All Chapters of 人生の続きは異世界で~交換スキルの代償は金銭NG!?~: Chapter 81 - Chapter 90

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第81話 二つの依頼(後編)

時刻は日暮れとなっていたため、その日は宿で休みを取り翌日にもう一つの依頼の為に今度は教会へ向かった。「良くお越し下さいました。本日はどのようなご用件でしょう?」教会に入ると、中に居たシスターの女性が声を掛けてきた。「司祭様にお願いしたいことがあるのですが、お会いすることは可能でしょうか?」 「司祭様にですか?分かりました。聞いて参りますので少々お待ちください」少しして司祭と思われる男性がこちらにやってきた。「私が司祭のエルセントです。私にお願いがあるとのことですが、どのようなお話でしょうか?」 「初めまして、俺は商人のアキツグです」 「初めまして、カサネと申します」 「少し内密な話なのですが、どこか個室でお話させて頂けないでしょうか?」 「そうですか。分かりました。こちらへ」そうしてエルセントさんの案内で部屋の一室に通された。「まずはお時間を取って頂きありがとうございます。いきなりこんな話をしても信じて貰えないかもしれないのですが、ダンジョンである薬を服用して体から精神が抜け出てしまい戻れなくなった人が居るんです。俺達はその人に、司祭様を呼んできて浄化を使って成仏させて欲しいと頼まれました」話を聞いたエルセントさんは、しばらくの間何かを考えるように俯いていた。「その人がその薬を飲んだのはどのくらい前のことか分かりますか?」 「恐らくですが、二十年以上前のことだと思います」 「二十年・・・やはりそうですか」エルセントさんはそう聞くと何か納得がいったというように頷いている。「何か心当たりがあるんですか?」 「えぇ。私も聞いた話なのですが、二十年ほど前にあるダンジョンで数名の冒険者が死亡した事件がありまして。それ自体はあり得ないことでもないのですが、彼らは皆魔物に襲われるような場所ではなく安全な部屋で傷一つなく死んでいたということで調査が行われ、その結果近くの街にあった薬屋が違法な魔法薬を販売していたことが突き止められました。 それ以上のことは市井《しせい》には知らされませんでしたが、話の内容からしてその
last updateLast Updated : 2025-05-11
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第82話 ダンジョン探索の再開

浄化が終わった後、俺達はエルセントさんを連れて街まで戻ってきた。「ここまでで大丈夫です。それでは私はこれで。あなた方の行く末に神のご加護のあらんことを」街の中に入るとそう言ってエルセントさんは教会の方へ帰っていった。 彼は最後までロンメルさんのことを聞かなかった。俺が話していた内容から街に関係者がいることは分かったと思うのだが、あえて聞かないようにしたようだ。「もうすぐお昼時だな。ご飯を食べてからもう一回ダンジョンに行ってみるか」 「そうですね。またまたアキツグさんのおかげでダンジョン探索が楽になりそうですしね?」 『本当にあなたはトラブルに愛されてるみたいね』 「うぐっ。残念ながら認めざるを得ないな。でも、俺がっていうより俺のスキルのせいだと思うんだ」言い訳する俺とそれを楽しげに聞く二人で歩きながら食堂へ向かった。 午後は話した通り、再度ダンジョンに向かう。 地下一階で幾度か行き止まりに当たったり魔物と遭遇したりしつつもどうにか二階への階段を見つけることができた。どうやら地下一階には罠は無いようだった。 地下二階に降りてしばらく歩くと何かがスキルに反応した。「お?あそこに飛針の罠があるみたいだ。本当に罠を察知できるんだな」 「周囲は暗いですし、当然ですけど罠は分かりにくいことが多いんですよね。ダンジョンに慣れている人だと、経験で罠がありそうな場所に見当を付ける人もいるんですけど、今の私達にはそのスキルはありがたいですね」 『無機物のことは私にも分からないしね』カサネさんも簡単なものなら対処できるし、上層のものなら仮に引っかかっても被害が少ないので回復薬などですぐに直せるという話だったが、掛からずに済むならそれに越したことはないだろう。 ちなみにロンメルさんに交換して貰ったスキルは罠察知と罠外しのレベルがかなり高かった。どうやら彼は罠の対処を専門にしていたようだ。-------------------------------- スキル:罠察知Lv5、罠外しLv4、索敵Lv1、スラッシュLv2 --------------------
last updateLast Updated : 2025-05-12
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第83話 ダンジョンでの野営

地下六階くらいまで来たところで、時刻も夜になっていたため今日はもう休もうという話になった。 ダンジョンでは階段がある部屋には魔物達が入ってこないらしく、冒険者達は野営する際のセーフルームとして使用していた。 なお、ダンジョンに一定階層ごとにダンジョンから脱出するための転移装置と階層ボスが存在している。ロンデールの場合は五階層ごとに転移装置、十階層ごとに階層ボスが存在している。 地下五階で戻って街の宿で休むということも考えたのだが、その場合はまた地下一階からやり直しである。直接跳べる中層の転移装置は地下五十階にあるということだった。「地下五十階かぁ、大変だよなぁ。何日くらいかけて行くんだろうか?」 「実際のところはパーティによりまちまちですが、どちらかというと事前の調査の方が時間を掛けていると思いますよ。各階層の最短ルートをマッピングして、五十階までをその最短ルートで進むんです。そうしないと食料や薬が持たないですから」 「あ~それはそうだな。マジックバッグなら結構な量を持ち込めるけど、それでも限度はあるもんな。手に入れた素材やアイテムを仕舞うスペースも必要だし。・・・あれ?でもそうすると、マッピングした地図とか売れるんじゃないのか?」 「本物であれば売れるでしょうね。二つの理由でそれはなかなか難しいんですけど」 「二つの理由?」俺がどういう意味か分からず聞き返すと、カサネさんが丁寧に教えてくれた。「えぇ。一つはダンジョンが定期的にその構造を変えること。構造が変わってしまうと地図が意味を為さなくなってしまいますからね」 「え、それじゃ途中までマッピングしても構造が変わってしまったらやり直しってことか?」 「そうなりますね。とはいっても構造が変わるのは数か月単位の周期なので、構造が変わったタイミングからマッピングを始めれば間に合わないということは少ないみたいです」 「攻略を始めるタイミングも絡んでくるのか。大変だな。もう一つの理由っていうのは?」 「そのマップの信用度です。例えば、Aランクパーティが売っている地図とCランクパーティが売っている地図だったら、アキツグさんはどちらの方が信用でき
last updateLast Updated : 2025-05-13
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第84話 地下十階到達!階層ボスは・・・?!

翌日になり、俺達はダンジョンの地下七階へと足を踏み入れた。 この辺になるとゴブリンやコボルトのような弱い魔物は減っていき、オークやゾンビなど耐久力のある少し厄介な魔物が増えて来た。 まぁ厄介といっても俺にとっては、なのだが。 このくらいの魔物であればカサネさんの魔法であれば一撃で倒せてしまうのだ。 しかし、それでは俺の戦闘経験を積むという目的を果たせないので、カサネさんには敵が多い時やピンチの時だけサポートして貰っていた。『前方から・・・気配は一体分ね。アキツグ、頑張りなさい』ロシェが敵の気配に気づき教えてくれる。 少しして俺の索敵にも反応があった。このスキルも俺にとっては有難かった。 レベルが低いため索敵範囲は狭いみたいだが、これで普通の魔物に不意打ちされる可能性は格段に減ったからだ。 少しすると前方からオークがこちらに攻撃を仕掛けてきた。 俺は魔銃で魔力弾を放ちけん制する。だが、オークは手に持ったこん棒で魔力弾を打ち払った。ゴブリンなら慌てて避けたりするのだが、やはりオーク相手になるとそう簡単にはいかない。そのままオークが振り下ろしてきたこん棒を、俺は右に飛んで避けながら魔銃を剣の様に横薙ぎにした。「スラッシュ」発動したスキルがオークの横腹に一筋の裂傷を刻む。オークが怯んだところに今度はライトニングの魔弾を打ち込んだ。「ギ!ガァ・・・」魔弾に撃たれたオークは一度体を痙攣させた後、そのままドサッと地面に倒れた。「ふぅ、何とか無傷で倒せた」 「良い感じですね。ちゃんと敵の攻撃を見れるようになってますよ」 『最初なんてゴブリンに不意を打たれて目を瞑っちゃってたものね』 「うっ、それは仕方ないじゃないか。暗闇からいきなり飛び出して来たら誰だってビックリすると思うぞ」 「初めてのダンジョンですからね。外と同じ感覚で居るとそういうところで思わぬ奇襲を受けたりしますから気を付けましょう」 「あぁ、身を持って味わったよ」確かに外とは色々と勝手が違う。周囲は暗いし道幅は狭い。道中には魔物や罠が待ち受けている。まぁその分宝
last updateLast Updated : 2025-05-14
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第85話 特殊階層ボスとの闘い

ゴブリンロードは部屋の中央で視線だけをこちらに向けていた。 どうやらこちら側が戦う意思を見せるまでは待ってくれるようだ。律儀なことである。 俺が魔銃を構えるとゴブリンロードは戦闘の意思ありと判断したらしい。 剣を構えたかと思うと一気に間合いを詰めてきた。(っ!速い!)カサネさんが俺に戦わせようとしなかったのも頷ける。 苦し紛れの魔力弾を一発撃ち放つのと同時に俺は右に飛んだ。 ゴブリンロードは気にした風もなく魔力弾をその鎧で受けると、そのまま剣を振り下ろした。振り下ろされた剣の先にある地面に一筋の切れ込みが走った。 剣は地面まで届いていなかった。剣圧かもしくは剣の能力によるものか、どちらにせよ紙一重であの剣を避けるのは止めたほうが良さそうだ。 俺はバランスを崩さないように注意しつつ着地して、そのまま距離を離しながら今度はライトニングの魔弾をゴブリンロードへ向けて撃ち放った。 ゴブリンロードもすぐにこちらに向き直り、《《その場で剣をこちらに向けて振った》》。(何を?・・・いや、まさか!?)俺が咄嗟に避けようとするのと同時に雷の魔弾がなにかに斬り裂かれて霧散した。 ほぼ同時に俺の左肩辺りに痛みが走る。(不可視の斬撃とかありかよ。レアとはいえ十階層のボスにしては強すぎじゃないか?)幸い耐性のおかげで傷はそこまで深くないが、常に相手の剣の動きに気を付けないといけなくなった。すると俺の考えを読んだかのようにゴブリンロードがさらにその場で剣を振り下ろしてきた。 俺はその軌跡を読んで何とか避けていく。距離を取りながら戦えば何とかなるんじゃないかという甘い考えはあっという間に崩されてしまった。 取り出した回復薬を傷口に掛けて止血しながら対応を考える。(剣を振り始めてからあの場から動かなくなったな。剣を振るのにも一呼吸おいているし、もしかして動きながらだと斬撃を飛ばすことはできないのか?だとしたら初撃のは剣圧によるものか。有効そうなのはライトニングくらいだし、どうしたものかな)魔力弾は鎧に弾かれたし、スラッシュも今のレベルでは鎧の隙間を狙わないと
last updateLast Updated : 2025-05-15
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第86話 宝箱の中身は・・・?

「・・・やっと倒せたか」 「かなりの強敵でしたね。私もソロだったら倒すのには苦労したかもしれません」 『遠距離攻撃持ちの剣士なんて普通の魔導士なら戦いたくはないでしょうね』三人でゴブリンロードを倒した余韻に浸っていると、奥の扉の方でザザッと音がした。何かと思い振り向くとそこには先ほどまでなかったはずの宝箱が現れていた。「階層ボスの撃破報酬ですね。レアケースなので期待できると思いますよ」 「お~!こういうのが出るとなんか倒したって実感が湧くな。あれだけ苦労したんだし、良いものが出てくれると嬉しいんだけど。俺が開けても良いかな?」 「もちろんです」 『頑張ったのはあなたなんだから、遠慮する必要なんかないわよ』 「ありがとう。じゃぁ遠慮なく」ぱかっとふたを開けると、そこには・・・小さな鈴のようなものが一つあった。「えっ?」見間違いかと思い、ふたを閉じてもう一度開けてみたが結果は変わらなかった。『どうかしたの?』 「中身は何でした?・・・あら」俺の様子が気になったのか二人も近寄ってきて宝箱の中身を確認した。「これ、鈴・・・だよな?」 「みたいですね」試しに軽く振ってみると、ちりんちりんと軽やかな音がした。 するとカサネさんが少し慌てたように声を上げた。「あっ!」 「え?どうかした?」 「・・・何も起きませんね。気にはなりますけど、迂闊に色々試したりしないほうが良いと思います。中には扱いを誤ると大惨事を起こすような危険なものもあるらしいですから」 「えぇ。。もしかして俺今ヤバかった?」 「そういうことは稀だと思いますけど、少し不用意だったかもしれませんね。とはいえ初ダンジョンでしたし、私も事前に注意しておくべきでした。すみません」 「いや、カサネさんのせいじゃないよ。俺の勉強不足だ、今度からは気を付ける」あれだけ苦労した結果がただの鈴に見えるアイテム一つという落胆もあって、安易に鳴らしてしまった。確かに振った途端に何かの魔法が発動する可能性もあったし、改めて考
last updateLast Updated : 2025-05-16
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第87話 特別な報酬

宿に帰る前に冒険者ギルドに寄って、受付でクエストの完了報告を行った後、例の鈴について聞いてみた。「これ階層ボスの宝箱から出てきたんですけど、何か分かりませんか?」俺が鈴を見せると、受付嬢は少しの間その鈴を見ていたが、はっ!と何かに気づいたかのような仕草を見せると慌てた様子で「ちょ、ちょっとこちらへ!」と俺達を応接室に案内した。「突然失礼致しました。鑑定士を呼びますので少々お待ちください」そう言って受付嬢は説明もなく部屋を出て行った。「何なんだいったい。やっぱりこの鈴に何かあるんだろうか?」 「まぁレアケースの報酬ですから、ただの鈴ってことはないと思いますけど随分慌ててらっしゃいましたね」 『何の説明もなく出て行くのは流石にどうかと思うわ』そんなことを話しながら待っていると、少しして一人の職員が部屋に入ってきた。「お待たせして申し訳ございません。鈴の鑑定に来られたのはあなた方で間違い御座いませんでしたか?」 「鑑定っていうか、何か知りませんか?って聞いたら突然部屋まで案内されたんですけど」 「それは失礼しました。早速ですが、その鈴を見させて貰っても?」 「これですけど・・・」妙に緊張した面持ちでその鈴を調べ始めた職員を見ていたら、なんだかこちらまで緊張してきた。しばらくすると鑑定が終わったのか、その職員の視線がこちらに向いた。「間違いありません。これは影呼びの鈴です」 「影呼びの鈴?」 「えぇ、一定量の魔力を込めることで対象の魔物の影を呼び出し使役することができるものです。効果は長くても数分程度ですが、魔力だけで一時的に戦闘要員を増やすことが可能な超レアアイテムですよ!」説明している内に興奮してきたのか職員さんの口調が高くなっていた。 しかし、今聞いたばかりの俺達はまだピンと来ておらずそのテンションについていけていない。「魔物を一時的に味方として召喚できるってことか。どんな魔物が召喚できるんですか?」 「そりゃもちろんこの鈴を落とした魔物ですよ。あなた方は何の魔物からこれを手に入れたんですか?」
last updateLast Updated : 2025-05-17
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第88話 意外な恩返し

冒険者ギルドでのあれこれも終わり、宿に戻った俺達は夕食を食べながら明日はどうしようかという話をしていた。『ダンジョン探索を続けるのならそれでも構わないけれど、私はどちらかといえば外での活動の方が嬉しいかしらね。偶にはああいうところも珍しくて良いけれど、やっぱり私は外の空気の方が良いわ』 「確かに。ずっと閉鎖空間にいると息苦しさを感じたりもするしな」 「ダンジョンに潜るのは一攫千金を目指す人や魔物達と戦って強くなりたい人が多いですからね。そういう人達はその辺も覚悟した上で挑んでいますから」カサネさんの言う通りなのだろう。本来は俺みたいにお試しで挑戦した人間がレアケースを引いてしまうのはどうかとも思うのだが、こればかりは運も絡むことなので仕方ないと考えるしかない。「当たり前だけどダンジョン攻略も楽じゃないってことだな。あんなレアケースに当たることもあるし」 「初回からレアケースを引くなんてそうそうないんですけどね。まぁきりも良いですし話していたパーセルに向かってみても良いんじゃないですか?確かにダンジョン探索は力を付けるには良い場所ですが、無理に急ぐものでもないですし。ここ以外にもダンジョンはありますから」 「それじゃそうしようか。俺もダンジョンに潜るのは偶にでいいかな。それに正直今潜ってもレアケースと鈴の反動でハズレばっかり引きそうな気がする」 「確かにそうかもしれませんね」 『そうね。欲張ると碌なことがないわ』同じ様なことを考えていたのか、三人で笑いながらダンジョン探索は一旦お終いということになった。「まぁダンジョン探索の基本もある程度は理解できたとおもうし、次回はロシェの感覚も頼りにしてサクサクっと20階層まで行けると良いな」 『当てにして貰うのは構わないけど、ダメでも怒らないでよ?十階層以降にはゾンビなんかも居るらしいし、そうなると空気の流れを読むのも難しくなると思うわ。それに、あんまり調子に乗るとどこかで手痛い反撃にあうかもしれないわよ?』 「うっ、確かに。今回は偶々上手くいっただけかもしれないしな。ロシェのことは頼りにしてるけど、無理な時は言ってくれれば怒ったりしないさ」俺がそう
last updateLast Updated : 2025-05-18
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第89話 パーセルの緊急クエスト

パーセルはロンデールの北に位置する都市だ。 マグザとは逆に寒冷な気候で生息する魔物達も厚い毛皮に覆われたものが多い。 そして当然ながら夜は一層寒くなる。「ちょっと認識が甘かったなぁ。こんなに急に寒くなるなんて」 「本当ですね。ギルドで少し聞いてはいましたけど、ここまでとは思いませんでした」 「今のうちにもうちょっと薪を集めておいたほうが良さそうだな。ちょっと探してくるよ」 「それなら私も一緒に行きます。もう周囲も暗いですし何かあると危険ですから」ということで、カサネさんと二人で近くの林に薪を探しに向かう。 ロシェは薪拾いには不向きなのでお留守番だ。ライトの魔法で周囲を照らしながら薪を拾っていると、突然索敵スキルに反応があった。その反応は俺に向けてまっすぐ近づいてきている。 俺は急いで振り返り反応の方に向けて魔銃を構えた。すると盗賊と思われるような格好で顔も隠した人間がこちらに向けて投げナイフを投擲しようとした。「ちっ!」盗賊が舌打ちをしてそのままナイフを投擲してきた。俺も一発発砲しつつ後方に飛び退く。魔弾はちょうどナイフと衝突してナイフを弾き飛ばした。「あの距離で気づくとはな。商人と思って油断した」 「いきなり何なんだ。何が目的だ?」 「ふん。お前が知る必要はない。我らのために大人しく死んで貰おう」(いきなり死んでくれって問答無用かよ!?)どうやらここから少し離れたところでも戦闘が発生しているようだ。 カサネさんのことも気になった俺はさっさと札を切ることにした。 ちりんちりんと場の雰囲気に相応しくない軽やかな鈴の音が響き渡る。「なんだ?助けを呼ぶつもりなら無駄・・・何!?」盗賊が驚いて見た先に黒い人影が現れる。「あいつを倒せ」盗賊を指して指示を出して、俺は別方向から盗賊に攻撃を仕掛けた。 迫るゴブリンロードの影と俺の魔獣による射撃に挟まれた盗賊は、戦況不利と判断してかあっさりと身を翻すとそのまま森の中に消えて行った。「アキツグさん、平気で
last updateLast Updated : 2025-05-19
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第90話 遺跡の盗賊掃討戦1

緊急クエストは準備ができ次第連絡するということで、俺達は街で宿を取ることを告げて一旦冒険者ギルドを出た。 ギルドにお勧めされた宿を取って、昼食を取っているとギルドから準備完了と習合の連絡が来た。「思ったより早かったな」 「そうですね。運良く近くに冒険者が集まっていたんでしょうか?」 「かもな。俺達もその内の一組だし」速めに食事を終えてギルドへ戻ってくるとかなりの数の冒険者達が待機していた。 それから少し待つと二階へ続く階段の中腹に立った一人の男性が、全員に向けて声を上げた。「待たせてすまない。初めての者もいると思うが、俺がここのギルドマスターのガイレンだ。メンバーもほぼ揃ったのでこれより緊急クエストの盗賊掃討作戦について説明する。やることは単純だ、遺跡に居座る盗賊達を掃討する。これだけだ。 遺跡の周囲は木々に囲まれているので視界が悪い。不意打ちに注意してくれ。 また今までの情報から盗賊達の見た目はほぼ統一されているから間違うことはないと思うが、念の為にお前達には識別用のバンドを左右どちらかの腕に付けて貰う。 だが、バンドを付けているからといって油断はするな。盗賊のスパイが紛れ込んでいる可能性もある。同士討ち防止の目印程度に考えてくれ。 あと可能な範囲で構わないがなるべく遺跡への被害は抑えて欲しい。 最後に作戦終了時に参加証明を配布する。それを持たない者には報酬を支払えないので、間違いなく受け取ってくれ。何か質問がある者は居るか?」 「盗賊が遺跡を占拠している理由、目的は何なんですか?」 「不明だ。もし作戦中に何か分かった場合は、教えてくれれば相応の情報料を報酬に上乗せしよう」その後もいくつか冒険者達から確認などがあったがガイレンは適宜回答していた。 質問も出なくなったところでガイレンが話を締めくくる。「他にはないな?ではこれより、作戦開始だ。各自の健闘を祈る!」ガイレンが作戦開始を告げると、冒険者達は各々ギルドを出て行く。 俺達も流れに合わせてギルドを出た。そうしてそのまま街を出た辺りで、カサネさんが小声で俺に耳打ちしてきた。
last updateLast Updated : 2025-05-20
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