その頃――リビングで食後のコーヒーを飲みながら修也は悩んでいた。翔には、会長に直に翔達のことをどこまで知っているのか尋ねると言ったが、所詮自分は当事者ではないのだ。それに今翔はアメリカにいて身動きすることが出来ない。そんな状態でことを起こすのは卑怯なのではないか……そう考え、行動を起こすことが出来ずにいたのだ。「修也、何してるの? 日曜のこんな良いお天気の日に。まさかずっと家に引きこもっているつもり?」洗濯物を干し終えた修也の母がリビングに現れた。「え? べ、別にそんなつもりじゃ……」「変ね……。昨日は鳴海会長との食事会の後、随分意気込んで帰ってきたのに、今朝はこんな風に家の中に引き籠って。コーヒーなら気分転換に外で飲んでくればいいでしょう?」「え……? い、いや……別に何もコーヒーなら家でも飲めるし……」そこで修也は気が付いた。「母さん……ひょっとして僕は今邪魔なのかな……?」ひきつった笑みを浮かべながら修也は尋ねた。「別に邪魔ってことはないけど……実はね。今日は高校時代の同級生が遊びに来ることになってるのよ。これが私の息子ですって紹介してもいいけど……」それを聞いた修也は青くなった。「わ、分かったよ、母さん。出る、すぐに出かけてくるから!」修也は慌てて自室へ戻ると貴重品をボディバックに入れ、白いTシャツにジーンズ、パーカーを羽織ると部屋から出てきた。「あら……随分とまあ……」「何?」「普段着ねえ……それじゃ、かしこまった場所へ行けないじゃない」母が残念そうに言う。「え? かしこまった場所って?」「それは……例えばおしゃれなレストランとか……?」「そんなところに行くはずないじゃないか」修也は苦笑いした。「それじゃ何処へ行くの?」「う~ん公園……とか?」「はあ……」修也の答えを聞いた母は黙って溜息をつくのだった―― ****結局行く当ても無いまま修也はマンションを出たが、その時朱莉の顔が頭に浮かんだ。(そうだ、確か土日は普段は明日香さんが蓮君を預かっているから今はいないはずだ。朱莉さんに連絡を入れてみようかな……)修也は駐車場へ向かい、自分の車に乗り込むとスマホを取り出して朱莉に電話をかけた。『はい、もしもし』3コール目で朱莉が電話に出た。「おはようございます、朱莉さん」『おはようございます』
최신 업데이트 : 2025-06-26 더 보기