「会長! それは一体どういうことですか!?」ついに翔は我慢できず、声を荒げた。「朱莉さんを偽装婚から、そしてお前から開放する。そして蓮は私が自分の息子として引き取る。私はな……ぎりぎりまで待つつもりだったんだ。お前が私に本当のことを話してくれるのを。なのに、お前は先ほど修也の話を遮ろうとしたな?」「!」翔の肩がビクリと跳ねる。「全く往生際が悪い……。そんなずる賢い人間に、この巨大グループを任せるわけにはいかないな。役員会議にかけるまでも無い。翔、お前は社長になれるだけの器の人間ではない。弱者を踏みにじり、私の目をごまかすために嘘を塗り固めてきた人間に、この会社を任せることは出来ない。アメリカへ戻れ。そして次期社長になる修也の為に尽力しろ。それが嫌なら、一族の名を捨てて出て行け」「あ……」翔は力なく項垂れた。それは……まさに翔にとっての死刑宣告に等しかった。今、この瞬間……猛の言葉によって翔と朱莉の偽装結婚は終わりを告げたのだった――**** その頃……。解熱剤のおかげで少しだけ元気が出た蓮はベッドの上で朱莉におかゆを食べさせてもらっていた。「どう、蓮ちゃん。卵のおかゆ、美味しい?」すると蓮は嬉しそうに笑う。「うん、とっても。僕ね……お母さんが大好き。お母さんの作る料理も大好きだよ。だから……」突然、蓮の目に涙が滲んでくる。「ぼ、僕には……お母さんが2人いるけど……一番好きな人は……お母さんだよ……っ!」そして蓮は朱莉に抱きつくと、声を殺して泣き始めた。「蓮ちゃん……!」朱莉も蓮を強く抱きしめた。「お母さんも……蓮ちゃんが大好きよ……。蓮ちゃんには本当のお母さんがいるけど……お母さんも、蓮ちゃんのこと……本当の子供だと思ってるから……」そして血の繋がらない母と息子はいつまでも抱きしめあって、涙を流すのだった。その様子を偶然訪ねて来た明日香に見られていることにも気づかずに――**** この日、明日香は朝早くからイラスト作成の仕事をしていた。しかし、なかなか良いイラストのアイディアが浮かばず、気分転換にバルコニーに出て外の景色を眺めていた時、朱莉が蓮を抱きかかえて慌ててマンションから出て行く姿を目にしたのだ。「え? 朱莉さん……それに蓮?」走り去っていく姿を偶然見た明日香はすぐにピンときた。恐らく蓮が熱を出したのだろ
Terakhir Diperbarui : 2025-06-28 Baca selengkapnya