「ごめん、待ったかな。朱莉さん」15分程経過して琢磨がカフェで待つ朱莉の前に現れた。「いいえ、それ程でもありませんよ。意外と早かったですね」「そうだね。少し近道を発見したからさ」「九条さん。折角ですから何か飲まれて行ってはいかがですか?」「うん……そうだな。それじゃちょっと何かメニュー見てくるよ」「はい、行ってらっしゃい」朱莉の言葉に、一瞬琢磨の顔が赤く染まった。(え……?)しかし、次の瞬間。いつもと変わらぬ様子の琢磨がいた。「それじゃ行ってくるよ」琢磨は朱莉に声をかけ、コーヒーを買いに向かった。その後姿を朱莉は首を傾げながら見守り、ポツリと呟いた。「今の……気のせいだったのかな?」 それから数分で琢磨はアイス・コーヒーを持って戻り、朱莉の向かい側に座ると尋ねた。「朱莉さん。明日香ちゃんの買い物全部終わらせられたかい?」「はい、何とか揃える事が出来ました。これで安心出来ました」「ごめん。明日香ちゃんに色々用事を言いつけられたのに、協力してあげることが出来なくて」「何言ってるんですか、九条さんは翔さんの秘書なんですから、私のお手伝いなんてとんでもないですよ。私のことなら気にしないで、どうぞ翔先輩の力になってあげて下さい」朱莉は慌てて返事をした。「確かに俺は翔の秘書だけど……一人の人間として朱莉さんが心配なんだ」「私は本当に感謝していますよ。翔先輩のこととは関係なく、いつも気にかけていただいてるし、今回の沖縄行きの件にしても航空券の手配から、ホテルの予約。そのうえあんな立派なマンションまで探していただいたのですから。こんなに誰かに親切にしていただいたのは高校生の時以来です。本当にありがとうございます」「朱莉さん……」そこで琢磨は言葉を飲み込んだ。(朱莉さん、高校の時以来って……その相手は翔のことだろう?)どんなに朱莉を手助けしても、結局のところ朱莉にとっての一番は翔だと言う事実に改めて琢磨は悲しい気持ちになるのだった。(だが……朱莉さんの負担を少しでも減らしてあげることが出来れば、それが自分の罪滅ぼしなんだ……)「ところで九条さん、どこに食事に行くか決めてあるんですか?」「まだ特には決めていないんだ。だって今夜は朱莉さんの1日遅れの誕生祝だからね、どんなものを食べたいのか聞いてから決めようかと思っていたんだ。」「
Last Updated : 2025-04-12 Read more