることが出来た。クレジット払いを済ませると琢磨は伸びをしながら、呟いた。「片道分か……。朱莉さんが次に東京に戻れるのはまだまだ先になるんだよな……」琢磨は朱莉の母のことを考えていた。時々は朱莉の代わりに面会に行き、様子を伺って朱莉に報告をしたいと考えていた琢磨だったが……。「多分変に思われるだろうな。本来なら翔がお見舞いに行ってあげるべきなんだから……。よし、東京へ戻ったら翔が何と言おうと、時々は朱莉さんのお母さんの面会へ行かせてやる!」琢磨はスマホを手に取ると、朱莉にメッセージを打ち込み、飛行機の便名、日付、予約番号そして「確認番号」を朱莉のスマホに転送した。バーコード転送したのでこれで朱莉はスムーズに飛行機に乗る事が出来るはずだ。メッセージの送信が住むと琢磨は立ち上がった——****「すみません。レンタカーを手配をしたいのですが」 琢磨はフロントに来ていた。明日は朱莉が沖縄へとやって来る。飛行場迄迎えに行き、出来れば琢磨が東京に戻るまでの間、朱莉を連れてついでに沖縄の観光が出来ればと考えていたからだ。「はい、大丈夫です。車種はいかがいたしますか?」男性フロントスタッフが尋ねてきた。琢磨は少しだけ考え……。「ミニバンタイプでお願いします。勿論カーナビ付きで」「お色は何に致しますか?」「色か……なら白でお願いします」「はい、承知致しました。それでは車が届きましたらご連絡させていただきます」琢磨は礼を伝えると、ホテルの中のレストランへと向かった。丁度昼時だった為にレストランはそれなりに混んでいた。琢磨は開いている丸いテーブル席を見つけ、そこに座るとメニュー表を開いた。(流石は一流ホテルだな……。ランチタイムだって言うのに結構な金額じゃないか)琢磨はお金を持ってはいたが、あまり食事にお金をかけるのは好きでは無かった。最悪、食べられればそれでいいと言う考えの持ち主であったので、会社でも殆ど1000円以下のランチばかりを食べていた。そして最近のお気に入りは日替わりで会社の前にやって来るキッチンカーのランチなのであった。琢磨は溜息をつくと、自分の中で一番無難そうなデミグラスソースのかかったオムライ
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6-25 京極の追及 1

 琢磨は部屋でホテルからレンタカー手配の連絡が来るのを待ちながら、沖縄の観光スポットの検索をしていた。そしてふと部屋の時計を見上げて思う。(そう言えば朱莉さんは京極と何時の約束をしているのだろう……)****――15時 朱莉がドッグランへ行くと既にそこには京極が待っていた。「朱莉さん! 来てくれたんですね? てっきり来てくれないのかとばかとり思っていました」京極は少し照れたような顔で朱莉を見つめる。「こんにちは、京極さん。来ないわけ無いじゃないですか。だって約束をしていたのですから」「確かに約束はしましたが、途中で気が変わったりとか、よくある話じゃないですか」「その時は前もってお断りしますよ。それでは行きませんか?」「ええ、そうですね。行きましょう」京極は笑みを浮かべた……。**** 2人で繁華街を歩いていると京極が尋ねてきた。「朱莉さん。教習所の進み具合はどうですか?」「いえ。まだあの後はまだ教習所へは行ってません。色々忙しかったので」すると京極の顔が曇った。「え? 忙しかったんですか? それでは映画の誘い、ご迷惑だったかもしれませんね」「いえ。そんな事は無いですよ。映画を観るのは久しぶりですから」朱莉は笑顔で答えた。(だってマロンを引き取ってくれた人なんだから断る訳にはいかないし)「それなら良かったです、朱莉さんにそう言って貰えると嬉しいですよ」「は、はい」朱莉はいつ沖縄へ行く事を告げるべきかずっと考えていた。(どうしよう……。いつ京極さんに沖縄へ行く事を告げればいい? 今話せば気まずくなりそうだし、やっぱり映画の終わった後で……)そこまで考えていた時、朱莉の翔との連絡用のスマホが鳴った。(そ、そんな……どうして……!?)いつもなら翔からの連絡は朱莉に取って嬉しいことだった。だが、今はタイミングが悪すぎる。「朱莉さん。電話に出なくていいんですか?」朱莉は真っ青になって黙っている。「朱莉さん? どうしたんですか? 何だか顔色が悪いですよ?」京極が心配そうに朱莉を覗き込んできた。「あ、あの、私……す、すみません。体調が悪いので申し訳ありませんが……帰らせていただけますか?」未だスマホは鳴り響いているが、朱莉はそれに出ようとはせずに胸を押さえながら京極に言った。「そうですね。具合かなり悪そうですから
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6-26 京極の追求

 2人で一緒にカフェへ入り、窓際の一番奥の席に座った。朱莉はカフェ・オレを頼み、京極はアメリカンを頼んだ。「朱莉さん。コーヒーだけでいいんですか? 何かケーキでもつけましょうか?」京極は笑みを浮かべて朱莉にメニュー表を差し出してきたが、今の朱莉は緊張で食欲など無かった。「いえ、コーヒーだけで大丈夫です」「そうですか、分かりました」メニュー表を閉じると、京極はじっと朱莉を見つめた。朱莉は覚悟を決めて語りだした。「京極さん、すみません。私はもう試写会へは行けないです。どなたかを誘うか、お1人で行っていただけますか? 京極さんに仮免の時の練習を付き合っていただくことも出来なくなりました。本当に申し訳ございません」朱莉は頭を下げた。「理由を説明していただけますか?」「理由……ですか?」「ひょっとすると、先程の電話と朱莉さんが試写会へ行けなくなった理由、何か関係があるのではないですか?」「……」(どうしよう、本当の理由なんて言えるはずが無い。それに京極さんにはお母さんと同じ嘘が通じるとも思えないし……)「この話、言わないでおこうと思っていたのですが……僕は見てしまったんです」朱莉が沈黙していると京極が突如語り始めた。「見た……? 一体何を……」「この間、ドッグランでお会いした翔さんと明日香さんという方が2人で旅行に行く所を見たのです。沖縄に行くと言ってました」朱莉の目が見開かれた。(そ、そんな……明日香さんはたった一度しか翔先輩の名を呼んでいないのに……京極さんは覚えていたの!?)「あの2人は朱莉さんの身内なんですよね?」京極は朱莉から視線を逸らさない。(どうしよう……)いつしか朱莉の心臓はドキドキと早鐘を打っている。「あ、あの……明日香さんと翔さんは兄妹なんです。あの2人は仲が良いんですよ。だから……」(どうしよう、何とか誤魔化さなくちゃ……)「だから2人きりで沖縄旅行に行ったんですか? 貴女を置いて?」その言葉に朱莉の肩はビクリと動く。(いけない……こんなにおどおどしていてはますます疑われてしまう……何とかしなくちゃ……)「京極さん。私も元々沖縄へ行く予定だったんです。でも母の様態が急変して、それで救急車で運ばれてしまいました。その時の様子は京極さんは御覧になっていましたよね? だから私は沖縄行を取りやめたんです
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6-27 京極と琢磨 1

 ここは明日香の病室――「おかしいな…。朱莉さんが電話に出ないなんて」翔は溜息をついた。「あら?朱莉さん電話に出ないの? 珍しいわね。いつもならすぐに電話に出るのに」明日香は病室のベッドの上で雑誌をめくりながら翔を見た。「うん。確かに少し気になる。例え出られなくても普段ならすぐに折り返しかかってくるのに……」翔は鳴らないスマホを握りしめた。「何かあったのかしらね? 一応琢磨に電話してみたら?」明日香のアドバイスで翔は琢磨に電話を掛けてみると3コール目で琢磨が電話に出た。『もしもし。どうしたんだ? 夕方にはそっちへ行こうと思っていたんだが、何か急用か?』「ああ……急用って訳じゃないんだが、さっき朱莉さんに電話を入れたんだが出ないんだよ。それに折り返しの連絡も無いし……」『朱莉さん、今日は映画の試写会に行くって言ってたから、それで出ないんじゃないのか?』「へぇ……映画の試写会にか。誰と行くんだ?」『おい……お前、喧嘩売ってるのか?』受話器越しからイラついた琢磨の声が聞こえてくる。「急にどうしたんだよ? 何か気に障ることお前に言ったか?」『京極って男と行くんだってよ』「京極……京極ってあの朱莉さんに犬を預けた?」『え? おい翔。お前、京極って男知ってるのか?』「偶然外で会って紹介されたんだ。今回沖縄旅行へ行く時も偶然会って……」『お前、まさか旅行へ行くこと告げたのか?』受話器越しから琢磨の怒りを抑えた声が聞こえて来る。「ああ、つい……」『お前……この馬鹿! 何でもっと早くあの男と会ったことを俺に言わないんだ!? あの男はなぁ、ことあるごとに朱莉さんに接触してるんだよ! ひょっとする俺達のことを探っている産業スパイだったらどうするんだよ!』受話器越しから琢磨が怒鳴りつけてきた。「さ、産業スパイだって?」そんなまさかと翔は思いたい。だが確かにあの男は必要以上に朱莉のことを見守っていた気がする。自分達だって朱莉の母親が緊急搬送される姿に気が付かなかったのに、あの京極と言う男はそれに気が付いていたのだから。しかし突然琢磨の方から謝罪してきた。『いや……すまなかった。翔……俺が悪かったんだ。本当はあの京極って男は以前から朱莉さんに近づいていたんだ。だが朱莉さんが契約書の件で浮気は駄目だと書かれていただろう? 自分は京極に好意
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6-28 京極と琢磨 2

—―その頃。 京極に追及されていた朱莉は俯いたままじっと身じろぎをしないでいたとき。今度は朱莉の個人用のスマホが着信を知らせた。朱莉はスマホをチラリと見て目を見開いた。(九条さん!)「朱莉さん……今度は違うスマホが鳴っていますが?」京極が朱莉に声をかけてきた。「あ、あの……電話……出てもよろしいでしょうか?」朱莉は遠慮がちに京極に尋ねた。「ええ、別に構いませんよ。どうぞ」朱莉がすみませんと言って電話に出る姿を京極は黙って見つめていた。「もしもし……」『朱莉さん! 今、誰かと一緒にいるのか!?』受話器越しから琢磨の切羽詰まった声が聞こえてきた。「あ、はい……。京極さんと一緒です……」朱莉は目の前に座っている京極の姿をチラリと見た。京極は自分の名前が出たので、朱莉をじっと見つめた。『そうか……やはり朱莉さんは京極と一緒にいたんだな? だからさっきは翔の電話に出なかったのか?』「は、はい……」『分かった。朱莉さん、電話を京極に代わってくれ』「え? い、一体何故ですか?」朱莉は琢磨の突然の申し出に驚いた。『何故って……朱莉さん。今困ったことになっているんじゃないのか? 俺が朱莉さんに代わって話を聞くよ。京極に電話を渡してくれ』(九条さん……!)確かに朱莉は今ピンチの状態に陥っていた。(だけど……九条さんを巻き込むなんて……)『いいから、俺に任せろ。元はと言えば朱莉さんをこんなことに巻き込んだのは全て俺達の責任なんだから』受話器越しから琢磨の気遣う声が聞こえてくる。「分かりました……」朱莉はスマホを京極に差し出した。「あの……電話の相手は九条さんからなのですが……京極さんとお話がしたいと言われているので、代わっていただけますか?」「僕と……話ですか?」「はい、よろしいでしょうか?」「ええ、僕は構いませんよ。ではお借りします」京極は朱莉からスマホを預かると耳に押し当てた。「もしもし……」『京極さんですね? 朱莉さんに何の話をしようとしていたのですか?』「何故貴方にお話ししなければならないのですか?」『朱莉さんを苦しめているのじゃないかと思いましてね』「苦しめている? それを貴方が言えるのですか?」京極は口角を上げた。『どういう意味でしょうか?』琢磨は苛立ちを抑えながら尋ねる。「僕から言わせれば、
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6-29 京極との会話 1

 朱莉が電話を切ると、早速京極が話しかけてきた。「朱莉さん。先程の彼も今沖縄にいるのですね。明日、皆さんと合流されるのですか? でも何故副社長の秘書である九条さんも沖縄へ行かれているのですか? 本当は何か沖縄でトラブルが起こったのではないですか?」「京極さん……」 彼はマロンを引き取ってくれた恩人だ。だけど、これ以上何か口を開けば翔との契約婚を見抜かれてしまうかもしれない。万一世間にばれてしまえば、大変なことになってしまう。(私がもっとうまく立ち回ることが出来たなら……こんなことにはならなかったかもしれないのに……)京極に心配をかけ、九条や翔。そして明日香に迷惑を掛けてしまうことになるかもしれない。自分一人ならいくらでも犠牲になっても朱莉は構わないと思っている。けれど、どうすれば今の危機的状況を脱することが出来るのか、もう朱莉には分からなくなってしまっていた。すると京極がため息をついた。「朱莉さん……。僕は先ほども言いましたが、他の人達はいざ知らず、貴女だけは困らせたくは無いんです」朱莉は黙って京極を見つめた。「貴女が困るのであれば……いいでしょう。僕はこれ以上あなた方の関係を追及するのはもう止めます。九条さんにも言われましたが、考えてみれば僕は第三者の人間ですから、口を挟む権利なんか初めから有りませからね。だけどこれだけは教えてください。貴女が沖縄へ行く本当の理由を教えて下さい。お願いします。僕は貴女が本当に心配なんです」そして京極は頭を下げてきた。一方、これに驚いたのは朱莉の方だ。「そ、そんな京極さん。どうか頭を上げてください。それに京極さんはマロンを引き取ってくれた恩人ですから」(私を気の毒に思って京極さんはマロンを引き取ってくれたのだから……何もかも黙っている訳にはいかないわ……)「分かりました。沖縄で何があったのかお話しま………」そう。別に全てを話す必要は無いのだ。(皆さん。ごめんなさい……)朱莉は心の中で謝罪をすると重たい口を開いた。「実は……沖縄で明日香さんが体調を崩して入院してしまったんです。当分の間は絶対安静らしくて……それで私が沖縄に行って……その、明日香さんの身の周りのお手伝いを……」朱莉はテーブルの下で両手をギュッと握りしめながら京極を見つめる。(大丈夫、全てを話している訳じゃないけど、嘘をついているわ
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6-30 京極との会話 2

「では、朱莉さん。そろそろ帰りましょうか? 明日の準備もあるでしょうし。お引止めしてすみませんでした。映画は……そうですね。少し照れ臭いけど母と2人で観に行って来ることにします」京極は照れ笑いする。「そうですか……お母様と」(お母さん……早く元気になったら一緒に出掛けたいな……) 2人並んで歩きながら、京極はマロンの様子を朱莉に詳しく教えてくれた。あれ以来マロンはとても元気に遊びまわっていると言う。それを聞いて朱莉は安心した。**** 億ションへと続く並木道を歩きながら京極が話しかけている。「朱莉さん。明日の飛行機の時間は何時の便ですか?」「はい、御前10時の便になります」「10時ですか……なら僕が車で羽田空港まで送りますよ。荷物もあるでしょうし」朱莉は京極の提案に驚いて慌てた。「そんな! とんでもないですよ。沖縄へ持って行く荷物はもう先に郵送手続きをしたんです。本当に身軽な格好で行くので大丈夫ですから」「いえ、送ります。送らせて下さい」京極は立ち止まると朱莉をじっと見つめた。その顔はとても真剣で、そこまで強く申し出をされれば朱莉は頷くしか無かった。「すみません……お仕事もあるのにご迷惑を……」「迷惑だなんて言わないで下さい。だって僕から申し出たんですから。でも……そうですね。もしそう感じられるのであれば……朱莉さんの沖縄の住所を教えて下さい」「え? わ、分かりました。では決まったらメッセージで送りますね」「ありがとうございます」京極は満足そうに笑みを浮かべた—―  億ションの前で別れた後、朱莉はエレベーターに乗り込み溜息をついた。(翔先輩の電話が切れて九条さんから電話があったってことはきっと翔先輩が電話に出なかった私を気に掛けて九条さんに連絡を入れてくれたんだろうな……。どうしよう、心配かけさせちゃった。部屋に戻ったらすぐに謝罪のメッセージを送ろう。それに九条さんにも迷惑かけちゃったから電話もいれないと……)朱莉は頭の中で部屋に帰ったらやるべきことを頭の中に思い浮かべるのだった——****ここは沖縄の病院――ふさぎ込んだ琢磨が明日香の入院している個室の椅子に座っている。「ちょっと、仮にも私の前でそんな辛気臭い顔しないでくれる? こっち迄気がめいってくるわ」明日香が雑誌を閉じると琢磨に言った。しかし、琢磨はその台詞
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6-31 旅立ち前夜

「ただいま……」朱莉は肉体的にも精神的にも疲弊しきっていた。何とか気力で自分の部屋の扉の前に辿り着くと、鍵をと出してドアを開けた。するとドアを開けると同時にスマホにメッセージが届いた。相手は琢磨からであった。「九条さん……。電話しようと思っていたのに、先にメッセージが届くなんて……」朱莉はスマホをタップして画面を確認した。『朱莉さん、25歳の誕生日おめでとう。1日遅れになるけど、明日何かお祝いしよう』メッセージにはハッピーバースディのメロディーと、ケーキの上に乗せたろうそくがパチパチと燃えている動画が添付されている。「履歴書で私の誕生日覚えていてくれたんだ……ふふ。可愛い動画。わざわざ探して、添付してくれたのかな?」その姿を思い浮かべ、思わず朱莉の顔に笑みが浮かぶ。ここ何年も誕生日のお祝いの言葉は母からしか貰っていなかっただけに、朱莉は嬉しく思い、スマホをギュッと握りしめた。(九条さんて、本当に気配りが出来る人なんだ……だから仕事も出来て、翔先輩の秘書を務めていられるんだろうな……)でも……朱莉が一番お祝いの言葉をかけて欲しい相手からは……。「翔先輩は、きっと今頃明日香さんと一緒にいるんだろうな……」朱莉は寂し気に呟き、部屋に入ると琢磨にお礼と謝罪のメッセージを送ることにした。本当は電話の方が良いかもしれないが、京極のことを聞かれたくはなかったからだ。『九条さん。本日はご迷惑をおかけしてしまい、大変申し訳ございませんでした。誕生日のメッセージ、とても嬉しいです。明日からまたお世話になります。どうぞよろしくお願いいたします』メッセージ内容を確認すると琢磨に送信し、次は翔に電話に出ることが出来なかった詫びのメッセージを送ることにした。『本日は、電話に出ることが出来ずに大変申し訳ございませんでした。明日、沖縄へ行きます。どうぞよろしくお願いいたします。明日香さんにもお伝えください』「……これでいいわね」翔にメッセージを送ると、朱莉はネイビーに水と餌を与える為にリビングへ向かった——「ネイビー。明日は暫くの間ケージの中にいないといけないけど、我慢してね」餌を食べているネイビーの背中を撫でながら朱莉は語りかけるのだった……。 その夜――朱莉の元に病院にいる母から電話が入った。誕生日のお祝いの言葉と気を付けて沖縄へ行くように母から言
last updateTerakhir Diperbarui : 2025-04-10
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7-1 朱莉の旅立ちと彼の見送り

今日は朱莉が沖縄へ旅立つ日である。朱莉は6時半に起きると、手早く朝食を取って準備を始めた。 その時、朱莉は2台のスマホに翔と琢磨、それぞれからメッセージの返信が入っていることに気が付いた。琢磨からは羽田空港で何か不明な点があったら連絡するようにと書かれており、翔からは気を付けて沖縄に来るようにと書かれていた。朱莉は翔からのメッセージを見て笑みを浮かべた。(翔先輩、少しは私のこと気にかけてくれてるのなかな……?)すると、再び朱莉の個人用スマホにメッセージの着信を知らせるメロディーが流れた。その相手は京極からだった。『朱莉さん、8時半にドッグランの前で待っていて下さい』短い文章で時刻と場所だけを指定してあった。そこで朱莉はすぐにお礼のメッセージを送り、出発する準備の続きを再開した—―—―8時半朱莉はジーンズ姿にTシャツ、上にブラウスを羽織った姿でドッグランの前で待っていると、すぐに京極がベンツに乗って現れた。「おはようございます、朱莉さん。お待たせしてしまいましたか?」「おはようございます。いいえ、たった今来たばかりなので全然待っていませんから大丈夫です」朱莉は頭を下げて京極に挨拶をした。「荷物はそれで全部ですか?」京極は朱莉の足元に置かれたキャリーケースに肩から下げたキャリーバッグを見つめる。「はい、これだけです。少ないでしょう?」朱莉は笑みを浮かべた。「あの……所で朱莉さん。そのキャリーバックの中身は何でしょう?」京極に尋ねられ、朱莉は眼を伏せると頭を下げた。「申し訳ございません。実はマロンを手放した後、あ、あのウサギなら……アレルギーが無いから大丈夫と主人に言われて……」こんな嘘が勘の良い京極に通じるだろうか?しかし京極はニコリと笑う。「別に謝ることはありませんよ。要するに御主人からウサギなら飼ってもいいと言われたんですよね?」「え……?」俯いて朱莉は顔を上げた。まさかあの京極が苦し紛れの嘘を信用するなんて。「信じますよ。他の人の言葉ならないざ知らず……僕は貴女の言う言葉なら何だってね」それはとても真剣な眼差しだった。「京極さん……」京極からそのような言葉を言われると、朱莉はますます罪悪感という鎖で自分が縛られていくように感じた。(どうしてこの人はここまで私を……?)人の良い京極に嘘をつくのは本当に心苦し
last updateTerakhir Diperbarui : 2025-04-10
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7-2 朱莉の旅立ちと彼の見送り 2

 朱莉と京極は第1旅客ターミナルに来ていた。「あ、あの……京極さん。本当にもうここまでで結構ですから」朱莉はIT企業の社長という立場にある京極に自分のような者に付き添ってもらうのが申し訳なく、何度も断りを述べた。「いえ、いいんですよ。今はゴールデンウィーク期間中で、僕は暇人なんですから」京極は笑顔で言う。「ひ、暇人って……」(そんなはずは無いのに……。だってここへ向かう間も何回もメッセージや電話がかかってきて、京極さんは全て対応してきたのに)「それより朱莉さん。思った以上に道路が空いていたので余裕をもって羽田に着くことが出来たので、何処かで珈琲でも飲みませんか?」「は、はい」もう搭乗手続きも済んでいるし、荷物も預けている。世話になった京極の為に自分が出来るのは彼の要望に応えてあげることだろう……朱莉はそう思って返事をした。 2人で近くにあるカフェに入り、朱莉はアイス・カフェ・ラテを、京極はアイス・ティーをそれぞれ注文し、2人掛けの丸テーブルに座ると京極が話しかけてきた。「明るい日の光で朱莉さんを見て思ったのですが……朱莉さんの瞳はよく見ると黒では無く、ブラウンの瞳をしているんですね」「はい。実は父方の祖父がイギリス人なんです。もっとも祖父は早くに亡くなったそうで、私は会ったことも無いのですけど」すると京極は頬杖をつくと真顔で言った。「ふ~ん……だからだったんですね。朱莉さんが人並み以上に美しい容姿をしているのは」「え……ええっ!?」あまりの唐突な京極の言葉に朱莉は顔が真っ赤になってしまった。「そ、そんな大げさな……今迄一度だって誰からもそんな風に言われたことありませんよ」朱莉は慌てて下を向くとストローでアイス・カフェ・ラテを飲んだ。「そうなんですか? あの九条さんにも言われたことが無いのですか?」いきなり京極の口から琢磨の名前が出てきたので朱莉は驚いた。「な、何故そこで九条さんの名前が出てくるのですか?」そう、普通に考えればそこで名前が出てくるのは琢磨ではなく、夫である翔のはずなのに何故か京極は琢磨の名前を出してきた。「いえ。何となくそう思っただけです。深い意味はありませんよ」そしてニコリと笑う。「……」朱莉は黙って京極を見た。朱莉の方こそ京極の行動が謎で仕方が無かった。京極は背も高く、スポーツマンタイプに見える
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