翌日―― 航は美幸と共に昨日設置した定点カメラを取りに白鳥の別荘付近に来ていた。航は植え込みの中に隠して置いたカメラを取り出すと美幸に声をかけた。「おい、美幸。誰かに見られる前に車に戻るぞ」しかし美幸は航の声が聞こえていないのか、うっとりと別荘を見つめている。「いいな~素敵だな~こんな別荘……私も一度でいいから泊まってみたいな……」「全く……いつまでそうしているつもりなんだよ。早いとこ帰らないと……」その時、玄関の扉がガチャリと開かれる音がした。「まずい! 誰か出て来る! 美幸、こっちだ!」航は美幸の腕を掴んで引き寄せると、2人で植え込みの中に隠れた。「ねえ、何でコソコソする必要があるの?」美幸が不思議そうに聞いてくる。「馬鹿! 静かにしていろ!」航は小声で注意すると、玄関から出て来た人物に注目し……息を飲んだ。(え……? ま、まさかあれは……!?)すると美幸もその人物に気付いた。「うわあ~すっごく綺麗な人……スラリとして細いし。まるでモデルみたい」「あ、明日香……」気付けば航はその名を口にしていた。「え? 明日香……? あの人の名前、明日香さんていうの? って言うか何故航君があの人の名前知って……」そこで美幸は口を閉じた。何故なら航の顔色が真っ青になっていたからだ——**** あの後、ホテルへ戻った航は定点カメラのチェックをしていた。美幸はしきりと何処かへ遊びに行こうと航を誘って来たが、遊びで来ている訳じゃないと一喝すると、美幸は大人しくなり、自分の部屋へと帰って行った。 ようやく1人になり、静かになったところで航はリュックから機材を取り出して定点カメラのチェックを始めた。映像の中には白鳥や明日香が出入りしている姿が何度も映し出されている。(くっそ〜……京極の奴……俺には一切詳しい事情を明かさずに、ただ白鳥について調べろと言っておいて、本当の目的は明日香と白鳥の関係を調べさせる為だったのか?)そして航は京極の言った台詞を思い出していた――****——1週間前その電話は突然かかってきた。「え? 何だって? 突然電話をかけてきたと思えば……調査依頼だって?」『ああ。そうだよ。君に長野へ行って貰いたいんだ。野辺山高原にあるホテル・ハイネストの総支配人である白鳥誠也という男性の身上調査を行って欲しいんだ』「何
Last Updated : 2025-05-17 Read more