時刻は日暮れとなっていたため、その日は宿で休みを取り翌日にもう一つの依頼の為に今度は教会へ向かった。「良くお越し下さいました。本日はどのようなご用件でしょう?」教会に入ると、中に居たシスターの女性が声を掛けてきた。「司祭様にお願いしたいことがあるのですが、お会いすることは可能でしょうか?」 「司祭様にですか?分かりました。聞いて参りますので少々お待ちください」少しして司祭と思われる男性がこちらにやってきた。「私が司祭のエルセントです。私にお願いがあるとのことですが、どのようなお話でしょうか?」 「初めまして、俺は商人のアキツグです」 「初めまして、カサネと申します」 「少し内密な話なのですが、どこか個室でお話させて頂けないでしょうか?」 「そうですか。分かりました。こちらへ」そうしてエルセントさんの案内で部屋の一室に通された。「まずはお時間を取って頂きありがとうございます。いきなりこんな話をしても信じて貰えないかもしれないのですが、ダンジョンである薬を服用して体から精神が抜け出てしまい戻れなくなった人が居るんです。俺達はその人に、司祭様を呼んできて浄化を使って成仏させて欲しいと頼まれました」話を聞いたエルセントさんは、しばらくの間何かを考えるように俯いていた。「その人がその薬を飲んだのはどのくらい前のことか分かりますか?」 「恐らくですが、二十年以上前のことだと思います」 「二十年・・・やはりそうですか」エルセントさんはそう聞くと何か納得がいったというように頷いている。「何か心当たりがあるんですか?」 「えぇ。私も聞いた話なのですが、二十年ほど前にあるダンジョンで数名の冒険者が死亡した事件がありまして。それ自体はあり得ないことでもないのですが、彼らは皆魔物に襲われるような場所ではなく安全な部屋で傷一つなく死んでいたということで調査が行われ、その結果近くの街にあった薬屋が違法な魔法薬を販売していたことが突き止められました。 それ以上のことは市井《しせい》には知らされませんでしたが、話の内容からしてその
Last Updated : 2025-05-11 Read more