俺とは理由が異なるが、盗賊の方にも行動に迷いが見えた。 俺の魔銃による不意打ちに加え、姿の見えない何者かの存在。普通に考えれば不利と考えて撤退してもおかしくはない状況だ。 しかし、盗賊は引く様子は見せなかった。何か奥の手があるのか、それとも引けない理由があるのか。(どちらにしろ俺にできるのは、油断せずに行動することだけだ。)そう考えてまずは距離を取りながら魔力弾でけん制する。先ほどのライトニングは効いてなかったわけではないらしく、明らかに相手の反応は鈍くなっていた。 向こうも投げナイフでこちらの動きを制しつつ近づこうとしているが、ロシェのことを警戒しているのかその歩みは遅々としたものだ。(それなら―)俺は慎重に狙いを定めて魔法弾を撃ち放った。 盗賊は少し身をずらすだけでそれを避け、魔法弾は近くの木の根元に着弾し《《周囲の土を消滅させた》》。 当然支えを失った木はバランスを崩し、盗賊の方へ倒れてきた。「なっ!?」突然のことに驚きつつも盗賊は咄嗟にその場を飛び退き、倒れてくる木から身を躱した。しかし、そこまでだった。気を伺っていたロシェが体勢を立て直そうとしたところを押さえつける。『今よ!』言われるまでもなく避けた隙を狙おうとしていた俺は、その言葉に合わせてライトニングの魔弾を撃ち放った。「がっ!・・・」倒れ伏した盗賊に俺はもう一発魔弾を撃ち込み、反応がないことを確認してようやく息を吐いた。『今度は大丈夫そうね。アキツグよくやったわ』 「ロシェ、さっきはありがとう。俺のせいで怪我させてしまってごめん」ロシェに駆け寄り怪我をしているところに回復薬を掛けながら、俺はそう礼と謝罪を口にした。『気にしないで。けれど、戦いの場での油断は死を招くわ。相手を完全に制するまでは気を抜かないようにしなさい』 「あぁ、ロシェがいなければ次を考えることすらできなかったかもしれない。この経験を無駄にはしない」 『そう、それならいいわ。私も怪我をした甲斐があったわね』 「うぐっ!本当にごめん」
Last Updated : 2025-05-21 Read more