「鳴海様、今日はインタビューありがとうございました」店を出ると女性記者は翔にお礼を述べてきた。「いえ、こちらこそ中々予定が取れずにすみませんでした」「それにしても……」女性記者は意味深に笑う。「?」「いえ……まさか、よりにもよってバレンタインの日にインタビューが重なるとは思いませんでした」「は、はあ……。そうですね。秘書にスケジュールを管理して貰っていますので、正直こちらも驚きました」「いえ、デート気分を味わえて良かったです。でもそう言えば……」「どうかしましたか?」「あの、実は私たちのテーブルの近くで若いカップルが座っていたんですけど、男性の方が女性を置いて席を立って飛び出して行ってしまったんですよ。あれには少し驚きましたね」「え? そんなことがあったのですか?」「ええ、鳴海様は背を向けて座っていたので気付かれなかったのでしょうね……。可愛そうに。そのお嬢さん泣きながら店を出て行ったんですよ」「……それは酷い話ですね……」翔はうなるように言った。「あ、申し訳ございません。お仕事とは関係ない話をしてしまいましたね?」「いえ。それでは私はここで失礼いたします」「はい。私はここから電車で帰りますので。次号の記事を楽しみにしておいてください」「「失礼します」」互いに礼を言うと女性記者は駅に向かって歩いていった。翔はその後ろ姿を見送ると、踵を返してタクシー乗り場へ向かった。タクシーに乗ると翔は行先を告げ、窓の外を眺めながら思った。(しかしまさかあの姫宮さんがバレンタインの日に女性記者とのインタビューの予定を入れるとは思わなかった……。ひょっとして疲れでも溜まって間違えたのかな?)別にバレンタインだからと言って朱莉と何か約束をしていたわけではないが、バレンタインに女性とレストランで食事は何故か朱莉に申し訳ない気がして、罪悪感を抱いていたのだ。(女性記者と今日食事をしたことは……朱莉さんには黙っていよう)しかし、この時の翔はこれが騒動を引き起こすことになるとは思ってもいなかった――**** ——22時半翔は玄関に入ると郵便受けに紙袋が入っているのを見つけた。(何だろう……?)翔は紙袋の中を覗いて驚いた。そこには上品な皮の手袋と手作りらしきチョコが入っていた。中にはメッセージカードも添えられている。翔はメッセ―ジカー
Terakhir Diperbarui : 2025-05-20 Baca selengkapnya