水曜日午前11時半―― 3人は赤坂にある和風料亭『江戸』に来ていた。二階堂の向かい側の席には翔、そしてその隣には姫宮が座っている。テーブルには豪華な懐石料理が並んでいた。「「「……」」」3人は無言で座っていたが、痺れを切らした翔が尋ねた。「どういうことですか? 二階堂社長?」「どういうこととは?」二階堂は落ち着き払った声で答える。「何故そちらは秘書の方が同席していないのですか? しかも料理も3人前しかありあせんけど?」二階堂の隣の空席に目をやる翔。「ああ、実は私の秘書の向井君だが、突然お子さんが風邪を引いてしまって今日は出社することが出来なくなってしまったんだよ。そういう訳ですまないが今日の昼食会は3人でやろう。さて、それでは料理が冷めないうちに皆で食べましょう」言いながら二階堂は早速エビの天ぷらに箸を伸ばし、口に入れた。「うん、美味い! この衣のサクサク感がいい」二階堂が美味しそうに食べている姿を見て姫宮もシイタケの天ぷらに箸を伸ばして口に入れる。「確かにとても美味しい天ぷらですね」翔も2人にならってレンコンの天ぷらを食べてみた。(うん。確かに衣の歯ごたえがいい……そうだ、今度朱莉さんに天ぷら料理を振舞ってみるか……)「ところで先程お話されていた、向井さんと言う方は女性なのですか?」料理を食べながら姫宮が二階堂に尋ねた。「ええそうですよ。7歳になる女の子のお母さんですよ」「まあ。小学生のお母さんだったのですか。子育て中の忙しい中でも秘書という仕事をされている方なのですね。素晴らしい」「ええ、我が社はまだ設立して間もない若い会社ですが既婚女性も多く働いています。フレックスタイム制も導入していますし、希望があれば在宅ワークも出来ます。既に女性社員の何割かは在宅勤務をしていますよ。勿論男性も在宅勤務を希望すればいつでも切り替え出来るようにしてあります」(成程……うちの会社ももっと在宅勤務を奨励するべきかもしれないな)翔は二階堂の手腕に心の中で頷いた。「既婚者で子供のいる女性が社会で活躍できるのは素晴らしいですね」姫宮の言葉に二階堂は尋ねた。「もしかして、姫宮さんは結婚しても仕事を続けたいと思っているんですか?」「ええ、そうですね。仕事は好きですから。あ、でもだからと言って家事の手抜きは考えてはいません。仕事と家庭の
Last Updated : 2025-05-25 Read more