16時―― 朱莉がお見舞いから帰って来た。「只今戻りました、翔さん」「ああ、お帰り。朱莉さん」翔がエプロンをした状態で玄関まで出てきた。「……」それを見た朱莉がポカンとした表情で翔を見ている。「朱莉さん? どうしたんだい?」翔が首を傾げて尋ねると、朱莉はハッと我に返った。「い、いいえ。翔さんのエプロン姿をはじめて見たものですから。すごくよく似合ってますよ?」朱莉が笑みを浮かべて言うので、つい翔は照れてしまった。「あ、ありがとう」赤面した顔を見られないように、視線を逸らせる翔。「もう殆ど食事の支度は済んでるんだ。朱莉さんは休んでいていいよ」「分かりました」朱莉はコートを脱ぎ、手洗いを済ませると翔の傍へやってきた。「あの、やはり何かお手伝いしましょうか?」「いや。いいよ。あ……そうだな。それじゃ連絡が入ってきたら二階堂先輩を駅まで迎えに行って貰おうかな?」「え? 私が……ですか?」朱莉は怪訝そうな顔をした。「料理の準備は俺がしてるから、朱莉さんが迎えに行ってもらえると助かるよ。ほら、ここから駅は徒歩5分くらいだし……お願いしてもいいかい? 巨大蜘蛛のオブジェ……分かるだろう? そこで待ち合わせをして貰おうかな?」「はい。分かりました」朱莉は素直に返事をした。そんな朱莉を見ながら翔は思った。(本来なら俺が迎えに行くのが筋なんだけどな……。先輩から朱莉さんと接点を持たせろと言われているし……クソッ! だけど不本意だ。先輩と朱莉さんを2人きりにさせるなんて。なまじ先輩は女性慣れしてるから不安だ……。まあ朱莉さんに限って先輩になびく……なんてことは無いと信じたいが)一方の朱莉は翔があまりにも自分を凝視しているから不思議でならない。「あ、あの……翔さん。どうかしましたか?」その時になって翔は自分がぶしつけに朱莉を見つめていることに気が付いた。「い、いや! 何でもないよ。ところで先輩の顔は覚えているかな?」「ええ、大体は覚えています。確かすごく背の高い方でしたよね?」「ああ、そうだね。確か183㎝あるって言ってたからな」「183㎝……すごいですね。私より30㎝も背が高いですよ。私は背が低いですから」「いや? 俺としては背が小さくて可愛らしいと思うけどね」「え?」朱莉は不意を突かれたように翔を見上げた。「あ……そ
Terakhir Diperbarui : 2025-05-22 Baca selengkapnya