「でも意外でした。まさか九条さんと翔さんが二階堂社長の後輩にあたるなんて…」朱莉はワインを少しずつ飲みながら二階堂と話をしていた。「ええ、その頃から私はいずれ起業することを考えていて、既に九条を引き入れようと考えていたんですよ。だから九条が鳴海の秘書になるって聞かされた時は正直、驚きを通り越してショックでしたね。何だかこっぴどく振られた気分でしたよ」「振られた気分ですか? それは中々面白い表現ですね」朱莉が二階堂の話に笑みを浮かべた時。「朱莉さん」背後から突然声をかけられた。(え……? その声は……?)朱莉は思わずビクリとなり、恐る恐る振り返るとそこには京極が立っていた。口元は笑みを浮かべていたが……目元は笑っていなかった。「こんばんは、朱莉さん。こうしてまた貴女とお会い出来るなんて奇遇ですね」口元だけ笑みを浮かべながら朱莉に声をかけ、チラリと二階堂を見た。「きょ、京極さんも呼ばれていたのですね?」朱莉は緊張の面持ちで京極を見た。「はい、それにしても今夜の朱莉さんはいつも以上に美しいですね。本当に今夜は何てラッキーなんだろうと思いましたよ」「い、いえ。そんなに大袈裟なことありませんから……」朱莉は俯いた。何故なら、まるで何かに怒っているかのような京極がいつも以上に怖く感じたからだ。一方の二階堂は京極と朱莉の間に流れる緊張感に気が付いた。(一体、どうしたというんだ? この男が来てから様子が変だぞ……? ん?)よく見ると朱莉の手足が小刻みに震えている。(このまま黙って見てはいられないな……)「今この方と私は会話をしていた最中なのです。失礼ですが、貴方はどちら様なのですか?」二階堂は京極から隠すように朱莉の前に立ちはだかる。「貴方は確か『ラージウェアハウス』の創設者の二階堂晃社長ですね?」それを聞いた二階堂の眉がピクリと動いた。「……私のことをご存知なのですか?」「ええ。貴方はIT産業部門では有名人ですからね……ちなみに僕もIT企業経営者なのですけどね。京極正人と申します。朱莉さんとは同じ億ションに住んでいるご近所さんなんですよ。プライベートで朱莉さんと交流があるんです。そうですよね? 朱莉さん?」不意に朱莉は声をかけられ、肩を震わせながら小さく頷いた。「は、はい。そうです……。その節は色々ありがとうございます……」
Terakhir Diperbarui : 2025-05-18 Baca selengkapnya