偽りの結婚生活~私と彼の6年間の軌跡 偽装結婚の男性は私の初恋の人でした의 모든 챕터: 챕터 661 - 챕터 670

712 챕터

4-14 蓮の微妙な変化 2

 その頃――リビングで食後のコーヒーを飲みながら修也は悩んでいた。翔には、会長に直に翔達のことをどこまで知っているのか尋ねると言ったが、所詮自分は当事者ではないのだ。それに今翔はアメリカにいて身動きすることが出来ない。そんな状態でことを起こすのは卑怯なのではないか……そう考え、行動を起こすことが出来ずにいたのだ。「修也、何してるの? 日曜のこんな良いお天気の日に。まさかずっと家に引きこもっているつもり?」洗濯物を干し終えた修也の母がリビングに現れた。「え? べ、別にそんなつもりじゃ……」「変ね……。昨日は鳴海会長との食事会の後、随分意気込んで帰ってきたのに、今朝はこんな風に家の中に引き籠って。コーヒーなら気分転換に外で飲んでくればいいでしょう?」「え……? い、いや……別に何もコーヒーなら家でも飲めるし……」そこで修也は気が付いた。「母さん……ひょっとして僕は今邪魔なのかな……?」ひきつった笑みを浮かべながら修也は尋ねた。「別に邪魔ってことはないけど……実はね。今日は高校時代の同級生が遊びに来ることになってるのよ。これが私の息子ですって紹介してもいいけど……」それを聞いた修也は青くなった。「わ、分かったよ、母さん。出る、すぐに出かけてくるから!」修也は慌てて自室へ戻ると貴重品をボディバックに入れ、白いTシャツにジーンズ、パーカーを羽織ると部屋から出てきた。「あら……随分とまあ……」「何?」「普段着ねえ……それじゃ、かしこまった場所へ行けないじゃない」母が残念そうに言う。「え? かしこまった場所って?」「それは……例えばおしゃれなレストランとか……?」「そんなところに行くはずないじゃないか」修也は苦笑いした。「それじゃ何処へ行くの?」「う~ん公園……とか?」「はあ……」修也の答えを聞いた母は黙って溜息をつくのだった―― ****結局行く当ても無いまま修也はマンションを出たが、その時朱莉の顔が頭に浮かんだ。(そうだ、確か土日は普段は明日香さんが蓮君を預かっているから今はいないはずだ。朱莉さんに連絡を入れてみようかな……)修也は駐車場へ向かい、自分の車に乗り込むとスマホを取り出して朱莉に電話をかけた。『はい、もしもし』3コール目で朱莉が電話に出た。「おはようございます、朱莉さん」『おはようございます』
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4-15 相談 1

「こんにちは。朱莉さん」修也が朱莉の住むマンションへ到着した頃にはすでに朱莉はエントランスホールへと出ていた。「こんにちは、各務さん。昨日はいろいろとお世話になりました」朱莉はペコリと頭を下げた。朱莉の今日の服装はストライプ柄のブラウスに膝下丈のベージュのスカートに茶色いローヒールという恰好だった。「あの……どちらに出掛けるのか分からなかったので、わりとラフなスタイルで来たのですけど、各務さんを見て安心しました」「え?」修也は訳が分からず首を傾げた。「各務さんもラフな格好をしているので、格式の高い場所に行くわけではないんですよね?」「そうですね。実は僕自身、どこへ行こうか全く考えていなかったので。そうだ。天気もいいことだし上野公園にでも行ってみますか?」「上野公園……いいですね。行ってみたいです」「それじゃ、さっそく行きましょう。上野公園なら車でもここから30分以内に行けるので、お母さんの面会には余裕で間に合うはずですから」「そうなんですね。それならお昼ご飯も食べて行けますね」「勿論ですよ。さ、それじゃ朱莉さん。乗って下さい」修也は笑顔で助手席のドアを開けると朱莉に声かけた。「はい。ありがとうございます」朱莉が助手席に乗りこむと修也はドアを閉め自分も車を回り込んで運転席のドアを開けると車の中に乗り込んだ。「それじゃ、出発しますよ」「はい。よろしくお願いします」修也はエンジンをかけるとアクセルを踏み込んだ――****その頃、航は女子高生の娘を持つ父親からの依頼を受けていた。手を繋いで上野公園を散歩している2人のカップルを尾行していたのだ。「全く過保護な父親だな……。娘のデートを尾行しろって」航は溜息をつきながら、前方10m程先を歩く若い男女をつけていた。「しかしあれで本当に高校生か? 化粧は濃いし、イヤリングはしてるし、髪は染めてるしな……って俺も染めてるから人のことは言えないが……でも相手の男が大学生なら、多少は心配するのも当然か」依頼主は女子高生の父親。コンビニ業界を経営し、高齢になって生まれた一人娘。そして娘の交際相手は大学4年の21歳の若者。娘のデートの様子を2人が別れるまで見届けて欲しいとの依頼内容なのである。「まあ……こんなんじゃ心配するなって言う方が無理かもな」航は2人との距離を取りながら尾行を続けて
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4-16 相談 2

「どうでしたか? 朱莉さん。先ほどのプラネタリウムは?」食後のコーヒーを飲みながら修也は朱莉に笑顔で尋ねた。「はい、とても迫力があってすごかったです。いつか蓮ちゃんを連れてきてあげたくなりました。実は明日香さんてプラネタリウムが好きなんですよ。それで蓮ちゃんをたまに連れて行ってあげているんです」朱莉はカフェオレを飲みながら修也に笑顔で話している。「そうなんですか。蓮君は天体にも興味があるんですね」修也は穏やかに言うと、空になったコーヒーカップをカチャリとテーブルの上に置いた。「……実は今日、朱莉さんを誘ったのは大事な話があったからです」「大事な話……?」朱莉は首を傾げた。「はい、そうです。実は話というのは会長のことなのですが……」「え? 会長の……?」「はい。会長は朱莉さんと翔が本当は契約結婚と言うことを知らないんですよね?」「は、はい。そのはずですが……?」「そうですか……。でも、これは僕の勘ですが、ひょっとすると朱莉さんと翔の契約結婚のこと、会長は気づいているかもしれません」「え……?」朱莉は耳を疑った。何故なら朱莉と会長は今迄にも顔合わせをしたことがあるが、一度も朱莉と翔の関係を疑っているような素振りを朱莉は見たことが無かったからだ。「ま、まさか……」朱莉はそんな話を信じたくはなかった。だが……。「各務さんは会長のこと良くご存じですよね? 何故そのように思ったのですか?」「朱莉さんは昨日の蓮君の話、覚えていますよね? 蓮君が会長に一緒に暮らさないかと誘われた話」「は、はい……」「会長は意味のない言動や行動は絶対に取らない方です。何も問題が無ければ、わざわざ蓮君を引き取ろうなどとしないはずです。恐らく翔が突然アメリカに行かされたのも明日香さんが現れてから日本に帰国して、会長職を引退すると話したのも……ひょっとすると蓮君を自分の手元に養子として引きとる為なのではないかと思うんです」「え……?」朱莉はその話を聞いて、全身から血の気が引く思いがした。「朱莉さんなら良く分かりますよね? 明日香さんと翔が完全に破綻していることを。あの2人はもう元の関係には修復できないと思います。そんな壊れ切った環境で蓮君をあの2人で育てるのは無理だろうと会長は思っているかもしれません。だったらいっそ蓮君を自分の養子に迎え入れて、自分の手元
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4-17 それぞれの葛藤 1

 17時――朱莉は洋子の面会に病院へ来ていた。「……」朱莉は黙ってリンゴの皮をむいている。「朱莉?」「……」「朱莉、どうしたの?」何度目か洋子に呼び掛けられて、朱莉はハッとなった。「あ、ごめんね。お母さん。リンゴ今剥いてるから……」言いかけて朱莉はリンゴを見て唖然とした。何とリンゴの皮をむいているつもりが、気付けば半分近く身の部分までむいてしまっていたのだ。「あ……」朱莉はそのリンゴを見て、顔が真っ赤になってしまった。それを見て洋子が笑う。「フフフ……どうしたの、朱莉。貴女らしくも無いわね。何か考え事でもしていたの?」「う、ううん。そんなことは……ちょっとぼーっとしちゃって。ごめんね、お母さん」「朱莉、もしかして疲れているんじゃないの。今日はもう帰っていいわよ」「だけど、1週間に一度しか来れないのに」「そんなのちっとも気にしなくていいのよ。私のことはもういいから、今日はもう帰りさない」「うん、ごめんね。お母さん」朱莉は立ち上がると、折り畳み椅子を畳んで窓際の奥へと片付けた。「それじゃ、お母さん。また来週来るからね?」「ええ。分ったわ。気を付けて帰るのよ?」「うん、又ね」そして朱莉は病室を出た。その後ろ姿を見送ると洋子。(朱莉……また何か悩み事があるのね。相談してくれればいいのに……でもきっと私には話せない内容なのでしょうね。各務さん……どうか朱莉の助けになってあげて下さい……)洋子は願うのだった―― 結局、朱莉は修也の話に返事をすることが出来なかったのだ。会長に尋ねる……それをすれば、今の生活が全て終わってしまうような気がしてならなかった。朱莉は今の快適な暮らしを手放すことには何の未練も無かった。だが、心の準備も無しにいきなり蓮と引き離されてしまうかもしれない、それが何よりも朱莉にとっては辛いことだったのだ。 「私は一体どうすればいいの……?」朱莉は運転する車の中でため息をつくのだった――****「本当にお前っていつも突然呼び出すな」お座敷席に座った琢磨がため息交をついた。琢磨は航に呼び出されて、2人は今上野の居酒屋に来ていたのだ。この店は全国規模で展開されている居酒屋で時間も17時という早目の時間帯のせいなのか、小さい子供を連れたファミリー層も多く来店している。 「どうせ暇なんだろう? ちょ
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4-18 それぞれの葛藤 2

「朱莉がまたあの男とデートしてたんだ……」航が悔しげに言う。その時にタイミングよく、店員が現れた。「お待たせいたしました」そして次々とオーダーしていたメニューをテーブルの上に並べていく。「ありがとうございました」店員はお辞儀をするとその場を下がった。「おい、琢磨。とりあえず飲もうぜ。そしたら話すから」航は生ビールの注がれたジョッキを持った。「あ、ああ……そうだな」「「乾杯」」カチンと静かにジョッキを打ち付けた2人は無言でビールを飲む。琢磨はゴクゴクと3口ほど飲んでテーブルの上にジョッキを置いたが、航はグイグイと飲み干している。「おい、大丈夫かよ。そんなに一気に飲み干して大丈夫なのか?」琢磨が心配そうに声をかけるが、それでも琢磨は無言で飲み続け……ついにジョッキを一気飲みしてしまった。ドンッ!航は空になったジョッキを勢いよくテーブルの上に置いた。「朱莉……やっぱりあいつが好きなのか……?」その声には悔しさがにじみ出ている。「おい、航。あいつって誰なんだ? まさか……各務修也のことか?」「ああ、そうだ。各務だ。俺は今日仕事で上野公園に行ってたんだ。そして尾行していた対象者がカフェに入ったから俺も中に入ったら……朱莉がいたんだよ。あの男と一緒に……あれは絶対にデートに違いないっ!」「そんな……」琢磨は壁に力なく寄りかかる。「あんな後から出てきた奴に朱莉を取られるくらいなら、まだ琢磨に譲ったほうがましだよ。お前、今日は休みだったんだろう? 一体何やってたんだよ!」航は一気飲みしたせいなのか酔いが回ったらしく、ジロリと琢磨を睨み付けた。「お前、完全に酔っているな? 大体、今朱莉さんは蓮と一緒に住んでるんだぞ? しかも朱莉さんの隣には明日香ちゃんが住んでるって言うし……気安く朱莉さんを誘えるはずは無いだろう? それにまだ一応書類上は翔の妻なんだから……」琢磨は最後の方はしりすぼみの声になってしまった。「そうなんだよ……俺だって朱莉がまだ鳴海の契約妻だから……多少は遠慮しているって言いうのに……あいつは……」「実は……朱莉さんの初恋の相手は各務修也なのかもしれないんだ……」琢磨が重たい口を開いた。「え……!? 何だよ、それ!」琢磨に詰め寄る航。「分かった。今から話すが……落ち着いて聞けよ?」航は黙って頷く。「実は…
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4-19 明日香の告白、そして......1

 18時過ぎ――朱莉のマンションのインターホンが鳴り響く。珍しく夕食を取らずに明日香が蓮を連れて帰宅してきたのだ。朱莉が玄関を開けるといつになく元気のない蓮が立っていた。その後ろには気まずそうな明日香もいる。「お帰りさない。蓮ちゃん。明日香さん」朱莉は笑顔で言うと、蓮は視線を合わせずに返事をした。「ただいま……」「蓮ちゃん…どうかしたの?」朱莉はいつもと様子が違う蓮を不思議に思い、尋ねてみたが蓮は首を振った。「別に……何でも無いよ」そしてそのまま靴を脱ぐと玄関へ上がり込んでいき、リビングへ行ってしまった。朱莉は訳が分からず明日香の方を見た。「あの……何かあったんですか?」すると明日香が口ごもる。「え、ええ……ちょとね……。ねえ、朱莉さん」「はい、何でしょう?」「蓮が寝た後……電話貰えるかしら?」「分かりました。お電話しますね」「そう、よろしくね。それじゃまたね」そう言うと、明日香は手を振って玄関から出て行った。――バタンドアが閉まると、朱莉はリビングでネイビーをゲージから出して遊んでいる蓮に声をかけた。「蓮ちゃん」すると蓮は顔を上げ、無言で朱莉に抱きついてきた。「どうしたの? 蓮ちゃん」朱莉は蓮を抱きしめ、髪を撫でながら尋ねた。「お母さん……お母さん大好き……」「お母さんもよ。蓮ちゃんのことが大好きよ」愛しい蓮を抱きしめる朱莉。「蓮ちゃん、夜ご飯一緒に食べましょう? 今日はね、オムライスにしたのよ」「本当? わーい! 僕オムライスだーい好き! それじゃ手を洗ってくるね」蓮は朱莉から離れると洗面台へ手を洗いに走って行った。その後ろ姿を見ながら朱莉は思った。「……気のせいだったのかな……?」 その後、蓮は朱莉が用意したオムライスにケチャップで魚の絵を描いたり、幼稚園の話をしたのだが……何故か今日明日香と出かけた遊園地の話が蓮の口から出てくることは無かった――21時半――蓮がベッドで眠りについた時間を見計らって、朱莉は明日香のスマホに電話を掛けた。4コール目で明日香が電話から出た。「こんばんは、明日香さん」『こんばんは、朱莉さん』「明日香さん、今日も蓮ちゃんを遊びに連れて行って下さってありがとうございます」朱莉は電話越しにお礼を述べた。『あら、そんなこと気にしないでちょうだい。だって私は蓮の
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4-20 明日香の告白、そして...…2

『蓮に今日言ったのよ。ずっと2人で一緒に暮らさない? って。私が本当の母親だって話したの』「! 蓮ちゃんに……話したんですか……?」『ええ。言ったわ』「そ、それで……蓮ちゃんは何て言ってましたか……?」『それは驚いていたわよ……目を見開いて、その話は本当なの? って聞いてきたわ。だから勿論本当の話よって言ったわ。そしたら…』…「そしたら……?」『蓮……口を聞いてくれなくなっちゃったの。話しかけてもうなずくか、首を振るだけで……。それで帰ってきてしまったのよ……』「そう……だったんですね……」朱莉はズキズキする頭を抱えながら明日香の話を聞いていた。まさか明日香が事前に何の相談も無くいきなり蓮に真実を告げるとは考えてもいなかったのだ。『明日また蓮の様子を教えてくれる?まさかあんなにショックを受けるとは思ってもいなかったのよ。悪い事をしてしまったわね。蓮にも……朱莉さんにも……』「い、いいえ……」『それじゃ、おやすみなさい』「はい、おやすみなさい」そして2人は電話を切った。「ふう……。明日……起きてきた蓮ちゃんに何て声をかければいいのかな……」朱莉は電話を切ると溜息をつくのだった――**** 翌朝――7時半になっても蓮は一向に起きてくる気配がなかった。「どうしたのかしら?」朱莉は蓮の幼稚園のお弁当の準備をしながら時計を見た。いつもなら蓮は7時になったら1人で目覚まし時計で起きてくるのに、今朝に限って起きて来ない。(ひょっとして……昨日のこと引きずってるのかな……)朱莉はお弁当箱を巾着包みにしまうと、蓮を起こしに寝室へと向かった。「蓮ちゃん、朝よ」声をかけながらベッドの中の蓮を覗き込み、朱莉は驚いた。何と蓮の顔は真っ赤に染まり、苦し気にフウフウ言ってるのである。「蓮ちゃん!?」朱莉は驚いて、蓮のおでこに手をあてると、とても熱くなっている。「大変! 熱だわ!」朱莉は急いで、幼稚園に電話を入れて本日は欠席する旨を伝えた。次に救急箱を持ってくると、蓮の熱を測ることにした。「ごめんね……蓮ちゃん…蓮のパジャマのボタンの上部を外し、電子体温気をわきの下に挟むとずれないように軽く抑えた。ピピピピ……すぐに電子体温計が計測終了を知らせる。朱莉は蓮から体温計を抜いて、確認すると驚いた。何と39度の数値が表示されていたのだ。
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4-21 副社長室で 1

 10時――バンッ!!「え?」突然副社長室のドアが開けられ、仕事をしていた修也は何事かと顔を上げた。するとそこには翔の姿があった。「翔!? どうして急に日本へ……!?」修也は驚いて椅子から立ち上がった。「どうして? そんなこと分かり切っているだろう、修也。お前があんな事電話で言うからだ」荒い息を吐き、髪を乱した翔がずかずかと部屋の中に入って来た。「まさか……それだけの為にアメリカから帰国してきたって言うのかい!?」「おい、修也。それだけって何だ? お前にとってはそれだけかもしれないがな……俺にとっては一大事なんだよ!」翔は修也のネクタイを掴み、グイッと引き寄せてきた。それは鬼気迫るものだった。「しょ、翔……」修也は心の底から驚いていた。口では散々なことを言われてきたけれども、今までこれほどまでに暴力的な行為を翔から受けたことが無かったからだ。「修也。お前、まさか……もう会長にあのことを話したのか?」翔は相変わらず修也のネクタイを掴んだまま、怒気を含んだ声で睨み付けた。「い、いや。話していないよ。朱莉さんにも相談したけど……朱莉さん自身、どうしたら良いか迷っていたみたいだったから」「そうか、ならいい」翔は修也のネクタイを離した。「いいか、修也。これは俺と明日香……そして朱莉さんの3人の問題だ。部外者のお前が口を挟むのは許さないからな」「本当に3人だけの問題と思ってるのかい?」「何だ? 修也。お前、一体何が言いたいんだ?」「一番肝心な相手を忘れているよ」「肝心な相手……一体誰だ?」翔は怪訝そうに首を傾げた。「翔……本当にその相手が誰なのか分らないのかい? 蓮君だよ」修也の顔に悲しげな表情が宿る。「蓮……? しかし蓮はまだ……」「まだ4歳だから、自分の意思は関係ないって言いたいのかい? 確かに翔が蓮君と別れた時はまだ1歳だったけど……今は大人ときちんと会話が出来る子供なんだよ? 蓮君は本当に賢い子供なんだよ。きっとそれも朱莉さんが愛情を持って育ててきたからだと思うよ」賢い子供と言われ、翔の口元に少しだけ笑みが浮かぶが……すぐに厳しい眼差しに変わった。「だが、蓮は俺の子供であることに変わらない。子供は親の言うことを聞いていればいいんだ」「翔! それでも蓮君の父親と言えるのかい!? とにかく翔がいつまでも考えを改め
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4-22 副社長室で 2

「ま、まさか……ずっと監視されていた……のですか……?」翔は声を震わせながら猛に尋ねた。「おいおい……随分な物言いだな? それに監視と言う程大げさなものではない。お前の働きぶりを報告してくれている現地スタッフがいるだけの話だ。その人物から報告を受けたのだよ。突然お前が本日付の日本行きの航空券を手に入れたって話をな。それでもしやと思ってここに来たのだが……どうやら私の考えが当たったようだな?」猛は不敵に笑う。「そ、そんな……」翔の顔がみるみる青ざめていく。修也はそんな2人のやり取りを先ほどから黙って見ていた。(会長……何て恐ろしい人なんだ……。これほどまでに翔のことを把握しているなんて……。だったらやっぱり蓮君のことも知ってるんじゃ……)すると猛は修也の方を振り向いた。「さて、修也。私に一体何の話をしようと思っていたのだ?」猛は笑みを浮かべて修也を見た――****一方、その頃朱莉は……。「ありがとうございました」蓮を腕に抱きかかえ、診察を終えた朱莉が受付の女性にお礼を述べた。「お大事にしてください」受付の女性は朱莉に処方箋と明細書を渡すと笑みを浮かべた。「さ、蓮ちゃん。お薬を貰ったらおうちに帰りましょう?」朱莉が声をかけると、蓮はぼんやりと目を開けて朱莉を見た。「うん……」かかりつけの小児科の隣に調剤薬局がある。朱莉は蓮を連れて調剤薬局へ入ると受付に処方箋とお薬手帳を出した。「お願いします」「お預かりいたします」白衣を着た男性が処方箋とお薬手帳を受け取り、朱莉に番号札を手渡した。「番号が表示されましたら窓口に取りにいらしてください」「分りました」朱莉は番号札を受け取ると、蓮を抱きかかえたままソファに座り、スマホをバックから取り出した。(明日香さんに蓮ちゃんのこと、報告しておかなくちゃね……え?)スマホ画面を見て朱莉は息が止まりそうになった。何とそこには翔からの着信が入っていたからだ。(翔先輩? ど、どうして突然連絡を……)一瞬朱莉は連絡を入れようと思ったが、すぐにその考えを改めた。(そうだわ、いつ薬で呼ばれるか分らないから、マンションに帰って蓮ちゃんを休ませてからでも大丈夫だよね……。明日香さんへの連絡も後にしよう)朱莉はスマホをしまうと、腕の中の蓮を見た。蓮は赤い顔をしてフウフウ言いながら目を閉じている
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4-23 終息へ向けて…… 1

 しんと静まり返った副社長室。規則的に時を刻む時計の針の音だけが聞こえてくる。重苦しい空気に包まれた室内には猛。隣には秘書の滝川がソファに座り、猛の向かい側に翔。隣には修也が座らされている。「さあ、修也。黙っていないで質問に答えるんだ」猛は眼光鋭く修也を見る。「そ、それ……は……」修也は隣に座る翔をチラリと見た。翔の顔は青ざめ、固く握りしめられた両手は小刻みに震えていた。「修也。お前も一社会人なら分かるだろう? 時がどれほど大切かと言うことくらい。私は無駄な時間を取られることが一番嫌いだ。早く話すんだ」猛は片時も目を離さず、修也を見た。「分かりました、会長……。お話しようと思っていたのは翔の子供のことについてです……」修也は声を振り絞るように言う。「ほ~う。蓮のことだな? 面白そうだ。聞かせてもらおうか?」猛は腕を組むと、ソファの背もたれに寄り掛かった。一方、蓮の名前を聞いた翔の肩がピクリと動く。「蓮君は……朱莉さんの本当の子供ではありません……。蓮君の本当の母親は……」修也の言葉に翔が反応する。「修也! よせ!」すると猛が言った。「ああ、そのことか。母親は明日香なのだろう?」「「!!」」翔と修也は驚きのあまり、言葉を失ってしまった。「何だ、修也。話と言うのはそのことだったのか?」猛の平然とした様子に翔も修也も唖然としていた。「会長、知っていたのですか……?」翔は振り絞るような声で猛に尋ねる。「当然だ。何も知らないとでも思っていたのか?」「い、いつからですか……?」「お前が偽装結婚とやらを考えついた時からだ」「そんな前から……ですか!?」「翔、ひょっとするとお前は私を騙し通せるとでも思っていたのか?」「そ、それは……!」「全く……初めから偽装結婚などと言う姑息な手段を使わずに朱莉さんを普通に妻として迎えていれば良かったのだ。それにお前は結婚当初は随分酷い態度を彼女にとっていたようだしな?」猛は溜息をつく。「……っ!」「私は初めからお前と明日香の仲は反対していた。私はな、お前を試していたのだ。本当にこの鳴海グループのトップに立てる器の人間であるかどうか。お前がどうしても明日香と一緒になるつもりだったら、確かに次期社長として選びはしなかったが、2人の仲は認めるつもりだった。まあ世間の体面を保つために鳴海グ
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