「お客様、それではこちらのお車でよろしいでしょうか?」若い女性社員が朱莉の側に寄ると声をかけてきた。「はい、こちらでお願いします。とても素敵なデザインで、運転席の窓も大きくて見やすいので気に入りました」朱莉は笑顔で答える。朱莉は軽自動車を専門に販売している車の代理店に来ていた。ここは新車から、新古車……いわゆる展示用の車両でほぼ新車に近い車両を扱う店であった。いきなり初心者で新車を買って乗るのは図々しいような気がして、朱莉は敢えて新古車を選んだのだ。しかもたまたま気にいったデザインであったし、カーナビやドライブレコーダーなどは勿論の事、内装も朱莉好みにカスタマイズされていたからである。「それでは手続きを致しますので、店内へお入りください」女性社員に案内されて朱莉は中へと入って行った。それから約1時間後――朱莉は店を出た。事前に車購入時はどのような書類が必要か調べ、必要な物は全て揃えて来たので手続きをスムーズに行う事が出来た。「マンションの地下駐車場の契約も済んでるし……納車までは1週間か。フフフ……楽しみだな」朱莉は笑みを浮かべ、腕時計を見た。時刻は11時少し前を差している。(今からタクシーで明日香さんの病院へ行けばお昼前にはマンションに戻れるかな?)そして朱莉はタクシー乗り場へ向かった―― タクシーに乗る事15分。朱莉は病院へと到着した。翔と新しく契約した書類の書面通り、朱莉は週に2度明日香の元へ洗濯物の交換の為に病院へ足を運んでいた。明日香との会話は殆ど無く、挨拶をする程度だったのが……何故か今日は違った。――コンコン病室のドアをノックしながら朱莉は声をかける。「明日香さん、朱莉です。いらっしゃいますか?」すると中から返事があった。「いるわよ、どうぞ」「失礼します」朱莉は言いながらドアを開ける。「こんにちは、明日香さん。お腹の具合はどうですか?」「そうね……大分調子が良くなってきたわ。」明日香は真剣な眼差しでPC画面を見つめている。おまけに何故か顔色が悪い。(どうしたんだろう? 随分熱心に画面を見ているようだけど……?)「明日香さん、クリーニング済みの着替えを持ってきたので、入れておきますね」朱莉は明日香の衣装ケースにしまいながら声をかける。「ありがとう、朱莉さん。……いつも悪いわね」すると背後か
Terakhir Diperbarui : 2025-04-16 Baca selengkapnya